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カート・ローゼンウィンケルもやりますね。

昨年出たカート・ローゼンウィンケルの 『リフレクションズ』 を聴いて、改めてカートの良さに気づいたのですが、そなるとまだ持っていない過去のアルバムも聴いてみたくなります。

そう言えば、前作『ザ・レメディ』もやっとビデオアーツから日本盤が発売になりましたね。1年以上遅れて日本盤が出るなんて、日本のジャズ制作業界の対応の遅さには本当に呆れます。ア-ティストシェアとの間で契約に手間取ったのかもしれませんが、それも含めて最早日本のジャズ制作業界は、海外の旬なジャズマンをフォローできない鈍感体質と言っていいのかもしれません。

P132 さて、今日紹介するのは、だいぶ前に出たカート・ローゼンウィンケル『ハートコア』(2003年、Verve)です。カートが打ち込みも取り入れて自己の音楽性を示したアルバム。メンバーは、カート・ローゼンウィンケル(g,key,ds,per,programming,vo)、マーク・ターナー(ts,b-cl)、ベン・ストリート(b)、ジェフ・バラード(ds)、ゲスト:イーサン・アイヴァーソン(p,key)、アンドリュー・ディアンジェロ(b-cl)、マリアノ・ギル(fl)です。

こういう作品ですから「ジャズはアコースティックだ。4ビートだ。アドリブだ。」という人には受けないアルバムだろうと思います。私みたいにそういうことに拘らない人にとっては非常に面白いアルバムなのですけどね。ブラッド・メルドーの新作 『ハイウエイ・ライダー』 にも同様なことは言えるのでしょう。

このアルバムは、ヒップホップ・レジェンド=Q-TIPとカートの共同プロデュースとのこと。そんな関係でプログラミングが多用されています。カートがプログラミングをしているんですから大したものです。ラストの共同名義の曲を除けば、あとの10曲はカート作。このアルバムを聴いて、パット・メセニーの次の時代のジャズ・ギタリストの最重要人物はカートなのだということを再認識しました。

こういう人達はいわゆるジャズの枠には収まりきらないのですが、私はこの収まらない部分も含めて本当はジャズと呼ぶべきだと思っています。でも世間では変に拘る人ばかりが増え続け、ジャズがタコ壺化して久しいのです。

1曲目《ハートコア》はカートがキーボードやドラムを操り、プログラミングもした曲。多重録音されたサウンドトラックの上に、正にカートというギターとこれぞマーク・ターナーというテナーのソロがノリます。ファンはこの曲を聴けば、もうニンマリすること請け合い。リズムがマーチ風なので、「これからは俺達の時代だ。」と行進しているよう(笑)。

2曲目《ブルー・ライン》はカート、ストリート、バラードのギター・トリオにターナーがテナーで参加。左チャンネルはカートがドラムを叩いていて、右チャンネルのバラードとのツイン・ドラムというとんでもない豪華仕様(笑)。カートはドラムも上手いのでした。左右のドラムのリズムが汽車の”シュシュポポ””ガタガタ”のようで、私的にはメセニーの西部を旅する汽車をイメージさせる曲に繋がります。後半被さるシンセはスペイシー。ザビヌルの音使いにも通じます。

3曲目《オール・ザ・ウェイ・トゥ・ラヤサン》はメセニー・グループのような広い景観をイメージさせる曲。ストリートとバラードとのギター・トリオをコアに、プログラミングによって厚みと広がりを作りだしています。しかし、カートのギターがいつもの音とフレーズを弾き出せば、これはもう紛れもないカートの世界です。

4曲目《ユア・ビジョン》は東洋やインドをイメージさせる曲です。シンセの音が何となくザビヌルの《バディアの楼閣》にも通じます。シンセのひきつる音はインド。そこにカントリー風のギターが被さったりして、後半の壮大なシンセ、ディアンジェロのバスクラリネットが入ると、タイトルの「ユア・ビジョン」は仏教的な悟りのイメージか?いや~っ、これだけの曲を作るカートは凄い!私はこの曲がかなり気に入っています。

5曲目《インタールード》は短かめのレイジーな間奏曲。6曲目《アワ・シークレット・ワールド》はカート、ターナー、ストリート、バラードにキーボードのアイヴァーソン(ザ・バッド・プラス)が加わったクインテットによるコンテンポラリー・ジャズ。プログラミングもないので、ジャズ・ファンには楽しめる曲(笑)?カート、ターナー、アイヴァーソンのカッコいいソロが満喫できます。アルバムの真ん中にこの曲を入れるところがカートのサービス精神(笑)?

7曲目《ドリーム/メモリー?》ではカートがボーカル披露。ボーカルとはいってもサウンド扱い。歌は上手くありませんでした(笑)。これもスピリチュアルで東洋/インド系。キーボードの多重録音による独演です。

8曲目《ラブ・イン・ザ・モダン・ワールド》は、カートのピアノが美しいバラード。ドラム・レスで室内楽風な曲です。シンセによるストリングス・オーケストラも被さります。こういうクラシックな素養も持っているんですね、やっぱり。で、それは前半。後半は打ち込みドラムが入って躍動的でオーケストラルな展開へ。ギルのフルート・ソロ、カートのギター・ソロも素敵です。

9曲目《dcba//>>》は人力ドラムンベース風。カート、ターナーのソロがカッコいいです。アイヴァーソンのピアノもきキレてますよ。10曲目《スルー・アバウト・ユー》はインド~アンデス風なフォーク曲。カートはアコースティック・ギターを弾いています。カートは各種パーカッションを叩き、プログラミングも入れて独演。

ラスト《トーン・ポエム》はカート、ターナー、ストリート、バラードのカルテット演奏。ターナーのバスクラが怪しいメロディーを吹き、歪とエコーを多くかけたカートのギターも怪しく、バラードのシンバルが彩りを添えています。う~ん、美しい(笑)?こういうの好きです。

カート・ローゼンウィンケルの高い音楽性が示されたアルバムでした。必聴!

アルバム名:『Heartcore』
メンバー:
KURT ROSENWINKEL(g,key,ds programming),
MARK TURNER(ts,bcl)
BEN SYREET(b)
JEFF BALLARD(ds)
ETHAN IVERSON(p,key)
ANDREW D'ANGELO(bcl)
MARIANO GIL(fl) etc.

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ジャズ・アルバム紹介」カテゴリの記事

コメント

いっきさん、おはようございます。

>こういう人達はいわゆるジャズの枠には収まりきらないのですが、
>私はこの収まらない部分も含めて本当はジャズと呼ぶべきだと思っています。
>でも世間では変に拘る人ばかりが増え続け、ジャズがタコ壺化して久しいのです。

この頃、そのように思えるミュージシャン、アルバムとも増えてきました。
オイラは、それらを"ジャズ"というカテゴリーに括ってしまうのには疑問があります。
従来のジャズに対する拘りではなく、ジャズという器にいれるには
音楽のマーケットを狭くすると思えるからです。
また、ミュージシャン自体もジャズだと思っていない節があるからです。
これらは、坂本龍一をジャズに入れるようなものではないでしょうか?
売るためにどこかのジャンルに入れなければならない音楽産業自体の問題であり、
それらを総称するカテゴリーを確立できないのが現実なのでは?
ジャンル外を"ジャズ"として受け皿にしてしまうのも危険です。

「これはジャズではない」という判断も、また正常だと考えます。

投稿: tommy | 2010年4月18日 (日) 07時51分

tommyさん。こんにちは。

カートがこのアルバムでやっているのはジャズですよ。
ジャズ・ファンなら誰でもそう言うと思います。
坂本龍一とは違うと思うのですが・・・。

私が言いたいのは、ジャス・ファンにこういうのも
積極的に聴いてもらいたいということ。
これは、いつもの鬱陶しいお節介ということで(笑)。
そのお節介がジャズのマーケットを狭くするというのも一理ありますね。
でも、それはやっぱり受け取り手(マーケット側)の問題なのでは?

投稿: いっき | 2010年4月18日 (日) 14時04分

オイラも、カート・ローゼンウィンケルはジャズでいいと思いますよ(笑)。
でも、ジャズファンも一括りではないのが現実。

オイラが言いたいのは(笑)。
最近はインスルメンタル・ミュージックが安易にジャズ・カテゴリー化
されているのが気になるツーことなのです。
きっと、ジャズをやっている意識もそれ程ないような気がします。

まぁ、これはオイラの妄想ですが、日本のミュージシャンは、
一例として、坂本龍一のようなポジションで音楽をやりたいのでは?
「別に〜ぃ、ジャズじゃなくてもいいよ」ツー感じ?
特に若いミュージシャンに感じるのです。

でも現実には、店頭にそれを並べる棚はない。
アルバムディスクパッケージを、まだ真剣に買っているのは、
きっと、クラシックとジャズファンなんだと思います。
小さいマーケットですが・・・。
そこに落とすと、逆に聴く人を少なくしているような気もしまが、
今はそれしかないのでしょう。

受け取り手側は、いつだって自由です(笑)。
オイラは、作り手側の聴かせる努力が足りないと思いますよ。
この頃は、ただ作って垂れ流しているだけのような気がします。
CDになって、安いコストで発売できるようになりましたからね。

投稿: tommy | 2010年4月18日 (日) 16時34分

tommyさん。

面白いご意見ありがとうございます。
色々考えさせられます。

>オイラも、カート・ローゼンウィンケルはジャズでいいと思いますよ(笑)。

それを聴いて一安心(笑)。

>最近はインスルメンタル・ミュージックが安易にジャズ・カテゴリー化
>されているのが気になるツーことなのです。

う~ん、なるほど。
私にはあまりそういう問題意識がありませんでした。

>きっと、ジャズをやっている意識もそれ程ないような気がします。
>「別に〜ぃ、ジャズじゃなくてもいいよ」ツー感じ?
>特に若いミュージシャンに感じるのです。

具体的に誰か思い浮かばないのですが、
そういう人達はいるでしょうね。
「女子ジャズ」セレクトの人達ですか(笑)?

>そこに落とすと、逆に聴く人を少なくしているような気もしまが、
>今はそれしかないのでしょう。

そのご意見、ちょっと疑問です。
80年代にも、ジョージ・ウィンストンはジャズか?ジャズでないか?で
もめたことがありましたよね。
結果ジャズ・ファンは減ったのかな~。

>オイラは、作り手側の聴かせる努力が足りないと思いますよ。
>この頃は、ただ作って垂れ流しているだけのような気がします。
>CDになって、安いコストで発売できるようになりましたからね。

こう書くと嫌な気分になる人達が多々いることを承知で書きますが(笑)、
私はそこに”批評の欠如”の問題があると思います。
”作り手側の聴かせる努力”を喚起するための”まともな批評”は
あっても良いのではないかと思います。

投稿: いっき | 2010年4月18日 (日) 18時17分

>'80年代にも、ジョージ・ウィンストンはジャズか?ジャズでないか?で
>もめたことがありましたよね。
>結果ジャズ・ファンは減ったのかな~。

あの頃は、ジャズファンがしっかりしていた(笑)。
でもオイラは、今でもあれはジャズじゃないと思っています。
あれは大ざっぱにピアノ・インスルメンタル・ミュージック(笑)。
今、ジャズピアノを名のっている人で、同じ感じの人は多いと思いますよ。
聴く人はジャズだと思って聴いているんでしょうけど。
リチャード・クレイダーマンもニニ・ロッソも、今ならジャズに入れられると思います。イージーリスニングじゃ売れない(笑)。

・・・って、ジャズが偉かった頃の話ではなく(笑)。
「別に〜ぃ、ジャズじゃなくてもいいよ」が、悪い意味ではなく、
もっと高い次元でクリエイティブしている可能性があるかもしれないツー話なのです。
それをジャズというふるいの中に、投げ込んでいいのか?
適切なマーケットに、向けられているのかツーことなのです。
でも、若い人は音楽買わなく(聴かなく)なっているんだよね。

>私はそこに”批評の欠如”の問題があると思います。
>”作り手側の聴かせる努力”を喚起するための”まともな批評”は
>あっても良いのではないかと思います。

'80年代以降、ジャズ・ジャーナリズムがないからねぇ〜。
あるのは誉め文企業タイアップと娯楽雑文なんだよ。
雑誌はホントのこと書くと載せて貰えないですからね(笑)。
今のジャズブログの方が、まだまともだと思いますよ。
後は、チョイスしていく人の自己責任(笑)。

これはジャズだけのことではなく、他のことでも言えると思う。

投稿: tommy | 2010年4月18日 (日) 19時32分

tommyさん。

誤読が多くてごめんなさい。

>でもオイラは、今でもあれはジャズじゃないと思っています。

私も同じです。

>「別に〜ぃ、ジャズじゃなくてもいいよ」が、悪い意味ではなく、
>もっと高い次元でクリエイティブしている可能性があるかもしれないツー話なのです。

なるほど。
クリエイティブな音楽をジャズという括りに入れると、
そのクリエイティブな音楽のマーケットを狭めると。
ジャズ・ファンのレベルが低いってことですよね(笑)。
そんなジャズ・ファンに聴かせても共感は得られないだろうと。
納得です。

で、ジャズ・ファンのレベルを上げるために、
クリエイティブな音楽を聴いてほしいと願うのが私の思うところです。
でも、ジャズ・ファンが高レベルでなければならないと願う
私にも問題アリかもですね(笑)。

>でも、若い人は音楽買わなく(聴かなく)なっているんだよね。

それ、切実な問題です。
クリエイティブな音楽こそ若い人に聴いてほしいんですけどね~。

>今のジャズブログの方が、まだまともだと思いますよ。
>後は、チョイスしていく人の自己責任(笑)。

はい、そうですね。
tommyさんがいつもおっしゃっていますもんね。

投稿: いっき | 2010年4月18日 (日) 21時23分

>ジャズ・ファンのレベルが低いってことですよね(笑)。
>そんなジャズ・ファンに聴かせても共感は得られないだろうと。
>納得です。

そうなのよ。多くのジャズファンは、かなりダサイ!オイラも(笑)。
いっきさんのように、ジャズの明日を音楽的側面から好奇心を持って
捕らえようとしているのは、ごく一部の人たちだと思いますよ。
後は、センチメンタルじじぃ〜なんですよ。雰囲気女子ジャズもね。
日本全国のライブハウスで今宵もスタンダードジャズなんですから。

んで、ピアノトリオが人気だなんて、すでに気分はイージーリスニング
なんですよ(笑)。酒の肴。
若い人たちが新しい音楽を聴いて、そのルーツとして再度ジャズを
聴いてくれた方が、よっぽど健全だと思うよ。
パーカー、マイルス、コルトレーンを担いで、次に行くには重過ぎるし、
担いで行って、役立たずってこともありますからね。

音楽を時間軸で繋げるから面倒くさい(笑)。
最近のミュージシャンって、ホントに広く音楽を聴いていない(笑)。

投稿: tommy | 2010年4月18日 (日) 22時17分

難しいことはわかりませんが、、
とにかく、、やたら、、BGMにジャズ(黄金時代のハードバップ)をかけてるお店が増えてます。

昔、、きれい系のピアノトリオがヤタラBGMに使われてタトキヨリ、、普通の人のジャズ離れが加速してるのかな。。って、危惧してます。
ようは、、かっこは良さそうだけど、、流れていて気にならない、、完璧なイージーリスニング。

って、わたしが思っていることは伝わってないかもしれませんが。。
そう、、番組出演おめでとう♪
こんな感じで、熱くジャズ語ってきてね。あ、、ジャズミーティング?だっけ。

投稿: すずっく | 2010年4月18日 (日) 23時09分

tommyさん。

>そうなのよ。多くのジャズファンは、かなりダサイ!オイラも(笑)。

いやっ、tommyさんはダサくないと思います。
”能ある鷹は爪を隠す”(笑)?

>若い人たちが新しい音楽を聴いて、そのルーツとして再度ジャズを
>聴いてくれた方が、よっぽど健全だと思うよ。

ハイッ、そのとおりだと思います。

>パーカー、マイルス、コルトレーンを担いで、次に行くには重過ぎるし、
>担いで行って、役立たずってこともありますからね。

上手いことおっしゃいますね。さすがです。

>音楽を時間軸で繋げるから面倒くさい(笑)。
>最近のミュージシャンって、ホントに広く音楽を聴いていない(笑)。

ほんと、嘆かわしいこと?は多々あります(笑)。

投稿: いっき | 2010年4月19日 (月) 00時06分

すずっくさま。こんばんは。

>とにかく、、やたら、、BGMにジャズ(黄金時代のハードバップ)をかけてるお店が増えてます。
>ようは、、かっこは良さそうだけど、、流れていて気にならない、、完璧なイージーリスニング。

そうですか~。
前にジャズ喫茶「いーぐる」の打ち上げで、大学生の方とお話したら、「友達がジャズはBGMだと思っていた。」と言われて、「何とかその考えを改めさせたいんです。」と言っていたのを思い出しました。

ジャズを鑑賞音楽としてきた私としては最近の展開に戸惑いを感じるばかりです。
「鑑賞音楽」という考え方自体が消滅しつつあるのかもしれないですね。
音楽は皆BGMになってしまうかもしれない?という危惧。
iPotの普及もそれに貢献していそうですよね。
最早音楽は生活のBGMになってしまっているのかも?
何かぼんやり危惧していたことが分かってきた感じがします(笑)。

>そう、、番組出演おめでとう♪

どうもありがとうございます。

>こんな感じで、熱くジャズ語ってきてね。あ、、ジャズミーティング?だっけ。

はいっ、ジャズミーティングのノリでかなり緩くなりそうです(笑)。

投稿: いっき | 2010年4月19日 (月) 00時19分

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