これは黒いです。そしてシカゴは熱いのだ!
昨年、ジャズ喫茶「いーぐる」の「年末ベスト盤大会」で聴いた1枚を紹介します。
原田和典さんがかけたアルバムです。マスター後藤さんもかなり気に入っていました。で、このCDを購入したかったのですが、通販で入手難となっていました。それが先月末突然入手可能になっていたので、慌てて購入。
エスニック・ヘリテイジ・アンサンブルの『ママズ・ハウス・ライブ 35thアニバーサリー・プロジェクト』(2008年rec. KATALYST ENTERTAINMENT)です。メンバーは、カヒル・エルザバー(ds,per,voice)、コーリー・ウィルクス(tp,per)、アーネスト・カビーア・ドーキンス(ts,per)です。シカゴのライブ・ハウス「ママズ・ハウス」の35周年記念プロジェクトでのライブ録音です。
黒いです!熱いです!たった3人でやっているのにこの濃厚な味は何なんでしょう?アフリカン・アメリカンであるが故になせる技なのでしょうね。ジャズの醍醐味のひとつである”黒さ”が濃縮された演奏が詰まっています。快感です!
エルザバーのうねる反復リズムに乗って、ウィルクスとドーキンスが単にソロをとるだけなのですが、それで何が悪い!人が生きて行くという生命力に溢れているのです。頭で考える必要などないのです。感じるままに音にすればいい。それでジャズになってしまう。カッコいいじゃないですか?こういうのってアフリカン・アメリカンでなければできないのです。
CDを聴いて感じるお店の雰囲気からいくと、日本で言えば荻窪の「アケタの店」?それとも「新宿ピットイン」?地元に密着したジャズの匂いが強烈に香ってきます。シカゴ!ジャズの街なんだろうな~。行ってみたいです。
『Oof』と『オール・ブルース』はエルザバーの親指ピアノを主体としたレイジー感漂う演奏。『オール・ブルース』はこのアルバムの中の唯一のジャズマン・オリジナル。ご存じマイルス作のこの曲が黒いブルースとしてゆったり演奏されるのを聴くと、「ブルースってやっぱり黒人の音楽だなあ。」とつくづく思います。そしてその先にアフリカの大地が見えてきます。途中で入るエルザバーの鼻歌が、これまた嵌まりまくり。
『Kari』と『Barundi』ではエルザバーがドラムを叩きます。このアルバムを聴いていると、ドラムという楽器が近代的な楽器だというのを実感します。アーシーさが薄まり、都会性が感じられるようになるんです。リズムは腰に来るグルーヴ。
『Kari』は「年末ベスト盤大会」で原田さんがかけた曲。ウィルクスがトランペット2本同時吹きを、ドーキンスがサックス2本吹きを披露しています。ウィルクスのトランペット2本吹きはかなり異色。これが色モノに聴こえないところがシカゴのジャズ。熱さがほとばしりますよ。エルザバーのラフなドラム・ソロも最高。凄いパワーが詰まっています。このアルバムで一番熱くてカッコいい!
『ママズ・ハウス』と『オーネット』はエルザバーのボンゴを主体としたアーシーでダウン・トゥ・アースな演奏。アフリカの大地の匂いがします。『オーネット』はタイトルから想像できるルーズで浮遊感のあるテーマの曲。エルザバーの掛け声が何ともいい感じ。火を囲んで周りで歌い踊るような感じの雰囲気がいいんですよ。相手がソロをとっている時のウィルクスのギロ、ドーキンスのホイッスルや笛もなかなかいい味を出しています。
黒いジャズが聴きたい人にオススメします。
アルバム名:『ETHNIC HERITAGE ENSENBLE』
メンバー:
KAHIL EL'ZABAR(ds,per,kalimba)
COREY WILKES(tp,flh)
ERNEST DAWKINS(sax)
*
実は「年末ベスト盤大会」でちょっと面白い話がありました。
私と高野 雲さんは同じテーブルで聴いていて、上記アルバムと益子博之さんがかけたトニー・マラビーの『VOLADORES』のどっちが好きかと言う話になったのです。
マラビーのアルバムはニューヨークならではの非常に考えられた理知的な演奏です。対して上記のアルバムはシカゴならではの体から溢れる演奏。雲さんはマラビーの知性が好きだとのことでした。対する私はというと?どちらも好きなのですが、敢えて言うなら上記アルバムと答えたのでした。
アルバム名:『VOLADORES』
メンバー:
Tony Malaby(ts, ss)
Drew Gress(b)
Tom Rainey(ds)
John Hollenbeck(ds,per, marimba, vib, xylophone, glockenspiel, melodica,
small kitchen appliances)
*
ジャズ喫茶「いーぐる」に集う皆さん、良いアルバムを知ってますよね。
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コメント
いっきさん
こんばんは。
予告ですけど、来月のスタン・ゲッツ特集にて、このマラビーのアルバムかけます(笑)。
というか、もうだいぶ前に収録しちゃいました。
早いでしょ~(笑)。
なぜに、ゲッツにマラビー?
それは放送をお楽しみに(笑)。
5月の2週です。
で、3週目は、あなたよ、あなた!(笑)
もう番組の終わりに予告入れちゃってますからね~。しかも、その回の編集は完パケってますので、変更ききませ~ん!(笑)
投稿: 雲 | 2010年4月14日 (水) 01時09分
そうそう、オイラも楽しみにしています。
あれっ?それっていつものジャズミーティングじゃん!
ジャズミーティングのスタジオ版?(笑)。
ジャズミーティング in ミュージックバード。
投稿: tommy | 2010年4月14日 (水) 01時17分
こんばんは。
雲さん。
>予告ですけど、来月のスタン・ゲッツ特集にて、このマラビーのアルバムかけます(笑)。
>なぜに、ゲッツにマラビー?
>それは放送をお楽しみに(笑)。
傾向が異なるサックスですよね。どういう流れでかけるのか、本当に楽しみです。
>というか、もうだいぶ前に収録しちゃいました。早いでしょ~(笑)。
早いですね。
>で、3週目は、あなたよ、あなた!(笑)
ハイハイッ、了解しております。
ちゃんと準備して?収録へ出向きますので、よろしくお願い致します。
tommyさん。
>そうそう、オイラも楽しみにしています。
楽しみですね。
>ジャズミーティングのスタジオ版?(笑)。
そうなってしまいますよね(笑)。
なんか緩いオヤジ・トークになりそうなのでやばいかも?
堅く成り過ぎない程度に何か考えて収録に臨みます。
投稿: いっき | 2010年4月14日 (水) 20時11分