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「PCMジャズ喫茶」のゲストはプロデューサーの伊藤八十八さん。その2

「PCMジャズ喫茶」レポートの続きです。
ゲストはプロデューサーの伊藤八十八さんです。

前回のレポートはコチラ↓
「PCMジャズ喫茶」のゲストはプロデューサーの伊藤八十八さん。その1

前回のレポートは5万円のクリスタルCDを聴いたところで終了。

今度は寺島さんの選曲で、伊藤さんへのブラインド・フォールド・テスト。かけた曲はグレイト・ジャズ・トリオ(以降GJTと略)の《アマポーラ》。ライブ録音です。寺島さんお得意の”哀愁のラテン”。いかにも寺島さんが好きそうな演奏でした。あ~っ、また”哀愁のラテン”ですか。

曲終了後、寺島さんが「わかると思いますが、これ誰でしょう?」と質問。「GJT。」と伊藤さん。伊藤さんがプロデュースしているんだからわかりますよね。多分これは寺島さんが好きなGJTの演奏なのでしょう。素直にそう言ってかければいいのに(笑)。

この曲は伊藤さんがハンク・ジョーンズにリクエストして演奏してもらったとのこと。ハンクは曲は知っていたが、タイトルは知らなかったそうですよ。ラテンがいいので入れてほしいと頼んだそうです。今は前番組レポートに出た《カンタループ・アイランド》や《クレオパトラズ・ドリーム》をリクエストしているそうです。《カンタループ・アイランド》は去年リクエストして2年越しでやっと実現したとか。寺島さんは「ハンクが《カンタループ・アイランド》をやりたくない気持ちがわかる。」と言っていました(笑)。今回のアルバム(まだ未発売?)では、サックスを入れて雰囲気を和らげて《マーシー・マーシー・マーシー》をやらせたとか。こういう選曲については賛否があるところだろうと思います。

ドラムの話へ。ドラム好きな寺島さんとしては、今の曲のオマー・ハキムのバネのあるドラムがいいとのことでした。それは私も同感。ウェザー・リポートに加入した時に聴いて、一発でこの人のバネのあるドラムが好きになしました。

伊藤さんはウェザー・リポートの最後の来日時によみうりランドでこのオマーを聴いて、当時のウェザーには4ビートの曲もあったので、この人は4ビートができるはずだと思っていたそう。ドリカム(ドリームズ・カム・トゥルー)のバックで叩いていた時に聴いて、GJTに誘ったとのこと。オマーは「なんで4ビートなの?」という感じだったが、マーカス・ミラー(ベース)と同じ高校の同級生で高校時代は一緒に4ビートをやっていたとのことで、「ハンクさんとならいいよ。」と受けてくれたそうです。ドリカムのライブでオマーが叩いていたとは知りませんでした。さすがはドリカム。私、ドリカムも好きですよ。

ここからハンク・ジョーンズは破滅型ではないという話へ。「ハンクは健康的で優等生的。だから91歳までの長生きにつながる。」と寺島さん。伊藤さんによれば実際もまじめだそうです。でも貪欲さがあり、そうでなければトニー・ウィリアムスとはやらないということでした。

寺島さんの「ハンクのライブ後の拍手がカッコ良かったけど、アメリカでも同じなのか。」という質問から、ニューヨークでもジャズ・オブ・レジェンドとして尊敬されていて、ミュージシャンからも尊敬されているなんて話へ。日米のミュージシャンの先輩に対する尊敬の違いについての話もありました。日本はアメリカのジャズマンに影響されているので、日本のジャズマンへの尊敬はあまりないと岩浪さんが説明していました。この岩浪さんの話、もう何度か聞いています(笑)。

ハンクのブルーノート・ライブのセカンド・セットにロイ・ハーグローブが参加したが、都合によりファースト・セットだけで帰った寺島さんは、観られなくて残念だったという話も。なんでも、翌日のライブのために来ていたロイが楽屋でハンクと合い、意気投合してセカンド・セットへ飛び入り参加したんだとか。その場で数日後に録音するハンクのアルバムへの参加も決まったそうです。岩浪さんからは、「ジャズは一緒に合わせるのがいい。上手い下手ではない。そこがクラシックよりジャズが優れているところ。」なんて意見もありました。

次は伊藤さんの選曲。前からカウント・ベイシー・オーケストラをいつか録りたいと思っていて、それがかなったアルバムから。ブッチ・マイルスがドラムに復帰したのを機に、ジャズ喫茶「ベイシー」の菅原さんと共同プロデュースで録った仙台でのライブ・アルバムです。菅原さんは早稲田の先輩だそう。

2006年の『ベイシー・イズ・バック』から《ワーリー・バード》。ブッチ・マイルスのドラムがフィーチャーされた演奏です。「最近、『ビッグ・バンドが好きなのはドラムがいいから。』と言ったら、『ビッグ・バンドはハーモニーです。』と言われてがっかりしたが、今のはドラムですよね。」と寺島さん。寺島さんらしいご意見(笑)。

次は岩浪さんの選曲。ジョエル・フラームの新譜(ヴィーナスレコード)から。伊藤さんは新譜も聴くようにしているそうですが、アルバム全部を聴く時間はないので1,2曲聴くそうです。寺島さんが「ヴィーナスレコードをどう見ますか?」と質問。伊藤さんは「頑張っている。音の作り方やジャケットに対するコンプトは違う。」と回答。「いい悪いじゃなくね。」との寺島さんのフォローに伊藤さんも同意していました。伊藤さんの意見に共感する私です(笑)。

ここから日本のジャズ・レーベルの話へ。インディー・レーベルは別として、今日本のジャズ・レーベルは世界のジャズ・マーケットを支えているんだそうです。全世界の50%は日本のジャズ・レーベルが作っているんだそうですよ。ヨーロッパのピアノ・トリオとか現代音楽的なものは除いて、正統的なものはほとんど日本とのこと。いや~っ、ビックリしました。ここで言うところの日本のジャズ・レーベルのアルバムはほぼ買わない私です(笑)。

岩浪さんによると日本からイタリアへたくさん録音に行くものだから、「じゃあ自分達で。」ということで、今イタリアのレーベルが伸びているなんて話もありました。それはわかりますね。伊藤さんも最近はヨーロッパで録音するそうで、それが前番組レポートに出た新人のトーマス・エンコ。フランスで録音したそうです。エンコは今あまり売れていないが、末永く育てていきたいとのことで、3作で勝負だとか。なるほど。

「”売れる”と”演奏がいい”どっちをとるか?」という寺島さんの質問に対して、伊藤さんは「お金をかけて作るので、売れるものを考えないとまずい。選曲が大事。なぜなら曲で買う人がいるから。70%くらいスタンダードで10~30%オリジナルが好ましい。ミュージシャンの名前が売れてきたらオリジナルを増やす。ミュージシャンが知られていないオリジナルを入れたがるのはミュージシャンのエゴ。」という回答でした。フムフム。

「リスナーの中にはハイ・ブロウな人がいて、オリジナルが良いとしてスタンダードを一段下げて見て、アカデミックなものを良しとする人もいますがどうですか?」と寺島さんが質問。伊藤さんは「ミュージシャンもお金が入ったほうがいいわけで、プロデューサーとミュージシャンの関係は売れることで丸くおさまる。関係がぎくしゃくしたら売ってやるのが特効薬。」なんて言っていました。なるほどね~。

ここでやっとジョエル・フラーム・カルテット《デライラ》をかけます。

伊藤さんは「あまり感じない。このテナーは僕のタイプじゃない。」とのことでした。寺島さんの「八十八さんはワン・ホーン・テナーは作らないの?」という質問に、伊藤さんは「テナーはコルトレーンから流れているのを作りたい。エリック・アレキサンダーが好き。エリックに『いつソプラノ・サックスをやるんだ。』と言っているけれど、エリックは『ソプラノはやらない。』と言っている。」と回答。寺島さんが「今エリックはどうなんですか?」と言うと、伊藤さんは「エリックはいい。音色が好き。ジョシュアもいい。」ということでした。「僕はエリックよりグラント(スチュワート)。」と寺島さん。「グラントよりエリック」と伊藤さん。お二人の好みは何となく察しがつきました(笑)。

次は寺島さん選曲で、スティーブ・キューン・カルテット《メキシコ》。ECMレーベルにしては珍しい演奏。寺島さんは「僕はこういう曲がめちゃくちゃ好き。」とのことでした。またしても”哀愁のラテン”(笑)。

ラストは寺島さんのリクエストで、もう一度5万円のクリスタルCD 『Jam at BASIE featuring Hank Jones』 から、《ツイステッド・ブルース》。サックス入りの伊藤さん推薦演奏。なかなか良い音でした。

更に伊藤さんの話も少々。若い頃にアービー・リンカーンを録った時に、マイルス・デイビスがスタジオに遊びに来て皆緊張して大変だったという話や、伊藤さんはフュージョンも好きで、マリーンや笠井紀美子も録音したという話がありました。

以上で終了。
プロデューサーならではの興味深いお話を聞けました。
にしても、寺島さんと岩浪さんがかける曲はいつも似たような傾向ですね~(笑)。

本番組レポートは、音楽専門・衛星デジタルラジオミュージックバード
THE JAZZチャンネルで放送している「寺島靖国のPCMジャズ喫茶」
もとにして書いています。
他にも楽しい番組が盛りだくさん。
放送を聴いてみたい方は ミュージックバード からお申し込みできます。

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コメント

私も「グラントよりエリック」に一票!

投稿: | 2010年4月30日 (金) 01時36分

いっきさん、こんにちは。

プロデューサーの伊藤八十八さんは、ジャズのあるべき姿を
確実に分かっているけど、実際はジレンマがありそうですね。
いやーぁ、今は悩んでいる感じがありますね。
オイラ、昔から八十八さんのレーベルは応援しているので、
これからも、いいアルバムを作って欲しいですね。
でも『ベイシー・イズ・バック』は買いません。
オイラ、ビッグバンドは・・・渋過ぎるかも知れません(笑)。

それにしても寺島さんのプロデューサー魂は浅い(笑)。
もう楽曲のチョイスからして、若い人は聴かないと思います。
だって、じいさん、ばあさんの時代のヒット曲ですよね。
おじいちゃんのワガママレベルの選曲、クリエイティブにならない。

投稿: tommy | 2010年4月30日 (金) 15時45分

こんばんは。

雲さん。

私もグラントよりエリックです!

tommyさん。

>実際はジレンマがありそうですね。
>いやーぁ、今は悩んでいる感じがありますね。

どうなんでしょうね。
番組を聴いている限りジレンマがあるようには感じませんでしたよ。
ご自分がやるべきことを楽しんでやっている感じでした。

>だって、じいさん、ばあさんの時代のヒット曲ですよね。
>おじいちゃんのワガママレベルの選曲、クリエイティブにならない。

そこまで言っちゃいますか(笑)。
自分の好き嫌いで判断するから時代感がでちゃうんでしょう。
もっと大きな視点を持つべきだと思うんですよね。
定番を一通り聴いた後のジャズ・ファンに次を仕掛けるという考えには賛同するのですが・・・。

投稿: いっき | 2010年4月30日 (金) 19時07分

伊藤八十八さんは最近どのような活動をされているか、ご存知でしょうか?あまり、ニュースがないので気になっております。また、伊藤八十八さんの奥様はかつて「朝倉理恵」という名前の歌手だったと聞きましたが、今も歌っていらしゃるのでしょうか?

投稿: あの場所から | 2011年12月 3日 (土) 19時13分

あの場所からさん

こんばんは。

>伊藤八十八さんは最近どのような活動をされているか、ご存知でしょうか?

相変わらずプロデューサーとして活躍されていると思います。
ことしの秋には、PCMジャズ喫茶にゲスト出演した寺久保エレナ(as)さんのお目付け役として、伊藤さんが出演していました。寺久保エレナさんのアルバムのプロデューサーは伊藤さんです。
東京JAZZでは屋外の東京JAZZサーキットに、これもプロデュースを手がけるトーマス・エンコ(p)さんが出演したのを見守る伊藤さんの姿をお見かけしました。

>伊藤八十八さんの奥様はかつて「朝倉理恵」という名前の歌手だったと聞きましたが、今も歌っていらしゃるのでしょうか?

私は伊藤さんと面識があるわけではないので、奥様のことは残念ながら存じ上げません。

投稿: いっき | 2011年12月 3日 (土) 20時56分

じっくりと若手の育成に元気に励んでおられるようですね。情報のご提供たいへんありがとうございました。

投稿: あの場所から | 2011年12月 4日 (日) 19時04分

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