「PCMジャズ喫茶」のゲストは守屋純子さん(その2)
昨日の続きです。
ここからは色々なピアニストを聴いて感想を聴くコーナー。
今回はブラインド・フォールド・テストではありません。
私は、山中千尋さんに強要して顰蹙を買ったと思うんですよね、あれは(笑)。
だから廃止?
『ハンプトン・ホーズVol.2』から《ブルース・フォー・ジャック》。
守屋さんは「私とは正反対のピアノ。こういうピアノは大好き。でも私にはできない。日本人のノリでは無理。こういう風に弾けるのは時代もあるし人種もある。」との感想でした。寺島さんは「ソロのフレーズは逐一歌える。」と。
岩浪さんが「松本茜はこういうノリ。」と言うと、寺島さんが「彼女はフィニアスでしょ。」なんて言ったことからフィニアス・ニューボーンJr.の話へ。守屋さんが「フィニアスは素晴らしい。」と言うと、「フィニアスのどこがいいんですか?」と寺島さんが質問。守屋さんは「スイングの仕方が独特。圧倒される。」と答えていました。
で、ホーズの話に戻って、寺島さんが「2000年代トリオを聴くと、これはやっぱり古い。」と言うと、「それは最近の複雑に慣れているからで、昔のやつが歌えるのは使える音が少なく、使えるフレーズも少なかったから。」と説明していました。なるほど、簡単に言えば昔は単純なフレーズだったということなのでしょう。
Ehud Asherie(ユード・アシュリー)の『スイング・セット』から《シンス・アイ・フィル・フォー・ユー》。
「若いのに古い弾き方のこれはどうですか?」という曲。寺島さんが「談笑。緊張感がない。」なんて言うと、守屋さんは「古い感じはしない。左手の使い方が新しい。」と言いつつ、「これは難しいリズム。私にはできない。”なんちゃって”はできるけど。3連かつブルージーは難しい。間を埋めないのを聴いて白けるか楽しむかは人による。」と言ってました。
で、守屋さんがこのアルバムの解説を読んだら、音楽を専門の学校で学んでいないと書いてあったらしく、「バークリー派ではなく、聴いてもそういう感じはしない。」と言うと、この演奏が気に入っていると思われる寺島さんは、バークリー嫌いでもあるので、「やっぱりそうかー。」と喜んでいました(笑)。守屋さんによると、バークリーを出てもバークリーらしい音楽をやっていない人もいるが、目立つ人はバークリーらしい音楽をやっているとのこと。これって結局、バークリーらしい音楽のほうが、もしくはバークリーらしさを良しとする人のほうが売れるってことなのかも?
岩浪さん選曲で、デューク・エリントン・オーケストラの《シングス・エイント・ワット・セイ・ユース・トゥ・ビー》。
比較として、守屋純子オーケストラの《ファッシネイティング・リズム》。
守屋純子オーケストラ、私はハイセンスでカッコいい演奏だと思いました。
2曲聴いた後。寺島さんが「エリントンのモノクロ・トーンに対して、守屋さんはカラフル、総天然色。エリントンの集中に対して守屋さんの拡散。」と言います。守屋さんは「ガーシュインの曲はビッグ・バンドではオーソドックス。これに自分の特徴を出していく。ビッグ・バンドは豪華感(ゴージャス)が重要。人が多くいることを生かす。多くの人がやらないとこういう音は出ない。」と言います。
ここで寺島さんの問題発言が!「以前、あるところで守屋さんのオーケストラを聴かせて感想を聴いたら、『確かに面白く興味深いが1回でいい。エリントンは何度でも聴きたい。』という感想が返ってきた。方向性は色々あっていいし、いい悪いじゃないが・・・。」と、これを聴いた守屋さん、反論があるような雰囲気だったのですが・・・。放送を聴いていて、場には険悪な空気が流れたのが察せられました。寺島さんたら、もうっ(笑)!
ここで岩浪さんから守屋さんに対するリクエストがあり、場は何とかもちなおしました(笑)。その提案は「第一部はこれまでどおりで良いので、第二部はもっと崩してジャムセッション風にするとか、客席に仕込んでおいたミュージシャンを舞台に上げて演奏させるとか、途中で守屋さんが離れてしまい、その間メンバーに任せるなどがほしい。」というもの。これって、岩浪さんが自著「こだわりJAZZノート」(1993年初版)に良いと書いていたクリフォード・ジョーダン・ビッグ・バンドの雰囲気そのまんまじゃないですか?こちとら、お見通しでっせ(笑)!「守屋さんはユーモラスではなく根がまじめだから。今後の飛躍のために自分を消してみることも必要。」と岩浪さん。なるほど~。
事前飲み会のおり、「守屋さんに”ガツン”と言う。」と言っておきながら、番組最初ではモンク・コンペ作曲賞の曲を褒めた岩浪さん。その時「後でちゃんと言うから。」と言っていましたが、つまり守屋純子オーケストラへの上記提案が岩浪さんが”ガツン”と言いたかったことのようです。
寺島さんから、アマチュアがジャム・セッションに参加して、あまり上手くはないけれど演奏が終わった後、「きもちいいーっ。」って何回か叫んだのを見たという話があり、「ミュージシャンも気持ちがいいものなんですか?」という質問がありました。守屋さんは「楽器で音を出してセッションするのは楽しい。上手い下手ではない。皆で集まって一つの目的を持ってやるのが楽しい。」と答えていました。なるほどそれはあるでしょうね。
キース・ジャレットの『サムホエア・ビフォー』から《マイ・バック・ペイジ》。
守屋さんの感想は「キースらしくない。フレーズが入り組んでいるのがキースの特徴のはずなのに。」。寺島さんは「未だにキースの良さがわからないが、これを聴いてキースを聴いてみようと思うようになった。キースの良さはなんですか?」と質問。寺島さんはキースもお嫌い(笑)?守屋さんは「独特のフレーズ感。好き嫌いじゃない。スタンダーズはキース、ピーコック、ディジョネットそれぞれの個性が出ている。」なんて答えていました。で、かけた曲については「わかりやすい。普通にいい感じ。」と言ってました。
寺島さんが「守屋さんはポップな曲をやろうとは思わないんですか?」と質問。守屋さんは「ポップな曲を持ってきてやりたいんですけど、今はあらゆる人が知っている曲がないんです。」と答えていました。寺島さんは「あらゆる人が知っていなくてもいいけれど、良いメロディーの曲を探してきてやる努力を今のミュージシャンはしない。」と返していました。いつものセリフです(笑)。
ラストは寺島レーベルの宣伝も兼ねて(笑)。
番組の流れでは一応この曲を守屋さんもやるという流れはありました。
松尾明トリオの『ミート・ミー・イン・パリ』から《ムーンライト・セレナーデ》。
このアルバムは2月19日発売予定の新譜です。
聴いた守屋さんの感想は「聴きやすい。耳に”スーッ”と入ってくる。私は刺激が多いのが好きでそういうものをやるが、聴くものは違う。安心して聴ける。」でした。寺島さんが「この曲は何テイクか録って、ピアノの寺村さんが弾くたびにテーマを変えようとしたが、私はテーマは変えてほしくない。」と発言。これも常套句です(笑)。
それに対して守屋さん、「この曲は元々音が伸ばせるクラリネットで演奏する曲だけれど、ピアノで弾く場合は音が伸びないので間がもたない。それにこの演奏はテンポが遅いので間が増えるので、間を埋めたくなる。寺村さんがテーマを変えたくなる気持ちはよくわかる。」ということでした。なるほど、間を嫌う守屋さんならではの意見だと思いましたし、クラリネットの曲をピアノで演奏する難しさを知りました。寺島さんはこういうミュージシャンが側の気持ちを尊重しないで、自分がやりたいようにやります(笑)。そこが良くも悪くも寺島さん!
岩浪さんもこの話を聴きながら、「確かに演奏は間延びしている。」と言ってました。寺島さんは「その間がいいんだよ。」と言い返していました(笑)。守屋さんが「有名な曲は変えていいんですよ。」と言うと、寺島さんは「有名な曲はかえてほしくないんですよ。」とまたまた反論。いつもの言い分ですね(笑)。
今回の放送、興味深い話が色々ありました。
守屋さんは明晰でサバサバした方でしたよ。
間を嫌う喋りは、高野雲さんにも通じるものを感じました(笑)。
「ジャズメン占い」(サイト閉鎖)はきっと「ジョン・コルトレーン」でしょう。
最後に守屋純子さんのホームページを紹介しておきます。ココ!
2/26(金)に守屋純子オーケストラ10周年記念コンサートがあります。
*
本番組レポートは、音楽専門・衛星デジタルラジオミュージックバードの
THE JAZZチャンネルで放送している「寺島靖国のPCMジャズ喫茶」を
もとにして書いています。
他にも楽しい番組が盛りだくさん。
放送を聴いてみたい方は ミュージックバード からお申し込みできます。
ミュージックバードのリスナーが増えないかな~。
書いていてどうも一人芝居のような感じがします。
番組中で寺島さんが「100万リスナー。」とか言ってましたが、自虐ネタです(笑)。
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コメント
いっきさん
こんにちは。
そうなんですか、守屋さんも間を嫌うトークなんですね(笑)。
うちの番組に出ていただいて、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンド特集なんてやったら、エラいことになりそうですね(笑)。
ちなみに、今晩の放送もコルトレーン特集です。
さきほど、プレイバックしてみたのですが、いやはや、自分でも鬱陶しいくらいしゃべってます……。
どうも、コルトレーンがはいると喋りが長くなる傾向があるようで……。どうしてだろう?
ボク、サックスだったら、ドルフィーやパーカーやロリンズタイプのほうが好きなのに(ないものネダリの憧れからくるものなのかもしれない)。
投稿: 雲 | 2010年2月 7日 (日) 13時43分
雲さん。こんにちは。
守屋さん。かなり前ノリで喋っていました(笑)。
次々と言葉が繰り出されていましたよ。
>うちの番組に出ていただいて、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンド特集なんてやったら、エラいことになりそうですね(笑)。
かなりのインパクトになると思います。
是非ゲストに呼んでほしいです。
雲さんとはノリが合いそうだと思いました。
「いーぐる」トークも盛り上がるんじゃないかと思います。
ベースを手にしていきなりバンドを結成しちゃった雲さんとジャズ・ピアノを聴いていきなりパウエルをコピーしちゃった守屋さん(笑)。
似ているように思います。
>ちなみに、今晩の放送もコルトレーン特集です
ハイッ!楽しみにしています。
>どうも、コルトレーンがはいると喋りが長くなる傾向があるようで……。どうしてだろう?
決まっているじゃないですか?
ジャズメン占いがコルトレーンだからです(笑)。
コルトレーンの気持ちを代弁しているのが雲さんなのです。
>ボク、サックスだったら、ドルフィーやパーカーやロリンズタイプのほうが好きなのに(ないものネダリの憧れからくるものなのかもしれない)。
皆さん往々にしてそういうものなのではないかと思います。
投稿: いっき | 2010年2月 7日 (日) 15時32分
いっきさん、こんばんは。
楽曲って「どの楽器でテーマをやるかも考えられて作曲されている」というのは、しばらく忘れていました。目からウロコなお話し!
そうだよね・・・これって大切なことですよね。
いい曲だからと云って、何でもピアノで弾いちゃえ〜はないよね(笑)。
その楽器だから表現できることも考えるのが、作曲家なんだよね。
んで、他の楽器でやりたいと思うからこそ、そこに閃きとテクニックが求められる。
オイラは間を埋めちゃうよりは、一音入魂な人が好きなので、"テーマ、曲は変えていいんです派"です(笑)。
オーケストラのスコアに強い守屋さんだから説得力がある。
投稿: tommy | 2010年2月 7日 (日) 18時23分
tommyさん。こんばんは。
>そうだよね・・・これって大切なことですよね。
そうなんですよ。
楽器をやらない私にとっては、正に目からウロコでした。
>いい曲だからと云って、何でもピアノで弾いちゃえ〜はないよね(笑)。
>その楽器だから表現できることも考えるのが、作曲家なんだよね。
そう思います。
>"テーマ、曲は変えていいんです派"です(笑)。
私も変えないことにあまり拘りはないです。
上手く変えてくれるなら全然O.K.
で、寺島さんの場合は拘りというより、エゴに近い気がします。
>オーケストラのスコアに強い守屋さんだから説得力がある。
そうなんですよ。
守屋さんは明晰なので分かりやすかったですよ。
投稿: いっき | 2010年2月 7日 (日) 21時13分