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母子愛に溢れた1枚。

ジョン・コルトレーンは誰でも知っていると思いますが、
奥さんのアリス・コルトレーンってどんな方か知っていますか?
私の場合も『ライブ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン』で
ピアノを弾いていることくらいしか知りませんでした。

P66 で、これが出たので興味が湧き、買ってみることにしました。
アリス・コルトレーン『トランスリニア・ライト』(2000,2002,2004年rec. Impulse)。メンバーは、アリス・コルトレーン(p,wurlitzer,org,syn)、ラヴィ・コルトレーン(ts,ss)、オラン・コルトレーン(as)1曲のみ、チャーリー・ヘイデン(b)、ジェームス・ジナス(b)、ジャック・ディジョネット(ds)、ジェフ・”テイン”・ワッツ(ds)、サイ・アナンタム・アシャラム・シンガーズ(vo)1曲のみ、です。プロデュースはラヴィ・コルトレーン。

1曲目《シタ・ラム》(民謡)いきなりインドな曲。ウーリッツァーとオルガンにシンセ、ドラム。パーカッションがからみます。やっぱりこう来たかー、ちょっと引きます(笑)。でも、ご安心下さい。

2曲目《ウォーク・ウィズ・ミー》(民謡)はピアノ・トリオで、アフリカ/インディアなスピリチュアル・ジャズです。途中からはキースのようなフォーク調になるのが意外ですが、これがアフリカン・アメリカンなのでしょうね。アリスのピアノが何とも深く重く慈愛に溢れているのです。母は強く優しいのであります。かなり胸に迫るものがありますよ。

3曲目《トランスリニア・ライト》はバラードです。やっとラヴィのサックスが登場。アリスのピアノとラヴィのソプラノのデュオで始まるのですが、これがまた深く優しいんですよ。ラヴィのソプラノは母への愛を歌い上げていると思います。それを受け取める母も広い。途中からヘイデンの深いベースとディジョネットのスケールの大きいドラムが加わって、心に”ズシズシ”響いてきます。コルトレーンも凄かったけれど、アリスさん、あなたもスケールがデカ過ぎます(笑)。ラヴィさん、こんな凄い父と母を持ったあなたは大変だと思います。

4曲目《ヤガディシュウォー》もバラード、アリスはシンセサイザーを弾いています。これもスケールがデカイ。音使いはザビヌル的な広がりがあるものです。ドボルザークの《家路》を思わせるような曲調で、ラヴィがテナーを朗々と吹きます。映画音楽のような感じもしますね。

5曲目《ザ・ハイム》(民謡)は、アリスがウーリッツァーとオルガンでフォークな曲を弾くところが面白いです。インディア・ミーツ・フォーク。ヘイデン&ディジョネットのスタンダーズでキースに代わってアリスがウーリッツァーを弾く面白さです。ヘイデンのベース・ソロも素晴らしいですね。

7曲目《ブルー・ナイル》、8曲目《クレッセント》はコルトレーン・カルテット。前者はジナスとワッツのコンビ、後者はヘイデンとディジョネットのコンビ。スピリチュアル度はジナス/ワッツ・コンビのほうが上です。ヘイデン/ディジョネット・コンビは意外とバップ、それに合わせてアリスのピアノもモダンになってしまうところが面白いです。ラヴィのサックスはやっぱり現代的というのか?スピリチュアル度は控えめになってしまいます。

という感じで、インド、アフリカ、フォークが混じり合ったスピリチュアル・ジャズが次々と現れては消えていきます。いや~っ、アリス・コルトレーンというジャズ・ウーマン。スケールが大きくて深いです。で、一筋縄でいかない人です。私はこのアルバムを聴いてアリス・コルトレーンに惚れました(笑)。

アリスは2007年(70歳)に惜しくも亡くなりました。このアルバムはアリス最後のリーダー・アルバムになってしまったのです。合掌。

ちなみに、アルト・サックスのオラン・コルトレーンは三男。ラヴィ・コルトレーンは次男なんですね。長男のジョンJr.は1982年に交通事故で亡くなっているそうです。合掌。

このアルバム、第一級のスピリチュアル・ジャズです。
騙されたと思って聴いてみて下さい。感動ものです!

アルバム名:『Translinear Light』
メンバー:
Alice Coltrane(p, wurlitzar, org, syn)
Ravi Coltrane(ts, ss)
Oran Coltrane(as)(6)
Charlie Haden(b)
James Genus(b)
Jack Dejohnette(ds)
Jeff"Tain"Watts(ds)
The Sai Anantam Singeres(vo)(11)

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