今日の行方さんはノリノリでした。
今日のミュージックバード「PCMジャズ喫茶」のゲストは
EMIミュージック・ジャパンの行方均さん。
今回も業界裏話を聞かせていただけると思いきや、
ほとんど行方さんのジャズ歴と好きな曲をかけておしまい(笑)!
まずは行方さんと言えば、ブルーノート1500番台を1番から出した方というお話から。行方さんは「全ての道はブルーノートに通じる。ブルーノートは帝国。」なんて言います(笑)。
行方さんのブルーノートへの思いは並々ならぬものがあります。
「至る道は簡単ではない。いいかげんに聴くとたどり着けない。強い意志に支えられている。音楽は優しくない。人に媚びるわけではない。」とも言っていましたよ。
寺島さんの「なぜブルーノートなんですか?」という質問には、行方さんは「ブルーノートは全てが面白い。」と答えて、”ブルーノート愛”を全開にしていました(笑)。
ブルーノートが体系的であるという話が出て、寺島さんが「体系的なのはジャズじゃない。」と言ったのに対して、行方さんは「体系的なのがジャズ。」と一歩も譲りませんでした(笑)。
なぜ行方さんがジャズを聴くようになったかの話へ。
ロック世代だった行方さんは、バド・パウエルの《ウン・ポコ・ローコ》を聴いて、ロックとは極めて異なる感じに惹かれたそうです。
「(アルバム『ジ・アメイジング・バド・パウエルVol.1』)頭の《ウン・ポコ・ローコ》3曲連続が辛い。」と寺島さんが言うと、行方さんは「10インチ盤から12インチ盤にした時に、頭にこれを3連発にしたのは大したものだ。」と真っ向対決(笑)。
録音した順に並んでいるのですが、行方さんはやっぱり最初のテイクが一番良いとか。
寺島さんは「リズムになじめない。ポップスから入るとわからない。ロックから入らないとこのリズムにはのれない。」なんて言ってました(笑)。
曲をかけた後、寺島さんは「チャンチキおけさ。シンバルが目立ち過ぎてピアノに耳がいかない。」と言い、一方行方さんは「当時ピンクフロイドとかもあり、ロック・ファンは耳が肥えていた。そういう耳で聴いてジャズは凄い!となった。」と言っていました。
ポップ・ファンよいロック・ファンの方がパウエルの《ウン・ポコ・ローコ》に入りやすかった?個人的な問題のようにも感じますが?
パウエルの次はアート・ブレイキーの『バードランドの夜』で、その後ハービー・ニコルズ、JR・モンテローズ、ケニー・ドーハムの『カフェ・ボヘミア』と聴き進んでいったそうです。
この行方さんのブルーノート入門については、「高野 雲の快楽ジャズ通信」にゲスト出演した際にも話していました。興味がある方は以下を参照。
http://ikki-ikki.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-8f35.html
行方さんはロック、ビートルズ世代でもあり、最初は曲ありきだったが、ビートルズのアルバムを聴いて、曲の寄せ集めからアルバムの世界観にも開眼したという話もありました。
『ビートルズ・フォー・セール』(私はビートルズに詳しくないので、このアルバムのことは知りません)を聴いた時は、知恵熱が出て学校を休んで1日これを聴いていたなんて話もありました。
で、アルバムからのシングル・ヒットを意識するというのは、ブルーノートにも似たところがあり、ブルーノートのアルバム1曲目はヒットしそうな曲が入っているという話もありました。
実は一連の曲の話の中で、”ジャズは曲”という話へ、寺島さんは誘導したかったようですが、それはかないませんでした(笑)。
行方さんは、ジャズと出会った頃の曲をたくさん持ってくるように言われていたとのことで、次はチュー・ベリーの《スイート・ハート・オン・パレード》。ライオネル・ハンプトンのヴァイブと歌のバックで、ベリーが吹き続けオブリガードが素晴らしとのことでした。一時期これを口笛で吹いていたそうです(笑)。
行方さんがこの曲を聴いている間ノリノリだったらしく、それを見た寺島さんは「この曲と出会った頃に帰っているようで、聴き方が素晴らしい。」と感動していました(笑)。行方さんは曲が終わると「ジャンプ感最高。」と言って楽しそうでした。行方さんは58歳!
次はウェス・モンゴメリーの『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』の話。これはパウエルの《ウン・ポコ・ローコ》以前に聴いたそうです。ビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のラストに《ア・デイ・イン・ザ・ライフ》が収録されていて、これに啓示を受けたんだとか(笑)。
ここで、持ってきていたジミー・スミスの『ザ・キャット』を先にかけることに。ラジオの深夜番組で、糸居五郎(ラジオのパーソナリティー)が「ロックばかり聴いてちゃダメよ。たまにはジャズも聴かなきゃだめよ。ゴーゴーゴー。」と言ってこれをかけたとか。それに惹かれたそうです。
《ザ・キャット》をかけた後、行方さんは、ジミー・スミス以外の1500番台を全て集めたという話がスイングジャーナル誌の読者欄に書いてあったのを見て、ジミー・スミスと1500番台のそれぞれの意味付けがわかったなんて話もしていました。
この曲を聴いて寺島さんは、「ロック・ファンは快楽から入っている。曲がいいとかカッコいいとかから入っているから、こういうのがいいんだね。アートじゃないよね。」と言うと、行方さんは「立派なアート。」とキッパリ!寺島さんは「ジャズ界の恥。」なんて返していました。
寺島さんはオルガン嫌いですからね(笑)。
このアルバムのプロデューサーであるクリード・テイラーの話も少し。行方さんによると、ルディ・バン・ゲルダーは「プロデューサーはアルフレッド・ライオンとクリード・テイラーだけだ。後は録音にやってきて只録って帰るだけ。」みたいなことを言っていたそうです。
《ア・デイ・イン・ザ・ライフ》をかけます。曲を聴いた後、寺島さんは「好みが決定的に違う。」と言い、行方さんは「ブルーノートに至る真実の道。」と返します。
ここまででお2人のジャズ観の違いが浮き彫りになりましたね。面白いです。
ここで息抜き。人妻Aさんは北欧オスローとコペンハーゲンへ行ったそうです。
このご時世に海外旅行とは、羨ましい限りですね(笑)。
あちらで買ってきたヤン・ヨハンソンのアルバムから《ヴォルガの舟歌》。
ピアノ・トリオ。なかなか面白くて良い演奏でした。
寺島さんは「今回初めていいのがかかった。素晴らしい。わかりやすり。」と言っていました。そうでしょうそうでしょう(笑)!
次はまた行方さんのお気に入り。曲に合わせて歌ったこともあるそうです。
ジャック・ティーガーデンの『ディス・イズ・ティーガーデン』から《アラバマに星おちて》。行方さんは「これのB面が素晴らしく、聴きだすと止まらない。全て聴きたくなります。」なんて嬉しそうに語っていました。
これのライナーノーツは寺島さんが書いていたらしいのですが、当の寺島さんはそれを忘れていたみたいです。いつものことですね(笑)。
「好き嫌いが分かれる。酔っぱらったような。うらぶれた歌。」と寺島さん。
やっと岩浪さん選曲。
リチャード・アレン・ウィリアムスの『アイ・リメンバー・クリフォード・ブラウン』から《ジョードゥ》。今一のところもあるけれどと言いつつ。ハロルド・ランドの息子がピアノを弾いているそうです。寺島さんは「ジャケットからしてあまり良くなさそう。」と言っていました。
やっぱり、岩浪さんはジャズ批評1月号の「内外新譜」でこのアルバムを取り上げていました。なんでこれなんだろう。う~ん。パス(笑)!
寺島さん選曲。バップはこういうものだ。
ジョルジュ・アルバニタスの『ソウル・ジャズ』から《ボヘミア・アフター・ダーク》。ダニエル・ユメールがバップ・ドラムを叩いて活躍します。安心して聴けるものでした。
「60年代くらいにアメリカに憧れて作ったようなものが良いよね。」と行方さん。《ポコ・ローコ》という曲が入っているのを行方さんが見つけてリクエスト。曲後に「なかなか良い感じですが、ちょっと生真面目。」と言っていました。
今度は行方さんの宣伝。
ブルーノートの新人。クリスティーナ・トレインの《スピリット・ミルク》。寺島さんは「なかなかいい。ノラ・ジョーンズよりこっちのほうがいい。色気がある。」と言っていましたよ。ポップスですな。私はあまり興味なし。
ここで、行方さんが朝から聴いているという『チェット・ベイカー・シングス』をかけようとしたのですが、流れでかけずじまい。
レニー・トリスターノの話へ。「トリスターノの良さを教えて下さい。」と寺島さん。
「ソウルフルなものと反するインテリのジャズを一方で求める。クラシックと競争していた頃のジャズ。冷理。研ぎ澄まされている。理性のジャズ。ただし、いいものを聴かないとつまらない。テープをいじっていたりするのを拒否する人がいる。」と行方さんが説明します。
『レニー・トリスターノ』から《ライン・アップ》。曲を聴いた寺島さんはいつものごとく「寒々しい。」と言っていました(笑)。行方さんは「シングル・ヒットです。口笛を吹いて街を歩きたくなるような曲。」と満足していました(笑)。これは私も久々に聴いたのですが、大西順子と山中千尋が浮かんできました(笑)。
私、これはオリジナル盤を持っています。黒ラベルの溝ありです。まっ、これはかなり好き嫌いが激しい盤なので、オリジナル盤と言えど安かったと思います。
岩浪さんが持ってきたCDを見つけた行方さんが、これは素晴らしいということでかけたのが、スタン・ケントン楽団の《プロローグ(ディス・イズ・アン・オーケストラ)》。ケントンが自分の最高のオーケストラを自慢している曲です。つまりケントンがしゃべりながらバンド・メンバーを紹介していく曲です。
行方さんは「ケントンのしゃべりがカッコいい。ケントン楽団には時期時期でスローガンがあり、カッコ良さがある。ある種のダンディズム。」と嬉しそうでした(笑)。
最後は寺島さんが〆てくれました。ミシェル・サダビーの『ブルー・サンセット』から同曲。1970年代にジャズ喫茶で大ヒットしたそうです。まっ、最後は寺島さんが哀愁メロディーをかけないと終われませんよね(笑)。
寺島さんが「今日は行方さんの独演会。」と言っていました(笑)。
今日は行方さんと寺島さんのジャズ観の違いが鮮明になりました。
寺島さんがあまり好きではないものを次々とかけた行方さんに脱帽(笑)!
*
本番組レポートは、音楽専門・衛星デジタルラジオミュージックバードの
THE JAZZチャンネルで放送している「寺島靖国のPCMジャズ喫茶」を
もとにして書いています。
他にも楽しい番組が盛りだくさん。
放送を聴いてみたい方は ミュージックバード からお申し込みできます。
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コメント
いやあ~、今回は(も?)すっごい内容だったみたいですね。
収録風景が目に浮かびます(笑)。
投稿: 雲 | 2009年12月26日 (土) 22時33分
いっきさん、こんばんは。
オイラ最近、寺島さんの"ジャズは曲”な気持ちもよく分かる(笑)。
いい曲書かないとミュージシャンってダメだと思う。演奏だけでは先人たちに追いつくのはキツイですよ。
クリード・テイラー万歳!!
ウェス・モンゴメリーの『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』は世代が近い証拠ですね。ジミー・スミスの『ザ・キャット』もね。
オイラ、レニー・トリスターノは好きです。考えていることがいい。
孤独だったとは思うけど。
投稿: tommy | 2009年12月26日 (土) 23時00分
こんばんは。
雲さん。
行方さんが飄々と、でもとても楽しそうに曲を紹介するので、聴いているこちらも楽しくなってきました。
それにしても寺島さんが苦手とする曲が多くて笑ってしまいましたよ。
tommyさん。
私も良い曲は全く否定しません。
最近もいい曲はたくさんあると思うのですが・・・。
次回の「ジャズ批評3月号」では「ジャズメロディ大賞」がありますので、
是非見て下さい(笑)。
行方さんは世代なりの普通のジャズ観だと思います。
行方さんが感じるジャズにおけるカッコ良さにも賛同できます。
一方の寺島さんは、マイナー箱庭的なんだと思います。
良くも悪くもジャズ喫茶という空間でのジャズ愛好の域を抜け出したくないんだと思いますよ。
投稿: いっき | 2009年12月26日 (土) 23時38分