板橋文夫さんの味があるトーク&ピアノに参りました。
今日の「高野 雲の快楽ジャズ通信」は「マッコイ・タイナー特集」。
ゲストは、ジャズ・ピアニストの板橋文夫さんです。
番組の詳細は 「快楽ジャズ通信」 を参照願います。
板橋さんと言えば、私が山梨に帰ってきて甲府「桜座」で見た最初のライブが
アルト・サックスの林栄一さんと板橋さんのデュオでした。
過激に弾きまくる板橋さんの映像が目に焼き付いています。
即興演奏で《桜座の夜》という曲もやりました。
当時の演奏は、横浜・ドルフィンでライブ録音された『ライブ・アット・ドルフィー』を
持っています。なかなか良いデュオ・アルバムですよ。
マッコイ・タイナーのプロフィールはディレクター嬢のナレーションで。
女子ディレクターの番組制作日記 にUPされています。
板橋さんがジャズを始めた頃のアイドルがマッコイ・タイナー。
板橋さんの『渡良瀬』での演奏とマッコイの『ソロ・ライブ』での
ペンタトニックの音が日本人にも共有している感覚なんて話も出ます。
和的情緒はペンタトニックによるものかも?
このことについては後ほど出てきます。
ペンタトニックとは、5音で構成されるスケール(音階)です。
日本の「四七抜き」とか、沖縄民謡などがあります。
で、《渡良瀬》のメロディーは黒鍵の5音でできているんだとか。
雲さんは、「《猫踏んじゃった》と同じじゃないですか?」なんて言ってます(笑)。
板橋さんは、マッコイのバップ的でなく、モード的な感覚が良かったとか。
マッコイ・タイナーの『インセプションン』からタイトル曲。
まさにマッコイな演奏。
和音の響きはフレッシュですよね。
明快で力強い演奏です。
ここではまだ後年のしつこさはないです(笑)。
(以降緑字は、曲を聴いての私の感想などです。)
板橋さんがレコードを持ってきたので番組ではそれをかけました。
板橋さんも久しぶりに聴いたそうです。
柔らかい音がいいなんて話になります。
板橋さんは大学に入って本田竹曠さんを聴いて、
感激してジャズを弾くようになったそうです。
マッコイの演奏については、レコードのコピーから入ったそうです。
レコードの針を何度も戻してコピーしたんだそうです。
大変だったそうですよ。
一音ならまだしも、和音はとくに大変だったとか。
そういう面倒なコピーをしたことは遠回りだったかもしれないが、
今思えばそれが良かったのではないかとのこと。
今のように譜面が簡単に手に入るようになるのはよくないなんて話も。
次はホーン入り。
『リアル・マッコイ』から《パッション・ダンス》。
この曲は板橋さんが学生当時バンドでよくやったそうです。
これ、テーマのメロディーがカッコいいと私は思います。
このハーモニー感覚。「マッコイだよね~。」としか言いようがありません(笑)。
よくもまあ、指がコロコロと動きます。
何と言うのか?重さと飛翔感が同居している快感。
ジョー・ヘンダーソンがね~、ウネウネとやってくれます(笑)。
エルビン・ジョーンズも素晴らしいグルーヴ。
私、これ好きです。
このアルバムが録音された年、まだ雲さんは生まれていなかった話から、
板橋さんが「雲さんはなんでジャズを聴くの?」という質問へ。
当時リアルタイムで聴くのと、後にCDで聴いて当時を追体験するのは違うはす。
そういうところをどう捉えているのかも知りたかったみたいです。
雲さんは刺激的な音楽を聴きたいので、それがジャズにもあると答えます。
板橋さんは、マッコイに新鮮な新しい音楽を感じたそうです。
雲さんがコルトレーンの《マイ・フェイバリット・シングス》で
マッコイを初めて聴いたなんて話から、コルトレーンはどうかという話へ。
板橋さんも最初コルトレーンはわけがわからなかったそうです。
ジャズ喫茶でフリーになっていたのを聴いて「なんじゃこりゃ。」と思ったそう。
リアルタイムで時代の音楽を聴く感覚とCDであらゆる時代を追体験するのは
違うという話へ戻って、雲さんはやっぱり当時の空気はわからないと言います。
だから雲さんは、リアルタイムの空気を知っている人と話をするのは面白いと。
雲さんが「だから今日、板橋さんと話すのは凄く面白いんですよ。」と言うと、
板橋さんは「それは運命だ。」なんて言っていました(笑)。
板橋さんの『渡良瀬』からタイトル曲。
私は初めて聴きました。良いですね~。
なるほど、確かにマッコイ的な響きがあります。
これが黒鍵だけで弾いたペンタントニック・スケールね~。
和の響きも感じられますね。
これは日本人の琴線に触れる音だと思います。
重さと郷愁のサウンドがいい感じにハートにきます。
他の演奏も聴きたいので、『渡良瀬』を買いたいと思いました。
曲後、雲さんが「琴線にじわじわ染みてくる。何か懐かしい。」と言います。
すると、板橋さんは「5音階でできていて、日本の唱歌からきている感覚。」と
言います。板橋さんのお母さんが音楽の教師だったそうで、
「唱歌とかをいつも口ずさんでいたのが耳に残っているのかも?」とのこと。
板橋さんにとっては生活の歌なんだとか。
唱歌と言えば、前にブログに書いた「音楽の正体」の放送でやった、
「日本音楽とは何か」で、日本音階「四七抜き」を唱歌として普及させた
なんて話がありましたよね。
http://ikki-ikki.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-392a.html
チェックしてみて下さい。
板橋さんは小学2年からクラシックを習ったとか。
でも、それまで特にクラシックは好きではなかったそうです。
板橋さんは家にあった足踏みオルガンが好きだったそうで、
よくさわっているの(弾いている?)のを親が見て、
音楽も習わしてみようとなったんだとか。
国立高校を受験して、音大に上がった後もクラシックをやっていたが、
ポップスのほうが好きだったそうです。
大学で本田竹曠さん(もクラシックからジャズへ転向)を聴いて、
板橋さんもジャズへ転向。
板橋さんと本田さんはピアノの先生が同じだったそうで、
これには運命的なものを感じると言っていました。
で、今やっとクラシックの良さがわかり、
ジャズと大して変わらないと思うようになったとか。
ただし音符がたくさんありめんどくさいとか言っていました。
板橋さんらしいです(笑)。
今は自分なりにできるピアノを弾きたいとのことで、
今度のライブではクラシックを弾くんだそうです。
この板橋さんのライブについては、tommyさんのブログに掲載されています。
http://ameblo.jp/tommy-jazz/theme-10016197299.html
を参照願います。
マッコイ・タイナー69歳のソロ・ピアノ。
『ソロ・ライブ』から《ネイマ》。
大人し目に入ったと思ったら、やっぱりガンガンきますね。
で、またしっとりも織り交ぜつつ、緩急をうまく配した大人のピアノです。
今日は板橋さんの味があるトークに魅了されました。
楽しかったです。
<アフター・アワーズ編>
板橋さんのエレピと雲さんのエレベでセッション。《高野雲ブルース》。
いきなりのベース大音量で音が割れています(笑)。
板橋さん。黒いです。ガンガン攻めてきます。
鼻歌も交えつつの快適ブルースになっていましたよ。
雲さんのベース・ソロも今回は多めにフィーチャー。
音がクリップしてもお構いなしの痛快セッションでした。
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コメント
いっきさん、こんばんは。
今回のセッションは、ちょっとセッティングがいつもとは違っているのです(笑)。
いつもは雲さんのベース用スピーカーは机の下の置いてあるのですが、
板橋さんが「もっとさぁ、ライブっぽくガンガンにいこうぜ!音なんか割れてもいいよ、ボリューム上げてさ」ツーことで、
音質よりもノリを重視し、スピーカーをイスの上まで持ち上げて、ライブ気分でやっているのです。
投稿: tommy | 2009年12月14日 (月) 21時22分
tommyさん。こんばんは。
なるほど、今回のセッションは板橋さんリクエストによるセッティングだったというわけですね。
いつもの”ホンワカ”ムードとは違って面白かったです(笑)。
板橋さんには古き佳き時代の”不良”を感じました。
でも、実はお母さんが音楽の先生で、大学までクラシックをやっていた(ある意味お坊ちゃんですよね)というのが意外で面白かったです。
投稿: いっき | 2009年12月14日 (月) 22時02分
いっきさん
そうなんです、tommyさんのおっしゃるとおり、板橋さんセッティングだったのです。
スガダイローさんのときもスガさん指定のセッティングで録音しました。
お2人の指定は、決してクリアでイイ音の録り方とはいえません。
でも、不思議なことにノリノリな演奏になっちゃうんですよね~。
>板橋さんには古き佳き時代の”不良”を感じました。
私は、古き良き白衣を着た理科の実験室に閉じこもっているような、ヒトクセありそうな中学の先生みたいだと思いました。
なんか、3m離れていてもタバコ臭くて(笑)、宿題忘れると、ゲンコツで頭をボコッとやる教師(笑)。
そういう先生、一人ぐらいいませんでしたか?
板橋さんの演奏方法は、まさに鍵盤を拳でボコッと殴るような弾き方でした。
一瞬、ディレクター嬢のエレピが、坊主頭の男子中学生に見えてしまいました(笑)。
投稿: 雲 | 2009年12月14日 (月) 22時34分
雲さん。こんばんは。
>でも、不思議なことにノリノリな演奏になっちゃうんですよね~。
スポンティニアスなジャズのツボを心得たセッティングなんでしょうね。聴いていて面白かったですよ。
>私は、古き良き白衣を着た理科の実験室に閉じこもっているような、ヒトクセありそうな中学の先生みたいだと思いました。
雲さんは板橋さんの挙動とかをご覧になっているので、雲さんの喩えのほうが的を射ていると感じます。
そういう先生いました(笑)。
私の中学校時代の体験では、音楽の先生と美術の先生がかなりイケてました(笑)。全然関係ないのですが、中学の時の理科の先生は学年主任で、娘さんは今山梨放送(日テレ系)のアナウンサーをやっています。もういい年なんですけどね(笑)。
>一瞬、ディレクター嬢のエレピが、坊主頭の男子中学生に見えてしまいました(笑)。
面白いです。なんか情景が浮かんできます。
投稿: いっき | 2009年12月15日 (火) 00時04分