ラルフ・ボウエンって懐かしい(笑)。
例によって、ディスクユニオン・ジャズ館ホームページの新譜を見ていたら、この人ラルフ・ボウエンの名前が目に入ってきました。でもやっぱりこれも安いHMVの通販で買いました(笑)。
買ったのは『デディケイテッド』(2008年rec.Posi-Tone)。メンバーは、ラルフ・ボウエン(ts)、アダム・ロジャース(g)、ジョン・パティトゥッチ(b)、アントニオ・サンチェス(ds)です。ショーン・ジョーンズ(tp)が1曲のみ参加しています。
私の中ではラルフ・ボウエンというと、新生ブルーノート・レーベルが出来た時に、オーディションによって集められた新人によって結成されたグループOTB(アウト・オブ・ザ・ウルー)のメンバーだったということ。OTBにはケニー・ギャレット(as)やラルフ・ピーターソン(ds)がいました。
今から24年前1985年のことです。当時スイングジャーナル誌がウィントン・マルサリス一派のことを「新伝承派」と言ってもてはやしていました。私は「新伝承派」のことを思い出すたびに、日本のジャズ受容の恥部を晒した気がして、虚しくなると同時に呆れて笑ってしまいます。当時のスイングジャーナルの編集長って誰でしたっけ?
さて、本アルバムの話に戻ります。私の目当てはボウエンというよりは、他のメンバーでした。だって、最近絶好調のロジャースに、パティトゥッチにサンチェスですよ。これは聴くしかないでしょう。で、ボウエンも最近急に録音したわけではなく、クリスクロス・レーベルに何枚か録音していたんですね。単に私にとって圏外の人だったようです。
話はまたちょっと横道にそれますが、クリスクロスに最近懐疑的な私なのです。中堅どころを積極的に録音するのは良いのですが、これが金太郎飴の如く似たような内容。レベルもオール80点という感じで、もうこの手のジャズに飽きがきてしまいました。だから最近はこのレーベルをほとんど買いません。ボウエンのこのアルバムもクリスクロスから出たら買わなかったかも?
やっと内容の話。ディスクユニオンの宣伝文句に「クールな王道コンテンポラリー・ジャズとしてお薦めいたします!」とありましたが、まさにその通りの内容でした。おしまい!
ではあまりにもかわいそうですよね(笑)。まずはボウエンのテナー、音色といいフレージングといいまさに今時の中堅テナーです。シーマス・ブレイクとかクリス・チークとかその手の人達と遜色ありません。で、これと言ってそこから抜け出す何かがないのも事実でありまして、そこがちょっと辛いところです。私はこういうテナーは好きですけどね。クリアーでパワフルな音もいいです。マイケル・ブレッカーの系譜だと思います。
前述の通りこの人も新伝承派なんですが、今となれば当時はジャズとして認めてもらえなかったマイケルの系譜なんですからね。当時のジャズ評論家も実はいい加減な人が多かったと今は思うわけです。というか、50、60年代的視点の評論家には既に80年代のジャズの本質は見えていなかったのです。当時からマイケルが好きだった私としては、ざまあみろという感じです(笑)。やばっ、今日はちょっと意見が過激です。
曲はすべてボウエンが書いています。王道ストレートなものばかりです。クールでモーダルな良い曲を書くと思います。
他のメンバーについて、ギターのロジャースはここでも絶好調ですね。私のこの人に対するイメージはもっとロック寄りだったのですが、そうではなく正統派ジャズ・ギターのほうが強いことがわかりました。シングル・トーンによる高速フレージング時の音の粒立ちもかなりのもので気持ち良いです。テナーのバックでは、コードやシングル・トーンにより手堅く演奏を支えています。
ドラムのサンチェスはこういうコンテンポラリーなビートを叩かせると本当に上手いと思います。この人の場合、凄い煽りをするとかキレがあるとか突出したものではなく、場を見極めて過不足ないリズムを繰り出すところに、職人的な上手さを感じます。一方、もはやかなりのベテランであるパティトゥッチが、ちょっと裏方サポートに徹しすぎているように感じます。もう少し積極的なからみもほしい気がしました。
トランペットのジョーンズが参加しているのは1曲だけですが、なかなかパワフルで落ち着いた吹奏。アルバムの雰囲気にマッチした良い演奏を聴かせてくれます。ラストの曲はボウエンのテナー・ソロ。これがなかなか渋い味わいのあるもので、なんとなくクラシックな曲調なのは個性的?
全6曲42分強というのは、今時のCDにしては収録時間が短いですが、曲数が多いだけのCDが多い昨今において、これはこれで良いものです。
クールな王道コンテンポラリー・ジャズ!聴いてみて下さい。
アルバム名:『dedicated』
メンバー:
Ralph Bowen(ts)
Sean Jones(tp)
Adam Rogers(g)
John Patitucci(b)
Antonio Sanches(ds)
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コメント
いっきさん、こんにちは。
いや〜、本日はちょっと激っていますね(笑)。
オイラも'80年代以前のマイケル・ブレッカーは認めていなかった一人です。ツーことでいい訳。
'70年代のマイケルはフュージョンと仲良くし過ぎたから、その色がついちゃって仕方がなかったと思うんだよね(笑)。'70年代はフュージョン・テナーの第一人者だったからね。
この頃は、ちゃんとミュージシャンの資質を見抜くような聴き方をするようになったけど、'70年代当時は参加アルバム=ミュージャンの音楽性と受け取っていたので、出てきた頃のマイケルはフュージョンと思われても仕方がなかった。
きっとマイケル自身もかなり変わったと思う。
マイケルがストレート・アヘッドなジャズをやるようになったのは'80年代に入ってからなので、以前からリアルタイムに聴いていた人は、すでにマイケルを注意深く聴いていなかったと思う。
マイケル・ブレッカーのジャズ的な評価が良くなったのは、90年代以降のことですね。
オイラに至っては、つい最近(笑)。
投稿: tommy | 2009年11月11日 (水) 18時01分
tommyさん。こんばんは。
>いや〜、本日はちょっと激っていますね(笑)。
確かに激ってます(笑)。
たまには(しばしば?)毒も吐くということで、ご容赦願います。
>オイラも'80年代以前のマイケル・ブレッカーは認めていなかった一人です。ツーことでいい訳。
>以前からリアルタイムに聴いていた人は、すでにマイケルを注意深く聴いていなかったと思う。
おっしゃることは分かりました。
確かにそれはあると思います。
私がジャズを聴きだしたのは82年なので、フュージョンの猛威が終焉を迎えた頃だったのが良かったのでしょう。
で、先入観はあまりなくクールな視線でジャズに接していたので、今考えればジャズがちゃんと見えていた気がします。
フュージョン、エレクトロニクスについても違和感はなかったですし、コルトレーンの精神性にも全く毒されていなかったりと、ある意味幸せな世代です。我々は(笑)。
80年代が青春時代で、ジャズを聴き始めた人達は、それまでのジャズ・リスナーとはかなり違った感性でジャズに接しているんじゃないかと思います。
投稿: いっき | 2009年11月11日 (水) 20時01分
熱い内容なので、、違うところに反応。(爆)
>これが金太郎飴の如く似たような内容。
言いたいこと、、わかるんだけど、、
やっぱ、ギターとか、このれーべるからでてるりーだー作、良いと思う。ギターって、特に同じようなフォーマットで聞き比べると、、おぉ、、って、あったりするんで、私のようによくわかってないリスナーには、もありがたいのです。
>私のこの人に対するイメージはもっとロック寄りだった
そうなんだぁ。最近のリーダー作は、めちゃジャズですよねぇ。
って、ぼうえん、、この人のソロなんか不思議な魅力ありますよね。もう、音の事はどうでもいいです。(爆)
トラバありがとうございました。
あのね、いっきさまのスタイルなので、あれなんですが、、
カタカナの人物名表記の他に、下の方にでも、英語の表記入れておくと、良いかも。
って、余計なお世話かもしれないけど。
投稿: すずっく | 2010年4月28日 (水) 08時24分
すずっくさま。こんばんは。
>熱い内容なので、、
時々熱いというか、暑苦しい内容になってしまいます(笑)。
程々にしないといけないと思うのですが・・・。
>やっぱ、ギターとか、このれーべるからでてるりーだー作、良いと思う。
このレーベル、一時期よく買ったのに、最近ちょっと飽きちゃった気がします。
おっしゃるように、ギターとかに注目すべきかもしれませんね。
すずっくさまのブログを参考に少しフォローしてみようかな~。
>私のようによくわかってないリスナーには、もありがたいのです。
また御冗談を、わかっていらっしゃると思います。
もう隠さずにジャズ中毒であることを認めましょう(笑)!
>最近のリーダー作は、めちゃジャズですよねぇ。
私、結構思い込みが激しいので・・・(笑)。
上記のとおり少しフォローしてみようかと思っています。
>ぼうえん、、この人のソロなんか不思議な魅力ありますよね。
ありますね。私はかなりツボですよ。
>もう、音の事はどうでもいいです。(爆)
ほんとですか?
音に対する違和感は残しておいたほうが、それはそれで面白いと思いますが?
>カタカナの人物名表記の他に、下の方にでも、英語の表記入れておくと、良いかも。
それは検索対策としても有効ですよね。
前向きに検討します(笑)。
トラバありがとうございました。
投稿: いっき | 2010年4月28日 (水) 20時27分