ヴィジェイ・アイヤが気になって。
1か月程前、久々にヴィジェイ・アイヤのアルバム『リイマジニング』を聴きました。
聴いてその暗黒パワーに圧倒されたわけですが(笑)、
じゃあ最近のアルバムはどうなんだろう?
という気持ちが心の中にムクムクと湧いてきました。
暗黒パワーに圧倒された時のブログはコチラ↓
http://ikki-ikki.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-8f1f.html
ではということで、HMVへ注文!
2枚購入しましたので紹介しましょう。
ヴィジェイ・アイヤ・トリオの『ヒストリシティ』2008,9年rec. ACT)です。メンバーは、ヴィジェイ・アイヤ(p)、ステファン・クランプ(b)、マーカス・ギルモア(ds)です。この3人、組んでから5年も経つのでコンビネーションは抜群です。しっかりアイヤの特異な音楽性を表現しています。この音楽がACTレーベルから出るなんてちょっと意外です。まあ、アーティスティックなものという括りではアリなのかと思います。
アイヤの特徴はその個性的な弾き方だと思います。右手でアルペジオ(分散和音)のように音群を弾き、その音群をずらしながらたたみ掛けるように次々と繰り出してきます。それが濃厚な味わいをもたらします。またアイヤはアンドリュー・ヒルに通じるものがあると言われますが、それは先の弾き方とダークなハーモニー感覚のせいではないかと、私は思います。そしてクラシックの匂いも感じますね。
ではここでアイヤについてまとめます。かなり安易(笑)!
ダークで濃厚=”暗黒パワー”なんです(笑)。
で、今回のアルバムですが、『リイマジニング』から比べるとかなり暗黒度は和らいでいます。それがトリオというフォーマットのせいなのか、はたまたアイヤが感じている世の中の不安が和らいだせいなのかはわかりません。聴き易いので喜び半分、いやっ、もっと暗黒が聴きたかったが半分です(笑)。
自作曲の他にアンドリュー・ヒル、ジュリアス・ヘンフィル、スティービー・ワンダーの曲などもやっています。ヒップホップ・ディーヴァM.I.A.(私は未知)の曲もあります。それらがまったく違和感なくアイヤの音楽となって表現されているのはさすがですね。
リズムは変拍子のオン・パレード。私はこの手の変拍子は数えたりしません。だって、私が演奏するわけじゃないんで拍子を分析してわかる必要はないわけです。それよりは変なリズムに体をまかせるほうが気持ちいいです。難解変拍子をものともしないクランプとギルモアは相当なテクニシャン。クランプがアルコ(弓弾き)をさりげなく織り交ぜるセンスにも関心しました。三位一体ここにありです。
例によって中低音濃厚な録音なので、たたみ掛け奏法&ダークなハーモニーと相まってマッシブなサウンドは聴き応え十分。全曲続けて聴くと胃もたれを起こしそうです(笑)。
そこらに転がっているピアノ・トリオに飽きた方は是非このトリオを聴いてみて下さい。
アルバム名:『HISTORICITY』
メンバー:
Vijay Iyer(p)
Stephan Crump(b)
Marcus Gilmore(ds)
*
今日は大サービス!もう1枚紹介しちゃいましょう。
ヴィジェイ・アイヤとマイク・ラッドの『スティル・ライフ・ウィズ・コメンテーター』(2006年rec. SAVOY JAZZ)です。こちらはアイヤとポエトリー・リーディングのマイク・ラッドとの共演アルバムです。2004年に出した『イン・ホワット・ランゲッジ?』の続編的なアルバムです。今やジャズの名門サボイ・レーベルからこんなのが出る時代なのです。
一昨年、ジャズ喫茶「いーぐる」の「NYダウンタウンを中心とした新譜特集」で聴いてから気になっていたのですが、買いそびれていた1枚です。
こちらは打ち込みも多用していて、ラップ、ヒップホップ、ファンクなどの要素が強いサウンドです。私はこういう打ち込みジャズも結構好きです。ただし、やっているのはアイヤですから、そこら辺に転がっているラップと一緒にしてもらっては困ります。上記のとおりのアイヤ・ワールドを基本に、ポップな要素を拡大したもので、一筋縄ではいきません。私は、これもアートだと思います。
面白いのは日本語のポエトリー・リーディングが入っていることです。上手い日本語なのですが、あちらに住む日本人なのか、日本語が上手いアメリカ人なのか、判別しにくいものがあります。真ん中あたりの曲まで聴き進んだら、いきなり日本語で喋り出すからビックリしましたよ。ジャパニーズ・イングリッシュを交えた今時のポップな詩が妙に心にひっかかります(笑)。この詩もラッドが作っているんだから面白い!それからオペラ歌手?が歌っている曲もあります。
こちらは難解なところは皆無で、楽しいアルバムに仕上がっています。
いわゆるジャズに拘らない方に推薦します。
アルバム名:『still life with commentetor』
メンバー:
Vijay Iyer, Mike Ladd
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コメント
個人的にはこういうタイプの演奏、本来なら大好きなのですが、ピアノが個性的すぎるせいか、最初はあまり良い聴き手として選ばれなかったみたいです(と、もっと素直に書いてしまうと、よく分からなかった)。かなり高度なバランスで演奏しているトリオなのはひしひしと伝わってくるのですが。
ただ、スルメ系の噛めば噛むほど味が出てくる現代ジャズのアルバムのような気もしているので、時間を置いて再トライしてみようかと思ってます。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2010年1月30日 (土) 09時50分
910さん。こんにちは。
TBありがとうございます。
”パッ”と聴いてすぐに入ってくる音楽ではないですよね。私の場合はアイヤのリーダー作などを既に聴いていたので、今度はこうきたかという感じでした。
>ただ、スルメ系の噛めば噛むほど味が出てくる現代ジャズのアルバムのような気もしているので、
これは一旦嵌まると結構中毒性がある音楽かもしれません(笑)。
投稿: いっき | 2010年1月30日 (土) 12時03分