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高野 雲さんのアルバム評にうならされる!

最近のジャズはどのように聴いたら良いか分からない。
最近のジャズは楽しめない。
デイブ(・ダクラス)、クリス(・ポッター)には旋律がないからダメ(笑)。
なんて意見が私の周囲にはあります。
さて、どうしたら最近のジャズが分かるんでしょう?
ますは”分かる”ところから、それを楽しむかどうかはあなた次第。

最近のジャズが分かりたい。
そんなあなたに朗報です!
我らがジャズ・ナビゲーター高野 雲さんが教えてくれました!
ちょっと大袈裟ですか(笑)?

雲さんは、ブログ:「快楽ジャズ通信」 をやっていますが、
サイト:カフェ モンマルトル の管理人でもあります。
このサイトには「ジャズ批評」というのがありまして、
雲さんはアルバム評をたくさん書いています。
アルバム評は既に1000枚を超えていて、今も増えています。

最近、トニー・マラビー『パロマ・レシオ』のアルバム評がUPされたのですが、
これを読めば最近のジャズの聴き所が分かると、私は思ったのです。

P48 雲さんのアルバム評はココ↓
http://cafemontmartre.jp/jazz/Ma/paloma_recio.html
ここの後半部分が重要なのです。

このアルバムについては、ウェブマガジン:com-post
NYダウンタウンの益子博之さんもアルバム評をUPしています。
http://com-post.jp/index.php?itemid=285

これら2つのアルバム評を読んで面白いものが見えてきました。

益子さんが「全体としてのまとまりというか、何か統一された意思のようなもの」と言っていること。
このアルバムのプロデューサー、マーク・アライアスがライナーに書いているという「このバンドは結成から2年以上に亘ってツアーは一切行わず、地元ニューヨークで独自のアンサンブルに関する議論と検証を重ねてきた」という事実。
マラビーがインタビューで答えた「language=言語、語法、文体」
また益子さんが「「language」とは特定のメンバー間のみで成立するような会話の進め方、会話術とでも言うような、極めて具体的で固有性の高いものではないだろうか?」と言いっていること。

それらに対する答えは、雲さんが書いている以下なのではないかと、私は思うのです。
(雲さんからコメントをいただきましたが、雲さんは益子さんのアルバム評は読んでいなかったようです。まっ、私は多分そうだと思っていました(笑)。なのに、お2人のアルバム評が呼応しているかのようだったので、ここにリンクさせてみたのです。面白いですよね。)

この手の演奏で大事なのは、互いの距離や密集感、一体感ではなく、ビジョンの共有。
テンポ、モード、モチーフ。これらの要素をメンバー同士が共有し、常に演奏中に頭の片隅に置きながら、互いに細かなところまでは寄り添わず、反応し過ぎずに、己の思い描いたビジョンを即興する。そして、即興とはいえども、共有しているモチーフから外れすぎなければ、結果的に「合っている」し「思いもよらぬ面白い内容」になることもある。

あとは練り上げるだけ。即興といえども、個々の局面では毎回違うアプローチはするにせよ、音のストーリーの段取りは、マラビーのバンドの場合は、相当に練習し、練り上げている形跡が随所に認められる。
かなり入念なリハーサルが施されたに違いない。

コレクティヴインプロヴィゼーション(集団即興演奏)は、最初の段階はハプニングの連続だが、プレイバックを繰り返しているうちに、どこまで離れていいのか、どこまで寄り添っていいのかという距離感と、己の役ドコロ、そして演奏の方向性が次第に見えてくる。
このプロセスを繰り返し、互いの距離感と音像のバランス感覚がつかめれば、あとは回数を重ねるごとに「練れた」内容になってくるし、楽器同士の距離感もよりエリアが広がってくるものだ。

つまり、一聴、トリッキーにすら聴こえかねないマラビーらのアンサンブルは、机上で練り上げられたアレンジではなく、演奏を通じて「演りながら練り込んでいった」現場感の強いアンサンブルなのだ。

(以上の文章。雲さんはまだご不満みたいです。「折を見てもう少し文章ほぐそうと思います。」というコメントをいただいていますので、後日この記事を読んだ方は上記のリンク先へアクセスして、アルバム評を読んでいただきたく。)

その後に続くマイルス・クインテットの話がよりわかりやすい例です。

以上を読めば彼らの音楽が見えてきませんか?

そして、これらを楽しめるかどうかは、
雲さん言うところの「ジャズ的な刺激を強く感じるのは、きっと純粋な4ビートではなくとも、即興とアンサンブルへの目線がジャズそのものだからなのだろう。」
皆さんが面白いと感じるか否かなんだろうと、私は思います。

私が信頼するお2人のアルバム評を勝手に解釈しているだけですが、
皆さんはどう思われますか?

<追記>
雲さんのピアノに対する解釈も興味深いものがあります。
ピアノ入りが少ない最近のジャズの傾向を補足する内容だと思います。

P31 ジョー・ロバーノ『フォーク・アート』についても
雲さんのアルバム評がUPされています。ココ↓
http://cafemontmartre.jp/jazz/L/folk_art.html

こちらを読めばジョー・ロバーノが分かります(笑)。

いや~っ、雲さんのアルバム評は分かりやすくて面白いです!

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ジャズ友」カテゴリの記事

コメント

いっきさん

おはようございます。
私のレビュー、紹介してくださってありがとうございました。

>それらに対する答えは、雲さんが書いている以下なのではないかと~

とありますが、じつは、私、益子さんのレビュー読んでませんでした(涙)。
きっと書いてるだろうなとは思い、参考のためにcom-postの過去記事探してはみたのですが、辿り着けずじまいで、諦めてたの(涙)。失礼ながら、あのサイトは、お目当ての記事、探しにくい構造だよね(笑)。

で、いっきさんのリンクたどって先ほどようやく読むことができました。
でも難しくて、というか難しい言葉がいっぱい出てきていて、頭の悪いボクちんには書いてある内容、あまり深くは理解できませんでした(´_`。)グスン

このレビュー書いたのって、じつは、いっきさんから借りて聴いた直後だったんですよ(数か月前)。
でも、HTML化してアップするのが面倒で放置してたの(笑)。

ところが、寺島さん激褒めの(少なくともライナー上では)グラント・スチュアートの新譜を聴いたら、「こんなんジャズじゃねぇ!」と怒りに火がつきまして(笑)、ジャズなテナーはコッチだろ!という思いが、ようやくレビューをアップしようと重い腰を上げるに至りました。

それと、番組ゲスト出演いただいた大坂昌彦さんがお話しされた「マイルス・クインテット後期に見られるダダイズム性」と、スガダイローさんとの楽器の距離感の話と、実際に2人でセッションして検証した結果が、自分の考えに確信を持つことにつながり、過去に書いた内容に少し手を加えてアップするに至りました。

とかいって、改めて読み返してみると、自分の文章も難しげな書き方っぽくて、よく分かりません(笑)。
いかんいかん、これではまた寺島さんから「バカになれない利口なふりしたバカ」とバカにされてしまいそうだ(涙)。
なので、折を見てもう少し文章ほぐそうと思います。
自分が感じたことを分かりやすく書くのって難しいですね。
その点、いっきさんはすごいと思います。

投稿: | 2009年10月21日 (水) 06時23分

いっきさん、雲さん、こんにちは。

最近の雲さんのアルバム評は、読みやすいし、勢いがあるね〜。
ホントは、こういうのを新譜の段階で読みたいよね(笑)。
まぁ、聴き込んで書いているのだから、そうはいかないけど。

それと、番組ゲストのミュージシャン効果もあるのでは?
きっとミュージシャンって、いろいろなアルバム聴いていない。
好きなアルバムだけを聴いていると思うんだよね。
解体、分析という意味では、彼らにかなわないよね。
それを自分の技術や感覚に取入れようとしているのだから、
音楽をやる能力として。リアルだよ。

その辺も身近に感じてしまうと、
やる側の気持ちの代弁も多くなってきていると思う(笑)。
作って方が楽しいのは明らかだからね(笑)。
きっと、雲さんの距離間が変わってきたんだよ。

「本人、何を考えてやっているのかな?」
好きなアルバムの、みんなそれが知りたいんだよ(笑)。


インタープレイなんて存在しない!
エバンスとラファロの《マイ・フーリッシュ・ハート》の
リハーサル音源を聴きながら、そんな事を思いました。
二人で、いろんなバリエーションの音合わせをやっています。
んで、小節ごとの疑問をその場で解決して次にいく。
当然、譜面に採る分けではないので打合せ程度ですが、
ミュージシャンのレベルが高いからできることなんですね。

投稿: tommy | 2009年10月21日 (水) 12時06分

tommyさん

コメントどうもありがとうございます。

>最近の雲さんのアルバム評は、読みやすいし、勢いがあるね〜。
いやあ嬉しいです。

もしそうだとしたら、これって、我々が不定期に催している「ジャズ友ミーティング」のお陰だと思います。
条文化はされてないけど、基本的に我々の会話って、「相手の話を素直に受け入れ」、「批難、批判はしない」が暗黙の空気になっているじゃないですか。それが大きい。
好き勝手に考えていることを言えるので、相手の反応みながら、自分の考えを深めたり軌道修正できますからね。

アタマの中で考えているだけでは、モヤモヤして形になりにくい部分も、文字化したり、喋ったりすることによって、随分と整理されることが多いです。

そういった意味では、我々のやり取りって、けっこう私にとっては身になっているのかな、と。

もちろん、tommyさんが続けているエヴァンス=ラファロ研究も考えのベースになっていることは言うまでもありません。

投稿: | 2009年10月21日 (水) 15時33分

こんばんは。

雲さん。

雲さんのレビューを読んで、なるほど!と納得したんですよ。今までお聴きした色々な話が集約された感じで、私はもやもやが晴れたんです。
「快楽ジャズ通信」のゲストの方との話がレビューに生きていて、今更ながら番組の効果って凄いなあと思いました。
日々の色々な体験が雲さんの中に蓄積されていて、今回はレビューになって出てきたんでしょうけれど、もっと色々な形でこれから出力されてくるんだろうと思うと、とても楽しみです。
益子さんのレビューはきっと読んでいないどろうと思っていました(笑)。なのに、雲さんのレビューが呼応しているように思えたので、ここにリンクさせていただきました。

>グラント・スチュアートの新譜を聴いたら、「こんなんジャズじゃねぇ!」と怒りに火がつきまして(笑)、

怒りはパワーになります(笑)。

>いかんいかん、これではまた寺島さんから「バカになれない利口なふりしたバカ」とバカにされてしまいそうだ(涙)。

そんなことはないと思いますよ。分かりやすいと思いますが・・・。

>自分が感じたことを分かりやすく書くのって難しいですね。
>その点、いっきさんはすごいと思います。

私の場合は何にも考えていないような・・・(汗)。
難しい文章が書けないアホなやつだと思います(涙)。

>これって、我々が不定期に催している「ジャズ友ミーティング」のお陰だと思います。

それはあるかもしれませんね。
不思議と自由で開放的な空気が漂っていますよね。
コミュニケーションって大事ですね。

tommyさん。

>最近の雲さんのアルバム評は、読みやすいし、勢いがあるね〜。

本当に私もそう思います。

>それと、番組ゲストのミュージシャン効果もあるのでは?

それ絶対ありますよね。

>きっと、雲さんの距離間が変わってきたんだよ。

私も同じことを感じています。

>エバンスとラファロの《マイ・フーリッシュ・ハート》の
リハーサル音源を聴きながら、そんな事を思いました。

その話も面白いですね。
tommyさんの分析はいつも楽しく聞かせていただいています。

投稿: いっき | 2009年10月21日 (水) 21時18分

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