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ビル・フリゼールを再認識させられた1枚

ジャズ喫茶「いーぐる」のマスター後藤雅洋さん著「ジャズ選曲指南」には色々お世話になりました。この本に掲載されたアルバムを全部蒐集しようとしていたことで、tommyさんや雲さんに知り会えたわけですし、全部蒐集できた時には後藤さんにもお祝いしていただきました。で、そこからジャズ批評誌での後藤さんとの対談記事やブログ・ウォーキングへの掲載へと話が進んでいったわけです。なので、この本には足を向けて寝られません(笑)。

その上、ここに掲載されたアルバムを蒐集してみて、90年代や2000年代の要注意な人達にも出会えたわけです。ありがたや。ありがたや(笑)。そんな要注意人物の一人が今日紹介するビル・フリゼール。それまでフリゼールといえば、ベーシスト・マーク・ジョンソンのグループ・ベース・デザイアーズのメンバーだった人くらいの認識しかなかったのです(汗)。

P159 本に掲載されているフリゼールのアルバムは『ブルース・ドリーム』(1999年rec. NONESUCH)です。メンバーは、ビル・フリゼール(eg,ag,loops)、グレッグ・レイツ(pedal steel,lap steel,national steel guitar,mandolin,他)、ロン・マイルス(tp)、ビリー・ドリュース(as)、デヴィッド・ピルチ(b)、ケニー・ウォルスン(ds)、カーティス・フォルクス(tb)です。

レーベルがノンサッチというのも驚きでした。ノンサッチと言えば、その昔オーディオ評論家の長岡鉄男さんが書いた「外盤A級セレクション」でお世話になった現代音楽のレーベルです。ジャズをやっていたのは予想外でした。パット・メセニーがこのレーベルに移籍したのは皆さんご承知の通りです。クリエイティブはギタリストがレーベルの好み?

さてアルバムの内容ですが、ジャケットが内容をよく現していると思うわけです。アメリカの片田舎のガソリン・スタンドはカントリー系ジャズを意識させますし、写真のモノ・トーンは3管を配した淡いニュアンスのサウンドを意識させます。

今やフリゼールのアイコンとなってしまったこのカントリー系ジャズを決定づけるのは、ペダル・スティールが参加しているからなんですが、フリゼールのギターも同系の音ですし、曲だってカントリー調なのです。後藤さんが本に書いていますが「懐かしいような。もの悲しいような不思議な気分にさせられる音楽。」です。私はカントリーに興味があったわけではないのですが、フリゼールがやると妙に心に入り込んでくるから不思議です。

1曲目《ブルース・ドリーム》からもうフリゼールの世界としか言いようのない強烈な個性を放っています。ロン・マイルスのトランペットがフォーキーな世界にマッチしているところも不思議です。

で、私は2曲目《ロン・カーター》にやられてしまいました。まずはベースが繰り返す単純なリフが気持ちイイの根源。その上にノイジーなトランペットとフリゼールのカッティングが漂えばもう気分は浮遊して夢見心地。かぶさる3管によるアンサンブルはギル・エバンス的な淡いサウンド効果を生んでいると思います。こっちのほうが”ドリーム”な感じなのですが、なんでタイトルは”ロン・カーター”なの?ベースのリフがロンに似ているわけでもないんですよ。

3曲目《プリティー・フラワーワー・メイド・フォー・ブルーミング》は、もろカントリーというか”ウエスタン”な雰囲気。ガンマンが馬に乗って夕陽の荒野を行く感じとでもいいましょうか?「シェーン・カム・バーック!」という私の貧相なイメージ(笑)。4曲目《プリティー・スターズ・ワー・メイド・トゥ・シャイン》も同じく”ウエスタン”。こちらは陽気に長閑な荒野を闊歩して行く感じです。

「いーぐる」では以上の4曲をかけるようです。その後も同様なイメージが続き、全18曲。カントリーなビル・フリゼールを聴いてみようかな?と思うあなたには、まずこのアルバムをおすすめしたいと思います。

アルバム名:『blues dream』
メンバー:
Bill Frisell(el-g, acc-g, loops)
Greg Leisz(pedal steel, lap steel, national steel-g, scheerhorn resonator-g,
mandolin)
Ron Miles(tp)
Billy Drewes(as)
David Piltch(b)
Kenny Wollsen(ds, per)
Curtis Fowlkes(tb)

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コメント

いっきさん、こんにちは。

いや〜「ジャズ選曲指南」は、ほんとにいろんな展開がありましたね。
オイラにとっても、そのまま聴いていたら一生縁のなさそうなアルバムに出会う、良いきっかけを作ってくれた、いい本だと思います。
「このアルバム聴きたい」という感覚ではなく、「4枚揃えないと、話にならない!」という、収集癖を煽る強烈なエネルギーを放っています。そこが、他のジャズ本とは違っていいのですがね。
全国にあと3人くらいはいそうですが・・・(笑)。
ア〜、「ジャズ選曲指南」続編が読みたい(笑)。その前に、オイラは最後の1枚(笑)。

それにしても、「ジャズ選曲指南」っていいアルバムが選ばれているんですよね。最近、このくすぐる要素が少ないのが残念!!
「いーぐる」後藤さんにはもっと「これは聴いておけ!!」アルバムを紹介して欲しいです。

投稿: tommy | 2009年10月29日 (木) 15時38分

tommyさん。こんばんは。

>いや〜「ジャズ選曲指南」は、ほんとにいろんな展開がありましたね。

ですよね。おかげでジャズ聴きが充実しました。

>収集癖を煽る強烈なエネルギーを放っています。そこが、他のジャズ本とは違っていいのですがね。
>全国にあと3人くらいはいそうですが・・・(笑)。

そうなんですよね。
後藤さんによればあんまり売れなかったらしいです。
全国にあと3人ということは、tommyさんと私を含めて5人ってこと(笑)?

>ア〜、「ジャズ選曲指南」続編が読みたい(笑)。

私もそう思います。
確か新人ジャズ喫茶マスターに指南する続編のような本を執筆していたと思うのですが、世の中不景気まっただ中なので、企画は休眠中なのかもしれませんね。

>その前に、オイラは最後の1枚(笑)。

私もユニオンへ行った時には、相変わらず最後の1枚は探しています。で、見つけたらtommyさんに差し上げようと思っているのですが、ありません(涙)。

>「いーぐる」後藤さんにはもっと「これは聴いておけ!!」アルバムを紹介して欲しいです。

休眠中の企画が陽の目をみることを祈るばかりです(笑)。

投稿: いっき | 2009年10月29日 (木) 20時38分

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