日本人ジャズを聴こう!
最近は「日本人ジャズを聴こう!」が増えてきているような?
今日は橋本一子さんです。
橋本さんは長らく私のアンテナにはひっかかっていなかったのですが、
橋本さんと雲さんがお友達であり、「快楽ジャズ通信」にゲスト出演してから、
俄然私の中で存在が大きくなりました。
さて今日紹介するのは、そんな橋本さんの新譜『Arc’d-X』(2009年、najamaja)です。メンバーは、橋本一子(vo,key,g)、石井AQ(DJ,voice)、小田島亨(sax,fl)です。明日の快楽ジャズ通信に橋本さんがゲスト出演するので、その前にこのアルバムを紹介したかったんです。
これまで橋本さんはUb-Xというアコースティック・ピアノ・トリオで活動されたいましたが、本作は一転エレクトリックな打ち込みジャズです。1曲目《All Right》はハウス・テクノ・ミュージック。「東京電気グルーヴ」なんかと類似サウンド。まっ、そこは橋本さん、独特なささやき系ボーカルとミニマルなシンセ音は彼女ならではだと思います。ポップでキャッチーな歌が楽しいですね。
途中に入る石井さんのラップはどこかで聴いたことがあるような?そうだっ、マイルスの『ユア・アンダー・アレスト』の1曲目《ワン・フォーン・コール/ストリート・シーンズ》のスティングがやっている警官ラップではないですか。マイルスが好きな橋本さんのこと、意識しているのかも?と妄想しました(笑)。曲の後半には橋本さんのラップも入ります。なかなか面白いサウンドだと思います。
次の《Latina》は頭がプッシュホンのような音で、これって《ワン・フォーン・コール》つながり?この曲は全編橋本さんのラップです。途中のラテン・パーカッションもね~、リズムが《ワン・フォーン・コール》につながりませんか?絶対マイルスを意識していると思うんですよ(笑)。マイルスに対抗した橋本さん流ラップがこの曲だとしたら面白いんですけどね~。
そして途中のエレピ・ソロはハービー・ハンコックに似ています。なので、ハービーの『ディス・イズ・ダ・ドラム』が浮かんできます。いや~っ、面白いUb-Xの時のアコースティック・ピアノはチックに似ていたりするのですが、エレクトリック・ピアノはハービーというセンスが好きです。チックもハービーもアコ/エレ両刀使いなので、逆の選択もあり得るのにそうでないところが橋本さんのセンスの良さだと思う私です。
タイトル曲《Arc'd-X》は更にリズムが強化され、グルーヴしまくるDJサウンドの上で橋本さんのラップが冴えます。バックにかぶさるミニマルなシンセがこれまたクールでかっこいい!途中に入る狂おしいバリトン・サックス・ソロもヒップでクールですね~っ。この曲は聴いてトランス感が味わえます。
《Baby,Baby》は気だるいミニマル・ファンク曲。前の曲の熱を冷ますような感じで、かつスペイシー。橋本さんのボーカルがセクシー・キュートに迫ってきます(笑)。《Jazzz》のピアノのリフは『Ub-X』に収録された《Parallel》と同じです。この曲は完全なヒップホップ。マイルスの『ドゥー・バップ』と同じサウンドですね。途中に入るベースとその上で舞い踊るフルートはもうクラブ・ジャズの世界。サヒブ・シハブしてます(笑)。
《Bossa Cruise》も橋本さんのセクシー・ボーカルを生かしたミニマル・ファンク。《Love Scope》もヒップホップ。こちらは全編に入っているシンセの使い方から、エレピ・ソロの高域「ピロピロピロリ~ン」まで、かなりハービーの影響を感じます。夏の暑さを感じさせる曲もハービー似のファンクだと思うのですが・・・。ラスト《Aqua》は浮遊感漂うキーボードによる短いエンディング・バラード。
このプロジェクトは、「SphinX..」(多分「スフィンクス」と発音)として1年ほど活動して、休止後10年の時を経て再開したとのこと。いや~っ、これは面白いアルバムです。私が好きなマイルスやハービーのラップ、ヒップホップ、ファンクなサウンドを橋本さんが消化して、そこにテクノやクラブ・ジャズなど若者受けしそうなサウンドをふんだんに盛り込んで作っています。色々な音楽に関わってきた橋本さんならではのエレクトリック・ジャズだと、私は思います。
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