今日の「PCMジャズ喫茶」は面白い話満載でした。
今日の「PCMジャズ喫茶」の放送。
ゲストはSpice Of Lifeレーベルの佐々智樹さんでした。
ちなみに私の番組レポート。
番組では詳しく言っていないことも私の持っているジャズ情報をリンクさせて書いていますので、こころして読むように(笑)。
まっ、私の個人的な見解も散りばめていますので、そこのところjは「よしなに。」
佐々さんは大学卒業後、日本放送に入社してオールナイトニッポンやヤマハ・コッキーポップなどの番組を担当していたんだとか。その後フジサンケイ・グループつながりでポニー・キャニオンへ行たそうですが、そこではジャズはほとんどやらなかったそうです。その後退社して衛星放送「ディレクTV」へ引っぱられ3年間修羅場だったとか。ここに見切りを付けてSpice Of Lifeレーベルを立ち上げることになるんだそうです。
Spice Of Lifeレーベルに至る経緯とレーベル立ち上げの話はとても面白いものでした。話の途中で、岡崎正通さんの奥さんが元アナウンサーで凄い美人で羨ましいなんて話や、資本金300万円で立ち上げたなんて話もありました。300万円で立ち上げた話を聞いた寺島さんは「俺も雇われじゃなくて自分のレーベルを立ち上げようかな。」なんて言っていました(笑)。レーベル最初のミュージシャンがスウェーデンのスウィート・ジャズ・トリオだったという話から、ヨーロッパの人達は日本のジャズ・ファンを高く評価しているなんて話もありましたよ。
番組開始から25分、上記の話で盛り上がりました。で、やっとかけた曲はラーシュ・ヤンソンの新譜『イン・サーチ・オブ・ロスト・タイム』から《ゼア・イズ・ア・バタフライ・イン・マイ・ルーム》。このCDはもちろんSpice Of Lifeレーベルです(笑)。私もラーシュ・ヤンソンは好きです。相変わらずの美メロ曲でした。ヤンソンは面白い人だなんて話しや、アルバム曲選びの時、場合によっては喧嘩もするなんて話もありました。そういう場合の説得は「クリエイターは常に先へ行きたがるが、半歩先じゃないとファンはついてこないよ。」なんだとか。なるほどね。
佐々さんはドラムも叩くとか。学生時代から叩いていて、ジョージ大塚さんにドラムを習ったこともあるそうです。その練習はもの凄く厳しかったそうで、1週間に1回の練習なのだそうですが、課題が難しくてできないと練習生の前でぼろくそにけなされたとか。でも、そういう厳しさがないと人間はやらないとも言っていました。
で、ドラムの話から佐々さんのアイドル・トニー・ウィリアムスの話へ。マイルスの『セブン・ステップス・トゥ・ヘブン』からタイトル曲。佐々さんはこの革新的なドラムにもの凄く驚いたそうです。その凄さを示すものとして、冒頭テーマ部の16分音符「スタタタ、スタタタ、スタタタ、スタタタ、タッタッタッ」は、左手だけでスネア・ドラムを叩いているという話。ただ速いだけでなく正確なリズムと同じ強さで叩くのは凄く難しいことなのだそうです。確かにこれは凄いと思いますね。
トニー・ウィリアムスの2拍3連リズムがねばらないなんて話やシンバル・レガートの切れが鋭いなんて話があり、このほかにも古いドラミングとの違いをとても上手く説明していました。やっぱり楽器をやっている人は説明が上手いですよね。
次はやっぱり新しいドラム。ポール・モチアンです。ビル・エバンスの『エクスプロレーションズ』から《ナーディス》。モチアンのドラミングは尺に嵌っていないので小節が自由に伸び縮みし、ドラムで歌うことを重視してタイム・キーパーの役目から解放されたなんて話になります。ハイハットをあまり踏まないのが重要で、ここからドラムが変わっていくんだとか。ハイハットを定期的に踏まないことにより、スネアとかシンバルとか他が自由になるそうです。う~ん。なかなか深いです。もちろんこの曲でのスコット・ラファロのベースは素晴しいと言っていますよ。
寺島さんは、「たまに聴くと良いけど、もう一度聴こうという気にならないよね~。やっぱり新しいピアノを聴きたいよね~。」なんて言います。寺島さんは「ジャズに飽きることが怖いから新しいジャズを聴く。」ということらしいです。
今日はいつになく話が面白いですね~。
佐々さんのドラムに注目したアルバム紹介は素晴しい!
ここで人妻Aさん登場。トニーつながりでザ・グレイト・ジャズ・トリオのコンピレーション盤『レジェンド・オブ・ジャズ』から《フリーダム・ジャズ・ダンス》。Aさんはこの演奏を聴いてこの曲が気に入ったらしいです。この頃のトニーはバスドラ「ドスドス」全開で刺激的です。私は当時のV.S.O.P.のトニーを聴いて打ちのめされた口です(笑)。私もドラムが好きなのですが、それまで聴いてきたポップスやロックのドラムとの違いに唖然としました。この当時のトニーは良いと思います。イースト・ウィンドの伊藤八十八さんがプロデュースしたビレッジ・バンガードのライブ盤の話もしつつ、寺島さんは「やっぱりこれはいつまでも通用しますね。」なんて言っていましたよ。
《フリーダム・ジャズ・ダンス》つながりで、佐々さんからのお返し。フィル・ウッズの『アライブ・アンド・ウェル・イン・パリ』から同曲。ドラマーのダニエル・ユメールはシェリー・マンに師事したなんて話もありました。寺島さんはその後のフリー系のドラミングが嫌いなようです(笑)。私はその後も好きですけどねっ。このヴァージョンは『マイルス・スマイルズ』のヴァージョンとは編曲が異なってやりやすいので、多くのアマチュア・バンドがこれをコピーしたなんて話もありました。私は久々に聴いたのですが、この演奏はやっぱり良いと思います。
人妻Aさんは、自分がかけたハンクの方が良いそうです。理由は勢いが違うとのこと。そうですかね~。フィル・ウッズも勢いがあると思いますけどね~。寺島さん達も私と同じ意見のようでした。でも寺島さんは「先入観なく聴いた意見は貴重だね~。フィル・ウッズの名盤も形なしですよ。」と楽しそうでした。まっ、これは寺島さんが日頃唱える「名前で聴くな!」をあらわしているわけです。でもっ、私は「人妻Aさんはやっぱりジャズを分かっていない。」と敢えて言わせていただきます(笑)。
ここまで1時間半経過。やっと岩浪さんの選曲です。
ベーシストのジョン・クレイトンの息子ジェラルド・クレイトンの『トゥ・シェイド』から《ブーガブルース》。寺島さんは「王道+αが良い。」といつものご意見。「最近の難しいことをやって持ち上げられるているのはダメだ。」と続けます。ハイハイ分かりました(笑)。岩浪さんがオリジナル曲を選曲したことも不満のようで、「ここはやっぱりスタンダードが聴きたかった。」と愚痴っていました(笑)。私はこの手のピアノに今はあまり興味なしです。
続く岩浪さん選曲。76歳渡辺貞夫の70枚目(凄いっ!)のリーダー・アルバム『イントゥ・トゥモロー』から《バタフライ》。ジャズ批評9月号の「内外新譜」で岩浪さんが紹介しています。ピアノは上記のジェラルド・クレイトンだっだんですね。曲を聴いた後、人妻Aさんは「艶っぽい音がいいけれど、音楽の印象はあまりないんです。」と。寺島さんも「健在だなって聴き方。急に日本だな~。やっぱり渡辺さんだな~。それ以上でも以下でもない。」と。私も寺島さんの感想に同感です。
岩浪さんの選曲は2曲ともアルバム冒頭の曲でした。寺島さんがいつも指摘するのですが、岩浪さんはアルバム1曲目を選ぶことが多いです。で、ある疑惑が・・・、この手の新譜紹介はなぜ1曲目になるのか?ってこと。アルバムを全部聴いていないんじゃないか疑惑です(笑)。全部聴いているのかもしれませんが多分1回くらい?で、いざ番組へアルバムを持ってきて、どこが良いか言ってからかけるとなると、1曲目だけを聴いてくるんじゃないかと思うわけです。あくまで私の推論ですけどね。まっ、岩浪さんはたくさん試聴しなければならないのでしょうから、それもやむなしとは思います。
ラストは佐々さんからスライディング・ハマーズのコンピレーション盤『ボッサ&バラード』から(曲名チェックを忘れました)。スイングジャーナル誌6月号のアルバム評が不評だったという話があります。ここで、寺島さんは強引に(というのは上記評では「強力なアドリブでもあれば面白いかった。」と書いているので)自分の話を持ち出して、「長いソロをとるのは聴いていて自分が嫌になるからさせない。現代は短いソロをよしとする風潮。佐々さんもそうでしょう。」と言います。
で、話はスイングジャーナル誌8月号の自レーベルから出た松尾明ニュー・フロンティア・クインテットの『ザ・スナッパー』評へと。村井康司さんの評に対する不満です。「最初は良いことを書いてくれているのに、最後にソロは長いほうが良いと言っているが、それは自分の意図とは違う。」と寺島さん。そして「俺は短く簡潔にソロをとるようにさせているんだ。」と、村井さんの評は「ジャズのソロは長くなるのも。」という固定概念による発言だと不満たらたらです。この発言に関してはディスクユニオン・ジャズ館のホームページの寺島さんのウェブマガジン「赤道直下」の最新号の冒頭をご覧下さい。
「凄い頭にくるよねっ。」と佐々さんに同意を求めます。佐々さんはソロの長さに対しては「スレイディング・ハマーズは姉の歌や2人のトロンボーンなど色々な要素があるので、ソロひとつひとつは短くしている。」ときちんと答えつつ、「論点がずれている評を読むと寂しい。演奏そのものが悪いと言うのならそれはしかたない。」なんて言います。ここで寺島さんが暴露。佐々さんはスイングジャーナル誌の編集長三森さんに抗議の電話を入れたんだとか(笑)。
かけた曲、私はムーディーな歌と歌心あるトロンボーンを気持ちよく聴きました。夜ウィスキーのグラスを傾けながら聴くのには良い感じです。寺島さんは「いいね~。それでこの2人は人柄が凄く良いんだよね~。凄いホスピタリティだよねっ。」と、寺島さんによると、日本人を低く見ていないのが良いんだとか(笑)。自分を立ててくれないとねっ。だから反抗する山中千尋さんとかには反感があるんでしょう。とは言いつつも、実は寺島さんはそれはそれで結構楽しそうだという話もさる筋から聞いています(笑)。
最初にかけたラーシュ・ヤンソン。今来日しています。今日は吉祥寺「サムタイム」でライブをやっています。ヤンソンのホームページによると満員御礼!そして日本でのラスト・ステージです。今回の日本ライブツアーは佐々さんがすべて仕切っているそうで、寺島さんからは「今回の収支はどうですか?」なんて突っ込まれていましたよ(笑)。
佐々さんのお話はとても面白いものでした。
それにひきかえ寺島、岩浪両氏の話はもう耳タコ状態なんです。失礼(笑)!
*
本番組レポートは、音楽専門・衛星デジタルラジオミュージックバードの
THE JAZZチャンネルで放送している「寺島靖国のPCMジャズ喫茶」を
もとにして書いています。
他にも楽しい番組が盛りだくさん。
放送を聴いてみたい方は ミュージックバード からお申し込みできます。
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コメント
いっきさん、こんばんは。
1964年の「Miles In Tokyo」には、多くのミュージシャンがつめかけたそうですが、その時に日本のジャズ・ミュージシャンが、一番ショックをうけたのは、トニー・ウィリアムスのドラムだったそうです。
今まで、アート・ブレイキーやマックス・ローチを手本に叩いていた日本のドラマーはこの日を境に変わったとのこと。
大きな違いはバラードでも、8ビートでスティックで叩くドラマーが増えたことだそうです。それまでは、みんなバラードはブラシに持ち替えるものだと思っていたそうで、「バラードを8ビートでスティックで叩いてもうるさくならないトニーのリズムに、みんな驚いた」そうです。
オイラは、現在ハービー研究をしているのですが、聴けば聴くほど避けて通れないのがトニー・ウィリアムスの存在なのです。
ハービー、ショーター、ロン、トニーの中で、一番革新的な音楽感覚があったのはトニーだったのではないか?また、音楽芸術思考が強かったのもトニーだった気がするんですよ。トニーはマイルスの影響が誰よりも強い気がしてならない(笑)。
ジョン・クレイトンは、オイラが尊敬するベーシストです。ツーかプロデューサーです。本人のアルバムで、これはスゴイ!というアルバムはありませんが、西海岸の音楽産業を中心に、ジャズの今を提供し続けている大物プロデューサー。特に女性ヴォーカル(ダイアナ・クラール、ナンシー・ウィルソン、ナタリー・コールなど)ものは彼の右に出る人はいません。レコーディングでは本人は弾かず、マクブライドに弾かせたり(レイブラウンとのスーパー・ベースがありましたね)、若い人をフィーチャーしています。ヒット・チャートを賑やかすジャズ・プロデューサー。その息子がピアニストだったとは・・・興味津々。
投稿: tommy | 2009年9月13日 (日) 03時04分
tommyさん。こんばんは。
1964年のマイルス・クインテットのトニー・ウィリアムスがそんなショックを与えていたんですか。
レコードはいソノてルヲさんの例のM.C.で始まるんですよね(笑)。トニーは《イフ・アイ・ワー・ア・ベル》のテーマ部ではブラシを使っているけれど、マイルスのソロになるとスティックに持ち替えてシンバル・レガート「シンシン」になるところがカッコいいんですよね。もう後は、これぞトニーっていうシャープなドラミング。そして後半またブラシに持ち替えてエンディング。
続くバラード《マイ・ファニー・バレンタイン》もトニーはブラシからスティックに持ち替えていますね。確かにバラードでのスティック使いは珍しかったんでしょうけど、マイルスもバラードなのにオープンでハイノートをバリバリ吹いている場面があるので、この対比でトニーのスティックが生きてくるという感じもします。
で、ロンの堅実な4ビートがあってこそ、トニーの奔放でシャープなドラムが生きるんだと思っています。
でも、マイルスのトランペットがやっぱり最高に素晴しい!
>ジョン・クレイトンは、オイラが尊敬するベーシストです。
>特に女性ヴォーカル(ダイアナ・クラール、ナンシー・ウィルソン、ナタリー・コールなど)ものは彼の右に出る人はいません。
そうなんですか。知りませんでした。
番組中で、ジェラルド・クレイトンは歌伴も上手いと言っていましたので、やっぱり親父の血をひいているのかもしれませんね。
私的にはジェラルド・クレイトンってあんまり興味が湧くピアニストではありませんでしたよ。
投稿: いっき | 2009年9月14日 (月) 02時15分