ダラー・ブランドと中村尚子さんのピアノに和む。
本日の「高野 雲の快楽ジャズ通信」は
「ダラー・ブランド(アブドゥーラ・イブラヒム)特集」。
ゲストはピアニストの中村尚子さんでした。
番組詳細は「快楽ジャズ通信」をご覧下さい。
最初に雲さんからダラー・ブランドの説明があります。
南アフリカ出身です。
”ダラー”があだ名だとは知りませんでした。
デューク・エリントンに見出されたそうです。
エリントンとの出会いも面白いエピソードでした。
雲さんはダラー・ブランドの伝記映画を見て彼を知ったとか。
ここで中村さ登場。
雲さんは中村さんのピアノを聴いて詩人だと思ったとか。
そして、ダラー・ブランドも同様に詩人だと感じる、
お2人とも土の匂いを感じると言います。
中村さんはそういう比較をされたこたことがないので驚いたと言いつつも、
ダラー・ブランドからの影響はあるんじゃないかと言っておりました。
中村さんは番組の後でかける『ウォーター・フロム・アンシェント・ウェル』を
聴いて、音を拾ったら分かりやすかったなんて話もあります。
ハーモニーが自然でゆったりした感じも好きとのことです。
まずは雲さんが一番好きな曲。
『グッド・ニュース・フロム・アフリカ』から《ナジカナズ・ベル》。
ピアノとベースのデュオで、ハーモニーがきれいな曲です。
ある意味ゴズペルを感じさせます。
雲さんは朝目覚めに聴いていたらしいです。
最初のボイス部分はアフリカの大地を感じさせるものがあります。
曲が始まると穏やかで荘厳な感じになります。
ピアノとベースに2人の歌(ボイス)の掛け合いがのっかり、
静かな感じから徐々に盛り上がっていきます。
アフリカの大地に日が昇るような感じに聴こえますね~。
そういう意味では目覚めに聴くのにはよさそうです。
(以降緑字は曲を聴いての私の感想などです。)
中村さんはこの曲を聴いて寂しい孤独な感じになったとか。
雲さんもこの感想には少々驚きぎみ(笑)。
私も雲さんの感想に近いので、この感想にはちょい驚きです。
で、中村さんはこの曲を好きになったとのこと。
次は中村さんの好きな曲。
『アフリカン・ピアノ』から《チンチャナ》。
アルバム・ラストの曲。6/8拍子です。
この曲は私も好きなんですよ。
なぜかというと私の好きなエルビン・ジョーンズの『ミッドナイト・ウォーク』に
ブランドが参加してこの曲をやっているからです。
で、私の中ではブランドというとこの曲のイメージが強いのです。
聴いているうちに力が湧き上がってくる演奏です。
このアルバム全体が力強いんでえすけどね。
1人で40分ぐらいやっているデンマークのカフェ・モンマルトルでのソロ・ライブ。
中村さんは、「このアルバムの演奏は最後の方が良くなってくる。」
「時間とともに楽器がよく鳴って、ピアノと一体化してくる。」と言います。
出だしの曲は違和感があり、ピアノとの間に距離があるとも言います。
雲さんはこの曲が好きだそうです。
そのうちに凄い鳴りが良くなっていくとのこと。
中村さんもこのだんだん良くなる感じは体験したことがあるそうです。
雲さんからは「ゴスペル感覚を感じる。」「後半に向けての盛り上がり感は
レイ・ブライアントの『アローン・アット・モントルー』のソロに通じる。」
なんて話もあります。
中村さんは「人間のシンプルな力強さ。」とも言います。
中村さんは子供の頃同じフレーズをピアノでずーっと繰り返して
遊んでいたことがあったらしいです。
変なんだけどそれがやめられないんだとか。
雲さんも「それよく分かりますよ。」と、同じような体験を持っているそうです。
ここで全くの余談。
『アフリカン・ピアノ』のライナーノーツは岩浪洋三さんが書いているのですが、
アフリカ音楽とジャズの関係を民族音楽やヨーロッパ音楽の影響の話をからめ
とても上手く説明していることを再発見(笑)!
次はオリジナル曲ではない、他人の曲を演奏したものです。
『南アフリカのある村の分析』から《ラウンド・ミッドナイト》。
ピアノのタッチの強いエリントンなどのハーレム系のピアノ。
こちらももデンマークのカフェモンマルトルでのライブ。
このアルバムは後藤雅洋さん著「ジャズ・オブ・パラダイス」で推薦されていて、
私はず~っと探していますがまだ見つかりません。
確かにオーソドックスなピアノ・スタイルで弾いていますね~。
なるほど、雲さんが言うとおりの演奏です。
個性が際立つ感じではありませんが、ちゃんと説得力はあります。
これっ、ベースのうなりもなかなか良いです。
後藤さんが推薦する理由がよくわかりました。
ほしいな~っ、このアルバム。
聴いたあと2人は「かなり変だ。」と言っています。
ベースもついていくのがやっとだなんて話も。
いよいよ中村さんの新譜。
『新緑の中に雨が降っている』からタイトル曲。
雲さんは凄く気に入っているとか。
雲さんのイメージは山の中の寺で雨宿りをしている感じ。
中村さんによると八幡平での体験をもとにしているそうです。
雲さんのイメージはあながちはずれていないとのことでした。
雲さんは「古澤良治郎さんのドラムが良い感じで、
演奏全体からは日本の土の香が凄く感じられる。」と言います。
で、土の匂いの話から中村さんは「夕立降り始めの土の匂いが好き。」と
言います。
雲さんも「そうですよねっ。」と強くうなづいていましたが、
これには私も全く異論はありません。
あの匂いってイイですよねっ。
頭の中にイメージが広がるようなサウンドです。
ドラムは確かに不規則に落ちる雨音のよう。
素朴なんだけどハーモニーは洗練されているように感じました。
耽美的なんですけが、張り詰めた空気でなく優しさを感じました。
日本人として落着く響き?がイイ感じでした。
雲さんから中村さんへ質問。「間は天然か計算か?」
中村さんによると、リズムはずっと保ち続けているが、それで満たされて
いたとんだとか。
演奏しての成り行きということでしょうか?
最後は『ウォーター・フロム・アンシェント・ウェル』からタイトル曲。
中村さんからは、抜いていっても引いていっても音がある話があります。
ピアノは弾いていなくても、ピアノのブランドがちゃんと存在するという話。
「弾くのも大事だけど、弾かないことも大事だと思う。」とも言います。
長閑で郷愁を感じるゴズペル風、ファーク風な曲ですね。
どことなく《明日に架ける橋》に似たメロディー・ラインの曲です。
バリトン・サックス、トロンボーン、テナー・サックス、フルートのソロも
雰囲気によくマッチしています。
ピアノはあまり聴こえてきませんね~。確かに。
土の匂いは感じますが洗練された音の雰囲気もあります。
お2人とも田舎が岩手県なので、感じが通じ合ったのかな?
なんてことを話して終了。
<アフター・アワーズ編>
雲さんがダラー・ブランドに触発されて作った曲。
曲というよりモチーフなんだそうです。
曲名は《神無月》。
最初の方のフレーズはどことなく《エンジェル・アイズ》に似た感じでした。
雲さんのフレッドレス・ベースの上に中村さんが鍵盤ハーモニカで
イメージを膨らませながら音を弾いていきました。
雲さんのちょっと怪しげなベースライン(ミック・カーンを意識したとか)もイイです。
中盤あたりから中村さんがキモカワなハーモニーを弾いて盛り上がってきます。
で、途中でいきなりエレピが”ガツーン”ときたのでビックリしました。
楽しい演奏になっていました。
今日の放送を聴いて、
私のダラー・ブランド=『アフリカ・ピアノ』なイメージは払拭されました。
そして、中村さんの土の匂いを感じさせつつもアーシー過ぎないスマートな音使いは
ダラー・ブランドにも共通するのかなっ?と感じました。
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