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マシュー・シップって知っていますか?

今日は、これまでに何度も登場している後藤雅洋さん著「ジャズ選曲指南」から1枚紹介しましょう。

「ジャズ選曲指南」はバップ定番ものからヨーロッパもの最近のものまで、ジャズ喫茶「いーぐる」で日頃かかっているアルバムを紹介した楽しい本なのです。ジャズ喫茶という空間でかかる定番からマニアックなアルバムまでを知ることができると同時に、ジャズ喫茶選曲の秘密に迫れるというのがミソ。でもこの本、今一売れ行きがかんばしくないとか(涙)。皆さん。買いましょう!

P106 で、今日の1枚はマシュー・シップ『ヌー・バップ』(2002年、ThirstyEar)です。メンバーは、マシュー・シップ(p)、ウィリアム・パーカー(b)、ダニエル・カーター(ss,fl)、ギレルモ・E・ブラウン(ds)、FLAM(syn,programming)です。つまり強面フリー・テナー奏者デビッド・S・ウェア・カルテットのリスム隊(ピアノ・トリオ)による演奏です。

でも、これが単なるフリー・ピアノ・トリオではないから面白いんですよ。このアルバムのサウンドを一言で言ってしまうと、フリー系ピアノ・トリオ・ミーツ・ヒップホップ/ジャム・バンドです。バックにFLAMがプログラミングしたスクラッチ/ヒップホップ・エフェクト音が流れ、その上でフリー/スピリチュアルなピアノ・トリオが哀愁感漂うマイナー・メロディーを演奏するというハイブリッドなもの。そして、難解でないところが良いんですよ。

シップのピアノは強靭そのものです。ちょっと誇張気味に言えば、デューク・エリントンの『マネー・ジャングル』に通じる凄みを感じさせるピアノを弾いています。1曲だけあるピアノ・ソロ曲を聴いていると、力こぶしを作りたくなりますよ(笑)。パーカーのアコースティック・ベースも力強いですね。タイトル曲《ヌー・バップ》のベースのうなりなんて気持ち良いことこのうえなし、頭がクラクラします(笑)。

ブラウンのドラムが粗い音で8ビートを刻むのですが、これがジャム・バンド風サウンドを印象付けます。ファンク系緩めの8ビートは腰にきますね。数曲に参加するカーターのソプラノとフルートがちょっと怪しげでファンキーさを上手く演出しているのも好ましいものです。全体を通して感じられるのは、クラブのちょっとダルで蒸し暑い空気感。この雰囲気、私は好きです。

強面フリー・ピアノ・トリオがヒップホップとファンクを取り入れることによって、上手い具合に聴きやすくなっていると思います。若者には受けるサウンドになっていると思いますよ。かといって決して安易さは感じられないのがこの人達。デビッド・S・ウェアをサポートする人達って、やっぱ只者じゃないです。カッコいい!

こういうアルバムを選曲する「いーぐる」の後藤さんもカッコいい!

アルバム名:『nu bop』
メンバー:
Matthew Shipp(p)
William Parker(b)
Daniel Carter(sax, fl)
Guillermo E.Brown(ds)
FLAM(syn ,prog)

明日は甲府「桜座」にやってくる大西順子ピアノ・トリオを見にいきま~す!

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