大西順子トリオのライブ・レポート(その2)
大西順子トリオのライブ・レポートの続きです。
第1部は4曲で約1時間のステージでした。さて、休憩中に席を移動することにしました。というのも、座った位置からは大西さんの手が全然見えなかったからです。ガンガン速弾きしている様子をどうしても見たい!ということで移動です。1階には手が見えるような席は空いていないのはわかっていましたから2階席へ。
2階席といってもまともな席があるわけではなく、細長いベランダ状のところに木の箱を置いて、その上に座って見ます。もともとは音響の調整卓があったりするスタッフ席みたいなところです。写真のとおりステージから離れてしまいますが、手の動きは充分見えるのでよしとしました。
第2部も黙って座って演奏開始です。演奏後のMCでわかったのですが、新曲でまだタイトル未定、仮称《6番》です。大西さんの作る曲はちょっと抽象的で内省的な響きがあるので、美メロファンにはとっつき難いところがありますよね。何度か聴かないと印象に残らない曲でもあります。
曲名だけのMCを挟んで、《ジャスト・ワン・オブ・ドーズ・シング》。アップテンポでピアノを弾きまくりでした。私は「この曲をここまで弾くのか?」と思いましたが、これはこれで大西さんのひとつの持ち味でもあるわけで、魅せる演奏として納得できるものでした。
お次は《煙が目にしみる》。アルバムと同じでピアノ・ソロでした。アルバムには3曲のピアノ・ソロが入っていますので、今はピアノ・ソロをレパートリーに入れているということなのでしょう。大西さんのピアノ・ソロはオーソドックスなアプローチで、私はこの味わいも好きです。アルバムと同じように始まって、途中からアップテンポにして、ストライド奏法も織り交ぜながら、別の曲も取り入れ(曲名不明)つつ演奏。ジャズ・ピアノの歴史と伝統につながる演奏ですねっ。
大西さんあたりの世代になると、もうジャズは学校で勉強する世代。ご存知のとおり大西さんはバークリー音楽学校を主席で卒業しています。それゆえ、オーソドックスな演奏をするとどうしても客観的クールな感じになりがちだと思うのですが、年齢のせいなのか?今の演奏には味も出てきていると私は思います。
次はエリック・ドルフィーの《サムシング・スイート・サムシング・テンダー》。アルバムでも演奏しています。こういうちょっと暗い感じの曲をじっくり弾いていくところに、今の大西さんの魅力を感じる私です。ニューヨーク・アンダーグランドを追っかけていて、こういう内省的な響きに慣れている私だからかもしれませんが・・・。
アルバムに入っていたドルフィーの《ハット・アンド・ベアード》と《G.W.》は結局やりませんでした。アルバム冒頭の《ハット・アンド・ベアード》なんかは、意外と話題作りでやったのかもしれませんね(笑)。
第2部ラストは《ユーロジア》。大西さんはずいぶん前に作ったと言っていました。これも抽象的で難解な曲。こういう曲を聴くと私の頭の中にはニューヨーク・アンダーグラウンドがイメージされます。大西さんはデビュー後、ゲイリー・トーマスやグレッグ・オズビーなんかと演奏していましたから、M-BASE(ブルックリン派)に通じる部分は持っているはずで、そこから今のニューヨーク・アンダーグラウンドにつながるのではないかと思います。
ライブの印象っていいかげんですね~。自分で言うのもなんですが(笑)。
今日9/3ミュージックバードの「MOONKSTYLE」でこの曲がかかりました。
曲名は《ユーラシア》ではなく《ユーロジア》(アルバム『クルージン』に収録)。
エディ・コスタばりの低音奏法の曲でした。
山中千尋さんもこの手の演奏をしていますよね。
曲はクラシック的な部分もあるトリスターノ系水平ラインウネウネメロディー。
本人もクラシック、バッハ的なものを意識したと言っているとのこと。
ニューヨーク・アンダーグラウンドへと、どうにかつながっていきますよね?
この曲って結構大西さんお気に入りのようですね。
ラストに持ってきたくらいですから。
でもライブ時の私の印象はいまひとつ・・・、どうしてなんだろう?
ラスト曲は途中でメンバー紹介をして、演奏をしばらく続けてから終了。第1部と同じエンディングですね。このやり方はアンコールでも繰り返していました。このパターンしかやらないのねっ(笑)。第2部は5曲で1時間強でした。
アンコール曲は未知でした。大西さんを追いかけている方はご存知かも?
ステージ終了後にサイン会があるのかと思ったら、CDに自分の名前を書いた付箋を貼り付けてスタッフに渡し、楽屋でサインしてもらって返却でした(笑)。
今回のライブ、色々な意味で個性的な大西さんの魅力満載!
そしてしっかり構成されたライブでした。
私はとても楽しかったです。
大西さんはこれからもジャズ界できちんとポジションを保っていくことでしょう。
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コメント
いっきさん、こんばんは。
へぇ〜、「桜座」って面白い作りのライブ・スペースですね。昔の劇場や芝居小屋のようで面白いです。
大西順子さんはストイックな感じがしますね。まぁ、芸術家ツーか。サービス精神は、それ程ないようですね(笑)。
きっと日本のライブ環境が嫌いなんだと思いますよ。今回はアルバムを出した事だし、レコード会社のためのプロモーションで仕方がないといった感じなのかな?
きっとこれは、ライブを生活収入の糧にしないということでしょう。
きっと来年は、またお休みしますね。今回のアルバムのセールスによりますが・・・。
そうそう、ここのところの人気のジャズ・ウーマンってサービス精神が旺盛なんですよ。ジャズの芸能の部分も理解しているツーか。メディアに載る事も良く理解していて、収入源としてのライブの動員数を大切にしている。それはそれで、無理なくできる性格の女性たち。
以前の大西さんはそういうことに疲れたんですね。「音楽家は音楽だけをやっていればいい」という境地だと思います。んで、今回の復帰もそれは守りたいのでしょう。そうじゃないとやらない。
きっと、使い分けるなんて器用な事はできないんですね。今時の「音楽と仕事」を意識せずに無理なくできる女性ミュージシャンたちへの挑戦にようにも思えます。
池ちゃん先生も、「最近の女性ピアニストはサービス精神がありすぎる、ファンにフレンドリーなのはいいけれど、ある程度の距離を保たないと、飽きられてしまう」と、云っていました。「でも、人気があるから、サイドメンとして呼ばれた立場だと何ともいえない」とも云っていましたが・・・(笑)。
いっきさんの今回のライブ・レポートは、そんなことを考えさせられました。
まぁ、ファンはミュージシャンにフレンドリーであることを望む分けですが。
投稿: tommy | 2009年8月29日 (土) 05時09分
この人のピアノスタイルがめちゃくちゃ好みかどうか、、は、おいておいて。。
女性からみて、、やっぱ、この毅然とした感じ、好きですよ。
にこにこサービス精神旺盛な人も嫌いじゃないけど、大西さまとか、、やっぱ、かっこいいと思ってしまいます。(単純か。。)
つうか、、男性のように、甘いサービスを求めてないし。(爆)
でも、クリポタが同じ態度とったら、悲しくて泣いちゃうかも。
投稿: すずっく | 2009年8月29日 (土) 10時53分
tommyさん。
>昔の劇場や芝居小屋のようで面白いです。
まさにそのとおりで基本は芝居小屋です。町興しの一環で、昔甲府にあったものを再興したんです。ガラス工場だったところを改造したんですよ。舞踊家の田中泯さんが立ち上げと運営にかかわっています。
>大西順子さんはストイックな感じがしますね。まぁ、芸術家ツーか。サービス精神は、それ程ないようですね(笑)。
トークとかにはファンサービスはないと思いますが、演奏そのものからは、自分の魅力をお見せしますというファンへの思いは伝わってきました。笑顔を振りまくとかはないですけどね(笑)。基本シャイな人なんだろうと思います。
芸術家というより、音楽家として伝えるべきものに拘りがあるのだと思います。なので
>「音楽家は音楽だけをやっていればいい」という境地だと思います。
は、おっしゃるとおりだと思います。いいんじゃないですか?こういう方がいても。私は芸術指向なので(笑)、大西さんみたいなタイプは好きです。
>今時の「音楽と仕事」を意識せずに無理なくできる女性ミュージシャンたちへの挑戦にようにも思えます。
さすがはtommyさん。上手いことを言いますね(笑)。
すずっくさま。
>女性からみて、、やっぱ、この毅然とした感じ、好きですよ。
やっぱり女性からは支持されるんでしょうね。
>大西さまとか、、やっぱ、かっこいいと思ってしまいます。(単純か。。)
そのとおりのかっこいい人でした。
>つうか、、男性のように、甘いサービスを求めてないし。(爆)
私は甘いサービスは求めていませんよ。
甘いサービスなら別なところで求めます(笑)。
>でも、クリポタが同じ態度とったら、悲しくて泣いちゃうかも。
それはよ~くわかります。
投稿: いっき | 2009年8月29日 (土) 14時03分