最初に買ったジャズのレコード
ちょっと前に、体験に基づいた「マイルスの3枚でジャズ入門」を書きました。
その時に最初に買ったジャズのレコードの話をちょろっとしましたが、
今日はそのレコードを紹介します。
日野皓正の『ダブル・レインボー』(1981年rec. CBSソニー)です。なんでこれを買ったかというと、当時オーディオをやっていたのですが、ロック・ポップスには良い録音のレコードがあまりなかったからです。オーディオ雑誌を見ると紹介されているのはほとんどがクラシックで次がジャズ。ならば、クラシックかジャズを聴こうということになったのです。
最初に買ったクラシックはストラビンスキーのバレエ音楽『ペトルーシュカ』(これも入門としてはかなり異色)で、ジャズは『ダブル・レインボー』だったというわけです。両者に共通する点はというと、どちらもCBSソニーのデジタル録音。当時はデジタル録音がたくさんリリースされ始めた頃です。デジタル録音だと雑音に埋もれずに小さい音が録音できるので、クラシック・コンサートの録音時に、観客のデジタル時計のアラーム音が録音されて困るというのが話題になりました。懐かしい!
『ダブル・レインボー』の話に戻ります。メンバーは、日野皓正(cor)、スティーブ・グロスマン(ss)、菊地雅章(key)、ハービー・ハンコック(key)、ケニー・カークランド(key)、マーク・グレイ(key)、ルー・ボルピー(g)、ブッチ・キャンベル(g)、アンソニー・ジャクソン(b)、ハービー・メイソン(ds)、ドン・アライアス(per)、アイアート・モレイラ(per)、マノロ・バドレーナ(per)、バリー・フィナティー(g)、デビッド・スピノザ(g)、スティーブ・ターレ(shell horn)、レジー・ワークマン(b)、エディ・ゴメス(b)、ジョージ・ムラツ(b)、レニー・ホワイト(ds)、ビリー・ハート(ds)、ギル・エバンス(arr)、他です。とんでもない豪華メンバーに驚きます。制作費はいったいいくらかかったのだろう(笑)。
日野のCBS移籍第1作ということで力が入っています。菊地とのコラボレーションということで、菊地の『ススト』の続編みたいなアルバムになっています。最初聴いてビックリしましたね。だって、日野のフュージョンだと思って買ったんですから。これは日野の異色作です。面白いのはこの後普通の日野フュージョンに戻ってしまうことです。
A面1曲目の菊地作《メリーゴーランド》を聴いた時は、どこに注目して聴けば良いのかよく分かりませんでした。だって、3人のパーカッションを入れたアフリカン反復ファンクリズムにのって、4人のキーボード奏者が断片的なフレーズを散りばめ、その上で日野やグロスマンが抽象的なソロをとるんですから。ロック・ポップスのメロディーを追う聴き方が全く通用しなかたわけです。リズムも繰り返しだから1コーラスとかの切れ目がわからない。捉えどころのない音楽だと思いましたよ。曲長も約15分。参りました。
でも高いお金を払って買ったんですから「もう聴かない。」というわけにはいきません。やむなく何度も聴くことになるのですが、不思議ですね。だんだん気持ち良くなってくるんですから。最初に反復リズムが心地良くなってきます。そしてキーボード群が何をやっているか見えてきます。はっきり言うと日野のコルネットよりバック・サウンドのほうに興味がいっちゃったんです。菊地のサウンドにやられたわけです。
このサウンドに接していたおかげで、ウェザー・リポートの『スイート・ナイター』もマイルスの『パンゲア』も意外とすんなり受け入れられたんだと思います。今考えるととんでもないジャズ入門です。でも、これが私にとって良かったんだと思います。ジャズってこういう聴く人を拒むようなところがあることを最初から認識したわけですから。そしてこちらからジャズに近寄らないといけないことを意識したんです。これが重要なのです!
他の曲もざっと紹介しておきましょう。菊地、日野共作の《チェリー・ヒル・エンジェル》はバラードで、日野と菊地の濃密は語らいが聴けます。日野作《イエロー・ジャケット》はアルバム中唯一のフュージョン曲。レイジーな雰囲気が心地良く、日野のストレートな歌心が聴けます。日野作《ミワヤマ》はギル・エバンス・アレンジの和テイストのバラード。ハープが良い味を出しています。さすがはギルです。
ラストの日野、菊地共作《アボリジナル》が強烈です。曲名からわかるとおり、アフリカンでパーカッシブな曲。手拍子から始まり、躍動的なリスムが展開されます。アンソニーのエレベの他に、ワークマン、ゴメス、ムラツの3人がアコースティック・ベースを掻きむしります。これもメイソンのドラムにパーカッション3人。途中掛け声が入ったりして、スティーブ・ターレはほら貝を吹いているようです。その上で日野が気持ち良さそうにソロをとります。
アンソニー・ジャクソン(el-b)、ハービー・メイソン(ds)コンビがジャズの初体験だったとは笑えます。この2人でありながら、やっていることは全然フュージョンじゃないから凄い。この人達やっぱり只者じゃないです。
ライナーノーツは誰が書いているんだろう?
ハハハッ!やっぱり、岩浪洋三さんでした。
この頃のCBSソニーのフュージョン系アルバムにたくさん書いています。
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コメント
いっきさん、こんばんは。
このアルバムは売れましたねぇ。
(でも製作費を回収出来るほどは売れなかった)
売れたのですが、ちょっとムズカシかった〜(笑)。
菊地さんの影響が強いアルバムですよね。
この辺は微妙に「フュージョン」といっしょにしては
いけないのかも知れません。
'80年代「和フュージョン」は、整理する必要がありますね(笑)。
投稿: tommy | 2009年8月19日 (水) 19時29分
tommyさん。こんばんは。
>このアルバムは売れましたねぇ。
>売れたのですが、ちょっとムズカシかった〜(笑)。
そうですか。
私は当時何が売れたかよくわからなかったです。
おっしゃるとおりこれちょっと難しいですよね。
初めて聴くジャズとしては疑問な1枚。
もろ菊地色が出ています。
フュージョンと言っても硬軟色々ありますからね。
人によってジャズ/フュージョンの境界はさまざまです。
>'80年代「和フュージョン」は、整理する必要がありますね(笑)。
やる人はいるんでしょうかね~?
投稿: いっき | 2009年8月19日 (水) 22時27分