昨日の「高野 雲の快楽ジャズ通信」は「ウイントン・マルサリス特集」。
ゲストは音楽ジャーナリストの小川隆夫さんでした。
番組の詳細は「快楽ジャズ通信」をご覧下さい。
小川さんと言えば、かつてニューヨークに留学されたこと(1981~3年)があり、
アパートの隣にはウイントン/ブランフォードのマルサリス兄弟が住んでいたことで
有名です。著書「となりのウイントン」もあります。
今回はウイントンに関する貴重なエピソードを聞かせてくれましたよ。
1曲目、「これ聴かなきゃダメ。」はないけれど、
小川さんが当時ウイントンを聴いた時の凄さを彷彿とさせるというバラード曲。
『ウイントン・マルサリスの肖像』から《フー・キャン・ターン・アイ・トゥ》。
落着いて余裕を感じさせる演奏です。
弱冠19歳とはとても思えません。
(以降緑字は、私が曲を聴いての感想他です。)
小川さんは「単なるテクニックではない、バラードを聴かせる表現力がある。
当時これほど吹ける人はいないと感動した。」と言っています。
次はアップ・テンポの曲。
『シンク・オブ・ワン』から《ノーズ・モウ・キング》。
小川さんはウィントンから「ドアから覗いている感じのジャケット写真を
撮りたいんだけど、どこか良いところを知らないか?」と言われたそうで、
アールデコ調の日本レストランの入口のドアを教えたんだとか。
そのドアがジャケット写真のものだそうです。
やっぱり最初はウイントンのテクニックに耳がいきます。
完璧なトランペット・コントロール。この人凄すぎます。
サウンドがクールなんですよね~。
ブランフォードもやっぱり凄いと思いますよ。
ウイントンが余りにも凄いのでブランフォードがちょっと損しているかも?
今日的なサウンドです。
これ今年発売されたといってもわからないんじゃないでしょうか?
小川さんは当時のウイントンをヴィレッジ・ヴァンガードで目の当たりにしている
そうで、凄かったようです。
この曲では凄いウイントンのソロのあとに、ブランフォードがちょっと緩めに
出てくるのですが、小川さんによると2人の性格の違いがここに出ているそうです。
ブランフォードは「ノーテンキ」らしいです。
この2人はデコボコ・コンビで相性が良かったそうです。
ここでウイントンについての話。
ウイントンはポップスも聴き、若い時にはフュージョンもやっていたそうです。
家ではマイルス命の時もあったとか。
「僕らの勝手なイメージで、アコースティック・ジャズについてばかりインタビュー
するから、ウイントンのまじめでジャズにストイックなイメージが世間に
広がったのではないか。」と小川さんは言います。そして、
「初めにイメージありきでジャーナリストは質問しがちで、それは問題あり。」
とも言っています。
その辺りにウイントンは不満があるようだとも言っていました。
小川さん著「となりのウイントン」に書いてある話の中から、
ブランフォードがマイルスの『デコイ』のレコーディングに参加した時の面白い
エピソードも話してくれました。そこにウイントンらしさがあると言っていました。
次はジャズ以外の2曲。
まずはウィリー・ネルソンとの共演『スターダスト』から
《マイ・バケッツ・ゴット・ア・ホール・イン・イット》。
続いてクラシック、『くまん蜂の飛行』から《パガニーニ作曲 常動曲 作品11》。
クラシックってやっぱり超絶技巧が必要なんですよね。
こんなのが吹けるジャズ・トランペッターってウイントンくらいなのでは?
循環呼吸を使った絶え間ない演奏です。凄いっ!
演奏を聴いたあと雲さんと小川さんが、
「後にいくほどクレッシェンドで大きい音になっていくのが凄い。
これに比べればジャズでバリバリ吹くのは楽勝。」なんて言っています。
この曲は元々バイオリン曲なのに、トランペットでやっているそうです。
ここでまたウイントンの話。
ウイントンはタバコを吸わないしお酒も飲まないらしいです。
ただの若者で、堅物のイメージはないということでした。
小川さんはそういうイメージになる前に知り合ったそうです。
次は雲さんの選曲。
『スタンダード・タイムVol.1』から《キャラバン》のさわりをかけて、
「《枯葉》のリズム・チェンジは難しい。10の力を出さず7の力で吹く。
余裕綽々で吹く。そこがクールでかっこいい。」と雲さんが話します。
それを受けて、小川さんが当時ウイントンが考えていたこととして、
「ジャズのそれまでのイメージを変えたい。ジャズミュージシャンのイメージが悪い。
ジャズをソフィストケートさせたい。ソフィストケートされたジャズマンがいても良い。
自分の世代のハード・バップを強く意識いていた。」と話します。
そこがハード・バップ好きからは醒めていると感じられるのだろうとも言います。
続けて、そういうウイントンを好きか嫌いかは個人の感性の問題と言います。
以上に関しては是非こちら 「快楽ジャズ通信」 をお読み下さい。
以上の話は私も同意します。
でかけた曲は《スーン・オール・ウィル・ノウ》。
さらっと吹いていますね。これがなかなか良いのです。
余談ですが、これって寺島靖国さんが一時期しきりにオーディオ・チェックに
使った曲(笑)。寺島さん著「JAZZはこの1曲から聴け!」の中で、
このアルバム&この曲を取り上げていて、そこには村井康司さんの
「ジャズの明日へ」の話題が出てくるという面白さです(笑)!
雲さんが「軽やかに高い音を吹き、日常感覚でサッと吹いている。」と言います。
ラストは『スター・ダスト』から《アイム・コンフェッシン》。
ウイントンはサッチモのことを「ポップス」(これも通称)と言うらしいですね。
小川さんは「最初はポップスそっくりに吹いて途中からウイントンらしくなる。」
と言います。
「曲がかかっている間のエピソードを聞くとウイントンはいいやつと思った。」
と雲さんが言うと、小川さんは「ウイントンはちょっとおちゃめなあんちゃん。」
と言います。
これ気楽に聴けて良いと思いました。
ウィントン入門はこのアルバムが良いかもです。
今回はウイントンの魅力満載の番組でした。
そして、言うべきはきちっと言い、嫉妬されそうなことも嫌味なくサラッと話す
小川さん、トークの肌触りはウイントンのサウンドに近いのかも?と思いました。
小川さんはクールでカッコイイ人でした。
昨日の記事に対して高野 雲さんから長文コメントをいただきました。
いつものことなのですが、これが実に面白いのでそのまま掲載します。
以下雲さんからのコメント(青字)です。
ついでに私のコメントを緑字で入れておきます。
いわれたてみれば、たしかに似てますね。というか、Gacktのほうが意識しているんでしょう。
歌い方のほか、ビジュアル的にも魅せていこうという発想も(ただし、シークレット・オブ・ザ・ビーハイヴあたりからのシルヴィアンは化粧もやめナチュラルになりましたが)。
ただ、似ているとはいえ、格調の高さとか芸術性とかはまた別問題でして(笑)、Gacktは徹頭徹尾大衆的ですね。デビシルというよりは、B'z(笑)。歌詞の傾向もB'zライクなところもあるし。
なるほどそう思います。
今は仮面ライダーディケイドの主題歌を歌ってまして、私もカラオケ用に練習中ですが(笑)、劇場版Zガンダムのエンディングとか、DVD版の新・北斗の拳など、特撮&アニメ好きな私としては、Gacktという人は、ヒーローものの歌を歌う人という位置づけです(笑)。
本人もガンダムやケンシロウ好きみたいだし。
ただ、「新・北斗の拳」の《Lu:na》は、けっこうカッコいいです。音程とりにくく、低く徘徊するようなメロディと節回しがカッコいい。カラオケでは歌いにくいけど(笑)。
このウネウネ感は、うん、言われてみればデヴィシルかもね。でも、デヴィシルの世界は、もっとナイーヴでリリカル。Gacktの場合は勇壮ですね。
私はGacktのヒーローものの歌はあまり知らないのですが、「新・北斗の拳」の《Lu:na》は聴いてみたくなりました。
確かに「デヴィシルの世界は、もっとナイーヴでリリカル。Gacktの場合は勇壮」だと思います。
『ブリリアント・トゥリーズ』では、私、《レッド・ギター》とタイトル曲が好きです。
特に、タイトル曲のオープニングは泣ける(涙)。インダストリアルなパーカッションの「打」が強調された長いエンディングにも泣ける。
《レッド・ギター》のベースのハーモニクスや坂本龍一のピアノやさりげなくお洒落な曲など、雲さんが好きだというのはわかります(笑)。私も好きです。
そしてタイトル曲のナイーヴでリリカルな世界は染みますね~。
これだけが直接ジャズへの橋渡しになったわけではないのですが、この手の音楽を多感な時期にたくさん聞いていたお陰で、ジャズへはササッと移行できた気がします。
こういう感性って重要なんじゃないかと思います。
むしろ、この時期(80年代)のシンセの使い方は、ジャズ・フュージョン側のミュージシャンたちのほうがベタでセンス悪ぃ~!と思う(笑)。
珍しいおもちゃを手に入れたかのごとく、無邪気にもプリセット音をそのまま使っているんじゃないか?な、デコイとアレストのマイルスとか。メセニーバックのライル・メイズとか。
AOR系もその気がありましたネ。たとえば、TOTOのアイソレーションなんかは、リズムやメロディはカッコいいけど、音色は、当時出たばかりのヤマハのDX-7のデモンストレーションかなんかですか?だったし(笑)。
この時期、DX-7のプリセット音は多用されています。
確かにセンスないと思いますし、お気楽ぶりには少々呆れます。
例のピッチ・ヴェンダーのベタな使い方ってのもありますしね(笑)。
チックの『エレクトリック・バンド』なんて笑っちゃいます。
シンセを肩から下げて弾くのも流行しましたよね(笑)。
でも私はそれまでのシンセにない爽やかな音の肌触りは好きでした。
その点、JAPANの『錻力の太鼓』やシルヴィアンの『遥かなる大地へ』のプロフェット5(あえてシンセとはいわない)の使い方はとてもセンシティヴかつリリカルで、音の作りこみ方も、安易な妥協は一切感じられませんでした。
本当、油絵を塗り重ねるかのように、丁寧に作りこまれた感じが好きです。
デジタルシンセが登場してからも、あえてプロフェットなどのアナログに固執した、デヴィシルや、リチャード・バルビエリの職人的気質もいいですね。
その拘り、わかります。
ポリフォニック・シンセサイザーというとプロフェット5ですよね。Y.M.O.で坂本龍一が弾いているのを見て、凄く興味を持ちました。細野晴臣が弾くアープ・オデッセイのベースもカッコ良かったなあ~。当時、ギターを弾いていた従兄からKORGとROLANDのシンセサイザー・カタログをもらって、マジでシンセを買いたかったです。メカ好きだから、ツマミやスイッチがたくさんあるところやVCO、VCF、VCAとかが楽しかったです(笑)。
こういうのにハマっていたから、安っぽいプリセット音で、テクニックのサーカスを繰り広げる同時期の日本のフュージョンがめちゃくちゃバカな音楽に聴こえて仕方がなかった(笑)。
実際、中学・高校時代は、そういうの聴いている人畜無害な健康優等生クンたちのことは、そうとうバカにしていた記憶があります(笑)。
スクエアー(T-スクエアー)とかカシオペアですか(笑)?
私はマイルスとかウェザーを聴いていたので、和フュージョンはB.G.M.としみなしていました。でも、F1テーマ曲が入った『トゥルース』が出た頃のスクエアーのライブを見て、その爆音ぶりと則武のドラミングには感動しました(笑)。
必要以上にイギリス萌え~だった自分が、今では恥ずかしいですけど(笑)。
イギリス萌え、いいじゃないですか。
この手の話題になると話が尽きなくなりますね。
今日は勝手に盛り上がってしまって、ごめんなさ~い(笑)。
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この記事のコメントに続きがありますので是非ご覧下さい。
デヴィッド・シルビアンの《レッド・ギター》のYouYube動画は必見!