う~ん、困った、いやっ、ちょっと待てよ!
上原ひろみを応援している私としては、新譜が出ると知ってから首を長~くして発売を待っていました。皆さんご存知のとおり、ネットにはかなり前からスタンリー・クラーク、上原ひろみ、レニー・ホワイトのトリオで録音したという情報が流れていたからです。
その新譜はザ・スタンリー・クラーク・トリオ・ウィズ・ひろみ&レニー・ホワイトの『ジャズ・イン・ザ・ガーデン』(2008年rec. HEADS UP)です。メンバーは改めて書きませんが、上原はアコースティック・ピアノに専念し、スタンリーもアコースティック・ベース(1曲のみエレクトリック・ベース)を弾いています。日本先行発売となっていますが、輸入盤に日本の解説を付けただけです。
早速聴いてみました。う~ん、これは困ったぞ。全編丁々発止のやりとりを期待していたのに、ちょっと地味なアルバムに仕上がっているではありませんか?「やっぱり、上原とスタンリー&レニーでは音楽性が違うから、共演しても何も生まれないんだな~。」なんて思いました。他のブログでの評判を読んでみると、「期待し過ぎてはいけない、これはスタンリーのリーダー作。」というようなことが書いてあります。「そうだよね~。」なんて思いつつ、もう一度聴いてみると、もう少し見えてくるものがありました。
いやっ、ちょっと待てよ!ひろみちゃん(急にちゃん付け、笑)なかなかやるんじゃないの?アップ・テンポの曲よりスロー・テンポの曲《さくらさくら》《シシリアン・ブルー》(上原作)、スタンリーとのデュオ《サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム》《グローバル・トゥウィーク》にそれを感じました。
じっくり聴けば、上原ならではの感性で慎重に音を選んでいるのがわかります。しなやかで美しいのですが、内省的な響きがあり繊細。これってNYアンダーグラウンドの人達と通じる現代性だと思います。そしてリズム、スタンリー&レニーは少々軽くて落着かないのですが、それを上原がしっかり落着かせているのです。間の使い方が上手いのです。いや~、なかなかスケールが大きいです。これまで上原に抱いていたイメージが変わりました。
一方、アップ・テンポの曲《3・ロング・ノーツ》(スタンリー作)《アイソトープ》《ソーラー》《ブレイン・トレーニング》(上原作)などになると、上原の遊び心が溢れているように感じます。時折カワイイ・フレーズが飛び出してくるのですが、ひろみちゃんは何とも楽しそうなのです(笑)。なのに、スタンリー&レニーは終始ノリがスクエアー、この辺りに発想の違いと歳の差を痛感します。
《アイソトープ》で上原がとんでもないことをやっているので言っておかねば、右手で高音のアルペジオのようなフレーズを弾きつつ、左手で低音のメロディーを弾いています。この人の頭の中は一体どうなっているんじゃー(笑)。これが演奏の流れの中で自然に出てくるのだから凄いです。
スタンリーのアルバムなのに上原のことばかり書いていますね。もちろんスタンリーはリーダーとしてソロが多いし、きっちりキャリアなりのプレーをしていますが、私としては当たり前の粋を越えるものは感じられません。
レニーははっきり言ってあまり面白くはないです。ドラムのスタイルが古いのです。ラストのレニー作《エルズ・バップ》(ボーナス・トラック)なんか、上原がちょっとチック・コリアしていて笑えます。今となっては古いスタイルの演奏ですね。これにレニーの今のポジションが象徴されているように思います。
今回初めて、上原はサイドマンとしてアルバム全体にかかわったというのに、実に堂々と大御所2人と渡り合っていますね。スタンリーとのデュオを聴いているとどっちが先輩なのかわからないような場面もあります。このアルバムを聴いて上原の魅力を再発見できた感じがします。
オーディオ的には音がドンシャリ気味なのがちょっと気になるところです。
ところでひろみちゃんて若いと思っていたのに、ライナーノーツによると1979年生まれ。ということは今年30歳ですよ。童顔なので20代前半だと思っていました。
ひろみちゃん呼ばわりしたこと、お許し下さい(笑)。
*
< じゃこのめ さんからコメントをいただきました。情報ありがとうございます。 >
ボーナス・トラックの《エルズ・バップ》は20年以上前にレニー・ホワイトの『Griffith Park Collection』でチックが弾いています。その他の共演はフレディー・ハバード、ジョーヘン、スタンリー、ということで、敢えてこの曲を彼女にやらせたんだと思います。
今回のジャケットの元写真、HMVのホームページに出ていました。
http://www.hmv.co.jp/news/article/904070077/
『グリフィス・パーク・コレクション』は私も持っていました。最近は聴いていないのですっかり忘れていましたよ。なるほどそういうことかと思いました。聴き比べてみると面白いですよ。
ジャケットの元写真、当初の『ジャズ・イン・ザ・ガーデン』のイメージはこれなのでしょうね。スタンリーが《さくらさくら》を凄く気に入ったので、ジャケットが桜の花との合成写真になったようですね。(SJ誌より)
アルバム名:『Jazz In The Garden』
メンバー:
Stanley Clarke(b)
上原ひろみ(p)
Lenny White(ds)
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コメント
いっきさん、こんばんは。
ん〜、観光写真のようなジャケットの合成写真に無理がありますね〜(笑)。日本の企画盤でしょうか?きっと、そうだよね。
まずは、上原ひろみパワーで売れる事を願いましょう!
投稿: tommy | 2009年4月27日 (月) 03時25分
tommyさん。こんばんは。
確かにジャケットは?でも日本企画盤ではないですよ。
スタンリー・クラークから上原ひろみに声がかかったようです。
スタンリーが収録されている《さくらさくら》を気に入ったのでこのジャケットになったと、SJ誌に書いてありましたよ。
上原はテラーク・レーベル・ジャズ部門のドル箱ですから、日本が手を出せるような状況にはないと思います。
売れると思いますが、上原ファンはこのCDでやっていることを理解するのかな~?
投稿: いっき | 2009年4月27日 (月) 19時54分
いっきさん、こんばんは。
ボーナス・トラックの《エルズ・バップ》は20年以上前にレニー・ホワイトの『Griffith Park Collection』でチックが弾いています。その他の共演はフレディー・ハバード、ジョーヘン、スタンリー、ということで、敢えてこの曲を彼女にやらせたんだと思います。
トミーさん、こんばんは。
今回のジャケットの元写真、HMVのホームページに出ていました。
http://www.hmv.co.jp/news/article/904070077/
投稿: じゃこのめ | 2009年4月28日 (火) 00時12分
じゃこのめさん。こんばんは。
今『グリフィス・パーク・コレクション』を引っぱり出してきて聴きました。このアルバムのことはすっかり忘れていました。
レニー・ホワイトとスタンリー・クラークは今回も当時と同じことをやっていますね。やっぱり古い(笑)。今更これをやられてもね~と思いますが、だからボーナス・トラックなんでしょうね(涙)。
でも上原ひろみってこのレベルの演奏を軽くこなしているんだから凄いですね。若干テンポを落としているところもスケール感につながっていると思います。
元写真をのせるHMVはエライ!でも解説は甘い!
投稿: いっき | 2009年4月28日 (火) 02時11分
じゃこのめさん、情報サンキューです。
元写真がスキ!!(笑)。
上原ひろみがチョ〜小さく見える原因判明!!(笑)。
投稿: tommy | 2009年4月28日 (火) 04時34分