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これ持っていました。

この前のジャズ喫茶「いーぐる」での「2008年下半期新譜特集」終了後。打上げに参加させていただいた時のことです。

喫茶の営業形態に戻って最初にかかったのは、ケニー・ドーハム『ショート・ストーリー』でした。このアルバムについては1年くらい前に拙ブログでも紹介しています。タイトル曲におけるドーハムの気迫のこもったトランペットとテテ・モントリューの凄いソロは聴いておくべきものだと思います。

次にかかったのは?冒頭セロニアス・モンクの曲をカッコ良く演奏していたので、良いな~と思ってジャケットを見るとチコ・フリーマンがサックスとともに写っていました。聴き進むとフリーのような曲もあったりして、「へ~ェ、チコ・フリーマンもなかなかやるじゃない。」と思いジャケットを目に焼き付けておきました。その時はタイトルまでは確認しませんでした。

その次はブラッド・メルドー『アート・オブ・ザ・トリオ・4』でした。こんな感じで時代や編成が異なるアルバムを並べて、飽きさせずに聴かせるのが「いーぐる」選曲です。

P116 さて、家に帰ってから「あのチコのアルバムってもしや?」と思いレコード棚を調べてみると、アレッ!私も持っているじゃあありませんか。

『トラディション・イン・トランジション(邦題:輪廻学)』(1982年、ELEKTRA musician)です。メンバーは、チコ・フリーマン(ts,fl,b-cl)、ウォレス・ルーニー(tp)、クライド・クライナー(p)、セシル・マクビー(b)、ジャック・ディジョネット(ds,p)、ビリー・ハート(ds)です。これも80年代のカッコイイ1枚です。

こういう事ってあるんですよね~。ジャズ喫茶で聴いてあらためてその良さがわかるってこと。ジャズ喫茶という空間だからこその成せる技っていうんでしょうか。

A面1曲目はモンクの《ジャッキーング》でした。ここでモンクばりのカッコイイ・ピアノを弾いているのはなんとディジョネットです。ディジョネットはピアノも上手いということはよく知られていますよね。ただしピアノを弾くのはこの1曲のみです。チコとルーニーのフレージングがいかにも新鮮に響きます。新主流派的なものを更に新しくした感じとでも言いましょうか。

油井正一さんの「ジャズ・ベスト・レコード・コレクション」でもこのアルバムを推薦しているのですが、「最近(1980年初頭)は伝統を見直そうとする姿勢の作品が増えてきて、冒頭のモンクの曲がそれを象徴している。他のチコのオリジナル曲もモンクに触発されたもので、タイトル『過渡期の中の伝統(日本語訳)』にふさわしい。」と言っています。

あれから四半世紀。未だに同じようなことをやっているミュージシャンもたくさんいますよね。そしてこの手のやつを、新しい今のジャズだと言う人達もいるのですから笑えます。

この手のことをやる筆頭が当時のウィントン・マルサリスだったこと、未だにこの手のジャズこそを良しとする風潮が続いていることを考えると、ウィントンがジャズを伝統の中に葬ってしまったというのはあながち間違っていないようにも感じる今日この頃です。あっ、戯言ですから軽く聞き流して下さいね(笑)。

2曲目《フリー・アソシエーション》はピアノレス・カルテット。マクビーの強靭なベースとディジョネットのパルスが作り出す速い4ビートにのって、チコとルーニーが熱い掛け合いを行うクールな曲です。ディジョネットの力強く切れ味抜群のドラム・ソロも披露されます。

3曲目《ミス・ストーリー》は、ちょっとミステリアスで悲しく美しいスローのテーマ部の後にカリプソ調の軽快なサビが付くという面白い曲です。スローバラードにおけるチコのテナーが切ない感じをたたえているのが良いです。この感じはチコのアルバム『スピリット・センシティヴ』にもつながります。

A面ラスト《トーキン’・トラッシュ》は一番モンクの作風に近い曲です。チコのバス・クラリネットとルーニーのミュートが怪しく迫ります。おどろおどろしい曲なんですけど、ドロドロせずにクールなのが、当時の新感覚を感じさせます。

てな訳でこのアルバム、今聴いてもまったく違和感はありません。

アルバム名:『Tradition In Transition』
メンバー:
Chico Freeman(ts, fl, b-cl)
Wallace Roney(tp)
Clyde Criner(p)
Cecil McBee(b)
Jack DeJohnette(ds, p)
Billy Hart(ds)

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コメント

いっきさん、こんにちは。
オイラもそれ持っています。何といってもセシル・マクビー・フリークです。「スピリット・センシティヴ」が一番好きなんですがね。
そうそう、50年以上も毎日毎晩同じようなジャズが日本全国のジャズのお店で演奏されている事に、最近ちょっと疑問を感じはじめているオイラです(笑)。ジャズ大国日本?何かクリエイチブじゃない感じがするんですよね(笑)。

投稿: tommy | 2009年3月 5日 (木) 15時19分

tommyさん。こんばんは。
セシル・マクビー良いですよね。『スピリット・センシティブ』は「ジャズ選曲指南」で知ったのですが私も好きです。「ジャズ選曲指南」にはいろいろなことを教えられました。
お客さんが大衆芸能にはお金を払っても、クリエイチブなものにお金を払おうとしないからじゃないでしょうか?今は皆ミュージシャン(音楽家)です。アーティスト(芸術家)は少ないんですよ。食べていけないですからね。毎日毎晩クリエイ恥部(笑)。

投稿: いっき | 2009年3月 5日 (木) 19時40分

アナログ盤「スピリット・センシティヴ」は今回ラファロの壁に飾らせていただきました。
何人かのアーティストと何人かのミュージシャンがバランス良くグループを組んでいるといいのですがね。結局は仕事でしかないのかな?(笑)。
まぁ、やりたいことがそれ程あるとは思えない。
もっとお客さんが喜ぶ事をやるツーのも、それはそれでクリエイチブなんだけどな。

投稿: tommy | 2009年3月 6日 (金) 00時54分

tommyさん。こんばんは。
『スピリット~』は飾っても良い渋いジャケットですよね。ブラク地にピンク文字がなかなかお洒落です。
>もっとお客さんが喜ぶ事をやるツーのも、それはそれでクリエイチブなんだけどな。
なるほどそれも言えますね。了解です(笑)。

投稿: いっき | 2009年3月 6日 (金) 20時27分

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