アキコ・グレースさんのライブ・レポートです。
昨日のブログに書いたとおり、JAZZ-IN-ALONE でアキコ・グレースさんのピアノ・トリオの演奏を見てきました。
最初に私のアキコ・グレースさんに関するお話から。アルバム『マンハッタン・ストーリー』を買って聴いたあとは、『フロム・オスロー』を買いそびれて、それっきりご無沙汰になっておりました(笑)。
それがなぜ最近興味を持ったかというと、高野雲さんのラジオ番組「快楽ジャズ通信」にグレースさんがゲスト出演したことと、雲さんに誘っていただいた『ピアノリウム』発売記念パーティーにて、グレースさんとお会いしたからです。このパーティーの翌日がミュージックバード「快楽ジャズ通信」のゲスト出演時の放送日でした。
上記については拙ブログの記事以下を参照下さい。
パーティー:
http://ikki-ikki.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-3103.html
「快楽ジャズ通信」ゲスト出演:
http://ikki-ikki.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-ef5d.html
http://ikki-ikki.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-49ef.html
「快楽ジャズ通信」で聴いた『ピアノリウム』は気に入ったので、CDを買って聴いてからライブに行くことにしました。
前置きが長くてすみません。
なお、デジカメを持っていくのを忘れたので画像なしです。ご容赦下さい。
昨日のライブのメンバーは、アキコ・グレースさん(p)、納浩一さん(b)、藤井学さん(ds)です。実は納さんのベースを生で聴いてみたいというのもありました。
さてライブが始まる少し前にお店につき、ライブチケットにはワン・ドリンク付だったので、お決まりの生ビールを注文(昨夜は風邪が強くて寒かったのに、笑)。カウンターに案内されたので、ステージと離れた反対側で見ることになりました。しばらく待つとライブが始まりました。グレースさんは黒のベルベット?のジャケットと黒のパンツというクールなスタイル。納さんって小柄で華奢な方だったんですね。
1曲目は確か《金の耳飾》?いつものごとくお酒が入っていると記憶がいいかげんになってしまうので間違っていたらゴメンナサイ!最初は私もちょっとボーッと聴いていたのですが、次のグレースさんオリジナル、その次の曲と聴くうちにだんだん演奏の内容が耳に入ってきました。3曲やった後グレースさんのMCが入りました。トークは少なめ簡潔です。
さて、グレースさんの演奏なのですが、アドリブが盛り上がってくると湧き出てくるフレーズを、そのテクニックで一気呵成に弾ききるところに聴き入って(見入って)しまいました。鍵盤を下から上へと一気に駆け上がるのなんかは気持ち良いです。こう書くと単にテクニックだけと思うかもしれませんが、演奏の中でちゃんとグレースさんの表現に納まっていると私は思いました。ただCDだけ聴くとその辺りは見えてこないかも?
これを聴いて私はコルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」を連想してしまいました。音数がかなり多くて音を敷き詰める感じがしたのです。あとで、グレースさんにもこのことを言ったのですが、反応は今一でした。素人の的外れな感想でした(苦笑)。
低音の方まで右手で弾くので、椅子の上をスライドして弾いたりもします。あと演奏中はほとんど目を閉じて弾いていて、音の世界に浸っている感じでした。ただしベース、ドラムとタイミングをはかる時はもちろん目を開けてますよ。
《ドキシー》はかなり凝った編曲になっていて面白かったです。これは『グレースフル・ヴィジョン』にも収録されていますね。CDでは編曲の部分だけで終わりますが、ライブではテーマ部がちゃんと現れたあとにもアドリブがあって、より楽しめるようになっていました。
一部のラストは『グレースフル・ヴィジョン』にも収録されている《アプローチ・トゥ・シャイン》。グレースさんが光(シャイン)に少しずつ近づいていく感じを聴いて下さいと言って演奏が始まりました。しっとりした感じの曲なのですが、グレースさんが弾くと芯が一本通った強い感じになり、単に甘くならないところが魅力でもあります。
納さんはベース音をピックアップで拾いアンプで音を出していました。古いベースを使っていたので、もっとアコースティックな音が聴きたかったというのが本音です。ベースのテクニックは凄くて、ソロの早いフレーズなど全く淀みなく流麗に弾いていました。中指を主に使っての奏法でした。
藤井さん(グレースさんは’マナピー’と言っていました。笑)はブラシやスティックやマレットなどを使いわけて、ときに繊細にときにダイナミックに演奏を盛り上げていました。ドラムj・ソロはキレがあってなかなかでした。
今回はグレースさんが主役で、ベース、ドラムのお2人はグレースさんが作るサウンドのサポートに徹していました。
休憩になったので、持って行った『ピアノリウム』にサインしてもらいました。いつもの如くミーハーな私です(笑)。シルバーのマジックでサインしていただきました。ついでに発売記念パーティーの時にお会いしたことを話すと、「ブロガーの方ですよね。」と覚えていてくれました。感激です!マネージャーさんとも一緒にお話しました。
グレースさんはミュージックバードの「cross curture」(11ch-1)チャンネルの番組「Crossover Night」(土23:00~24:00)のセミ・レギュラーで、ジャズについて紹介する時はほとんど出演しているそうです。これからは私も聴くことにしました。
高野雲さんの「快楽ジャズ通信」も4月から同チャンネルで(木)23:00~24:00に放送されます。
そうそう私が「ジャズ批評」の今月号に出ていることも宣伝してきてしまいました。お酒を飲んでいるとずうずうしくもこういうことをやってしまう私って、つくづく節操がないやつだと思います(笑)。
さて、2部が始まったので、ステージ前ドラム側の空いている席に移動して見ることにしました。グレースさんの弾いている姿がよく見えます。
結構ラフな姿勢で弾いていたんですね。演奏中は鍵盤の上に被さり気味(エバンスほどではない)に弾いたり、少しのけぞり気味に弾いたり、キースのように椅子から腰を少し浮かしたり、前に書いたように椅子の上をスライドしたりと、更に、左手の和音より右手で低い音のメロディーを弾くときは腕をクロスして弾いたりと、かなりダイナミックなのです。そしてそこから紡ぎだされる音の数々は説得力を持っていたと思います。
途中で《スパルタカス・ラブ・テーマ》を演奏してくれました。ビル・エバンスのアルバム『ホワッツ・ニュー』に入っている曲で私の好きな曲です。「快楽ジャズ通信」の「エバンス特集」でその曲にまつわるエピソードを聞いてさらに好きになった曲です。この曲はグレースさんに合っているとすぐに思ったのですが、そのとおりの演奏でした。こういう甘い曲を甘くなり過ぎずに情感を込めて演奏するのが良いと思うのですよ。
ラストは『グレースフル・ビジョン』に入っている《エヴァネッセンス・オブ・サクラ》。桜はまだ咲いていませんが、桜の花のはかなさを表現した曲だと話してから演奏が始まりました。これもしっとりはかない良い曲です。
そしてアンコールは、『グレースフル・ビジョン』にボーナス・トラックとして収録されている《デランシー・ストリート・ブルース》。ダイナミックにパッショネートに演奏して終了。1部、2部あわせて2時間強の演奏。グレースさんの魅力満載でとても楽しめました。
終了後はまたグレースさんとお話をしました。ついでに今日やった曲が『グレースフル・ビジョン』に多く収録されていることがわかったので、CDを買うことにしました。こちらはCDにサインをしていただきました。このアルバムは雲さんから推薦されていたのにやっと買いましたよ(笑)。
今日このCDを何回か聴いたのですが、今時のジャズ・ピアノ・トリオの系譜だと思います。グレースさんのオリジナル以外では、《ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン》や《ア・ナイチンゲール・サング・イン・ハーバード・スクエアー》の落着いた深みのある表現が凄くいいなあ~と思いました。後者ではラリー・グレナディアのベースも最高なのです。良いアルバムだと思います。
ライブとアルバムを聴いて、「快楽ジャズ通信」の放送でグレースさんが挙げた好きなピアニスト:レニー・トリスターノ、ビル・エバンス、ミケランジェリの影が感じられるし、その他に言っていたことが納得できることになりました。
これからはソロ・ピアノのツアーが始まるそうで、4月25日(土)には浜離宮でダンサー(近頃人気の人、名前忘れました)との初共演があるそうです。
最後に、酔っ払いのオヤジ・ファン(私)がいろいろ失礼なことをしゃべってしまいましたこと、アキコ・グレースさんどうかお許し下さい。
| 固定リンク
「ライブ」カテゴリの記事
- ヴィジェイ・アイヤ・トリオが来日!(2014.05.28)
- スガダイロートリオのライブはとても楽しかった。(2013.11.23)
- スガダイロートリオ+志人ライブはカッコ良かった!(2013.11.21)
- KOFU JAZZ STREETへ行ってきました。(2013.03.24)
- 今週末は「甲府ジャズストリート」へGO!(2013.03.20)
コメント
いっきさん、こんにちは。
やっぱりライブはいいですよね!ミュージシャンがやりたかった事が聴けるのがライブだと思います。アルバムはいろいろな都合があって(笑)、全部が全部思いどおりに作れる分けではないですからね。ピアノ・インストゥルメンタル・ミュージックの受け皿がクラシック以外ジャズしかセールス的に分類できないのが苦しいところです。んで、その分類で出ると、エバンスやキースやハンコックなどと比較されるから困ってしまう(笑)。
そんなことに捕らわれずに、今、生で聴ける音楽を楽しむのもいいのではないでしょうか?応援が一番大事だよね。
投稿: tommy | 2009年3月15日 (日) 18時39分
いっきさん
見に行けなかった私のために(?)詳細レポートありがとうございます(笑)。
tommyさん
>応援が一番大事だよね。
私もそう思います。
投稿: 雲 | 2009年3月15日 (日) 19時41分
tommyさん。雲さん。こんばんは。
ライブはいいですね。やっぱり見ないとわからないことがありますね。まあライブだと贔屓目に見てしまうところがあるのも事実ですが・・・。
巨匠との比較については永遠の課題ですね。どのジャンルにでもあることだと思います。
今旬な人達もまず聴いてあげることが大切だと思います。そして何をやっているのかある程度理解してから応援したいと思っています。
レポートが少しでも雲さんのお役にたったのなら幸いです(笑)。
投稿: いっき | 2009年3月15日 (日) 20時55分