クール・ビューティー!アキコ・グレースさんとの深い音楽話。(1)
高野 雲の快楽ジャス通信の17回目は「マイルスが愛したピアニストたち」です。
ゲストはピアニストのアキコ・グレースさんです。
放送の内容は雲さんのブログ:快楽ジャズ通信をご覧下さい。
かかったCDも紹介されています。
グレースさんが『ビッチェズ・ブリュー』が好きだとのことで、
今回のテーマになったそうです。
番組出演のきっかけはTFMのロビーでばったりお会いして
話が盛り上がったからだとか。
グレースさんはレニー・トリスターノも好きだそうです。
でもトリスターノ特集は1年後くらいだと雲さんは言ってます(笑)。
マイルスは多くのピアニストと共演し、その音楽の変化の影には
ピアニストのスタイルの違いがあります。
グレースさんは、マイルスのバンド・メンバーの選び方のセンスが良く、
有名でない人でも起用し、そのメンバーが育っていく凄さがあると言っています。
『ビッチェズ・ブリュー』に触発されて、アルバム『フロム・オスロー』の中の
《マイルス・ダンス》を作ったとも言っています。
更に、マイルスは自由でふり切っているところがあり、
常に変化していたい姿勢を貫き、本当に音楽を愛していて、
新しいもの新しい風景を、自分が歩いてきた道とちがうもの、風景を求めて
歩いてきた感じがすると言っています。
なかなか詞的な表現ですよね~。
『1969マイルス』から《ラウンド・アバウト・ミッドナイト》。
チックのエグイ・エレピを聴いて下さい。
長いので途中からチックのエレピをフィーチュアしてフェードイン。
実際にかかったのは、
マイルスのトランペットのカデンツァ部から入り、ショーターのソロをカットし、
つないでチックのソロ、マイルスが入ってきたところでフェード・アウトでした。
いきなりこの曲は過激ですよね。
チックのソロ部はフリーぽい演奏でもあり、このパワーと熱気は凄い。
(以下、緑字は演奏を聴いての私の感想です。)
演奏が終わり、雲さんはエキサイティングな演奏で、
割れるエレピがギター的でカッコイイと言います。
グレースさんはめちゃめちゃ歪んで大音量なんだな~って感じだと言い、
続けて、ピアノとエレピはアクションの違いがあって、
エレピでないと出せないフレーズがあると言っています。
アクションの違いは鍵盤の重さの違いと、倍音が鳴るか鳴らないかの違いとか。
それはアコースティック・ピアノにも同じことが言えて、
調律師の腕によって倍音がどんな音がなるかの違いがあるとのことです。
演奏はエキサイティングでカッコイイ。
次はハービー・ハンコックのアコースティック・ピアノ。
雲さんのハンコックのイメージは独特な和音の響き、ハンコック臭い響きなので、
ハンコックらしくないものを選曲。
グレースさんは「裏から行く。らしくないハンコック。」と念押ししてます。
アルバム『マイルス・スマイルズ』では、ハンコックがあまり伴奏つをけていません。
ゆっくりした曲では和音を弾いているが、アップテンポの曲では弾いていません。
ソロも右手だけで左手で和音を弾いていません。
ここでエピソードです。
ハンコックはマイルスから「バターコードを弾くな。」と言われたとか。
その意味するところは、バターはおいしい・甘い・リッチな・芳醇な、ノートは音。
つまり「美味しい和音を弾くな。」
専門的になるが、3度とか7度とかコード成分・キャラクターがわかる音を弾くな、
つまり弾きすぎるなってことらしいです。
ここで雲さん。グレースさんを前に語ったことに動揺したのか?
何か物を落としています(笑)。
和音がトレード・マークのハンコックが和音を弾かないピアノもカッコイイという演奏。
上記アルバムから《オービッツ》。
私はこの時期のマイルス・クインテットの演奏がかなり好きです。
ハンコックのソロは、ウネウネのホリゾンタルなラインでトリスターノ的にも
聴こえますよね。
演奏が終わり、グレースさんはシングル・トーンの構築力は凄いと言います。
雲さんは最初聴いた時トリスターノを感じたと言っていました。やっぱりね。
グレースさんは「あ~、トリスターノ的なハンコックみたいな。
そういうところで選曲して下さったんですか?深いなあ~。」と言います。
トリスターノ好きなグレースさんへの、雲さんの粋な計らいでした。
グレースさん「言えますよね。この世界観というか。」
雲さんは「あらためて聴くとフレーズはちょこっとハンコックな感じもした。」
グレースさんは「でもカッコイイですよね~。」
留学したボストンで初めて購入したのは、『マイ・ファニー・バレンタイン』だったとか。
あのハンコックの独特のハーモニー感はありますと言っています。
雲さんが「御三家ハンコック、チック、キースの中では誰が好きですか?」と質問。
グレースさんは「そうですね。やっぱりエバンスかな。」と答えます。
「アレ?そうですか。はずしましたね。」と雲さん苦笑です。
実はこのずれた答えにはわけがあります。それはアフター・アワーズ編で判明。
ローカルFMで聴いた人には誤解が生じたことでしょう。
雲さんがどこが好きかとたずねると、
グレースさんは「世界観がある。」と言ったあと、
「皆いいんですが、私の場合は、アルバムによってとか、時代によってとか、
演奏単位で好きなので、この人とやっているのが好き、このテイクが好き、
アルバム単位が好きとなり、この人が好きというのは難しいんです。」と。
そうした聴き方をしていて、アルバムを何枚か聴いて、平均化したら
エバンスになるとか。
なかなか論理的な決め方ですよね~(笑)。
次はグレースさんのあすすめアルバム。
ビル・エバンスがマイルスに推薦したクラシックのピアニストのアルバムです。
それはミケランジェリでした。
グレースさんが日本の大学の卒業論文で引用したマイルスの自伝から。
エバンスはラフマニノフやラベルのクラシックの音楽の知識をジャズに取り入れた
と言っていて、そのエバンスがマイルスにミケランジェリを推薦。
マイルスが聴いてその音楽に惚れたと言っているとのことで、
ミケランジェリはマイルスが愛したピアニスト。
シューマンの『ウィーンの謝肉祭の道化芝居』より《ロマンス》。
音数少な目の響きや間を大切にした曲です。
甘さ控えめのリリシズム。
深みのある演奏になってます。
演奏が終わり、雲さんは「非常にスタティックな演奏。独りでしんみり聴く曲。
マイルスもエバンスが入ってから、『カインド・オブ・ブルー』に顕著なように、
《ブルー・イン・グリーン》とかスタティックな路線になった。」と言います。
グレースさんも同意しつつ、
雲さんとマイルス・グループでのエバンスのポジションの話になり、
そこからコルトレーンとマイルスがピアニストに対する考え方の違いの話へ。
マイルスはマッコイを認めていず、
自伝では、ただ鍵盤を上から下へ行ったり来たりにひっぱたいてるだけ
みたいなニュアンスで書かれているとか。
この辺りがピアニストに対する考え方の違いだという話。
更にバンドリーダーはバンド全体のサウンドをどういう風にひっぱていくかが重要
という話になり、
雲さんは会社社長がかかげるスローガンに近いものがあるなんて喩え話も。
リーダーの持っているビジョンでもあると。
以上の部分はちょっと端折ってます。
雲さんはミケランジェリのドビュシーばかり聴いていたらしく
シューマンも聴いてみようかな~と言っています。
ポリーニのシューマンは好きでよく聴いているらしいです。
ポリーニはグレースさんのお母さんが好きらしく、小さい頃によくかかっていたとか。
ただ、クラシックの教育者だったことから、お手本にしにくいものは違う棚に隠して、
ポリーニとかはよくかけていたんだろうと。
だからグレン・グールドとかはもう少し大きくなってからね~的だったとか。
雲さんは「ジャズ・ピアノを習いたての人にセシル・テーラーを聴かせてはいけない。
まずはウィントン・ケリーからねみたいな。」と言うと、
グレスさんは「まずはトミー・フラナガンからね。みたいなね。」と言ってます。
それ、よくわかります(笑)。
この続きはまた明日。
この後雲さんがグレースさんの演奏姿勢に鋭く迫ります。
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