日本人ジャズを聴こう!これはカッコイイ!
福島輝人さんが書いた「日本フリージャズ史」を読み始めてから、日本のフリー・ジャスに結構興味を持っている今日この頃の私です。だいぶ前に読み始めたんですが、未だに読み終わっていないのがちょっと情けないのですが・・・(笑)。
今日紹介するのはディスクユニオンのフリー・ジャズ・セールで買った中古CDの1枚。片山・石渡・不破・豊住の『フィクション』(1998年rec. StudioWee)です。メンバーは、片山広明(ts)、石渡明廣(g)、不破大輔(b)、豊住芳三郎(ds)です。大ベテラン豊住を中心に中堅の個性的なメンバーが集っていたのでこれは買いだと思いましたね。
前述の「日本フリージャズ史」を読んで豊住の名前を知ることになり、今回初めて演奏を聴いたのですが、この人の叩き出すヘビー・グルーヴには正直参ってしまいました。この演奏は豊住のドラムが完全に支配しています。演奏者を包み込んでいるというか、支える大地のようなスケールのでかいドラミングで、激しく叩いたりもしますが、攻撃的というのではなく、優しさが醸し出されるところがイイんです。う~ん、惚れました(笑)。
片山はご存知のとおり「渋さ知らズ」で活躍するテナー・サックス奏者です。「渋さ知らズ」のライブは3回見ましたが、片山はサックス陣の真中に陣取って、いつもハイ・ブローで聴衆を興奮の坩堝へと引きずり込んでいました。ここでもハイ・ブローでブリブリやっているのですが、ライブで見た時に思ったとおり、どこか演歌的な歌が感じられます(笑)。それから、ライブで見た時はわからなかったのですが、ただ熱くやっているのではなく、演奏の方向性をちゃんと見ていますよね。
石渡は、「渋谷毅オーケストラ」のライブを見た時に、その多彩でエフェクターも駆使したテクニカルなプレーと、それを使うセンスに惹かれたのですが、ここでもやっぱりカッコイイ演奏をしています。ロック系のジャズ・ギターで、ジミ・ヘンドリックスのような歪んだ音のギンギンなプレーをしたりするのですが、不思議と爽やかなんですよ。オーネット・コールマン門下のアバンギャルド・ギタリストも消化している感じで、いろいろできるテクニックを持っていると思うのですが、それが単なるテクニックではなくナチュラルにその場その場での表現につながっているのが良いと思います。
最後に「渋さ知らズ」のリーダー不破ですが、まずベースの音が、アコースティック・ベースを弾いているのに、エレクトリック・ベースを弾いているように聴こえるのが面白いですね。決してギンギンにやるところはなく、このアルバムでは少し引いてプレーしているようにも感じられ、遠赤外線の如くじわりじわり場に熱気を送り込み続けるのが渋いです。
《インプロバイズド・エアー》は3曲からなる約35分に及ぶ長尺の組曲なのですが、次々と場面が転換する中で、各人の充実したソロが出ては消えていき、飽きないです。フリーの演奏ですが、ビートはファンク系の部分が多いので聴きやすいと思います。2箇所出てくる豊住のドラム・ソロがとにかくカッコイイ!
不破作《おぬまブルース》は歌謡曲のような、ちょっと安っぽい曲の4ビート演奏です。この曲調が片山のテナーにピッタリなんですよ。このちょっといなたい場末な感じが私は好きです(笑)。ギターがブルージーでレイジーなフレーズを弾いているんだけど、なぜかクールな感じが漂うのもいいなあ~。豊住と不破の4ビートがまた深いんですよ。ヘビーなブルースなんですけど、どこか日本的な侘び寂びの世界(笑)?
豊住作《ラガ・オブ・ブラック・キーズ》は最もフリーな演奏ですが、これも聴き辛い感じはなく、自由でクリエイティブな演奏が気持ちイイです。
このアルバムはできるだけ大きい音で聴くことをオススメします。快感度がUPしますよ。もう10年前のアルバムなんですよね。こういう人達の演奏がちゃんと伝えられているとは思えない日本のジャズ・ジャーナリズムって一体なんなのでしょう?
*
明日1/10と明後日1/11は「高野 雲の快楽ジャス通信」の放送15回目。
「スタンダード特集」です。
テーマ曲は、
「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ(帰ってくれればうれしいわ)」。
さて、この曲をどんな演奏で聴かせてくれるのでしょう?
ディレクター嬢もちょっと出演するのだとか。
楽しみですね~。
内容については高野 雲さんのブログ:快楽ジャズ通信
にもアップされますのでご覧下さい。
皆さん聴きましょう!
全国コミュニティーFM局では、毎週土曜日20:00~20:55に放送。
ミュージックバードでは、毎週日曜日22:00~23:00に放送。
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