『ゲット・アップ・ウィズ・イット』の邪悪な《レイテッド・X》
どうも最近は本を読み散らかしていて、読みかけの本や読み始めていない本など数冊がたまっています。
最近出た「白熱MILES鼎談」もそんな本の1冊です。やっと半分まで読み終わりました。この本の前半部分は2001年初版の「マイルス・デイビス没後10年」からの再掲載です。
その2001年の鼎談の内容はというと、後藤雅洋さん、中山康樹さん、村井康司さんの3人がそれぞれマイルスのアルバムの中からベスト10を選び、3人で徹底討議のうえ絞りこんで、最終的に決定版マイルス・デイビスの10枚を選ぼうというものです。この決定版の10枚は、マイルス・ファンの私ですから当然のごとく所有しています。
さて、その10枚を選び出す過程の討議の中で『ゲット・アップ・ウィズ・イット』が俎上に上がります。村井さんは「でも中山さんが何かに書いていらっしゃったけど、マイルスのすべてが好きかどうかが、これが好きどうかでわかるってことはあるね。」なんて言ってます。なるほどそうかもしれません。
私が注目したのは、後藤さんの「《マイシャ》からグチョグチョ度の極致みたいな地獄の《レイテッドX》に突入していくというか落ち込んでいくあの辺は結構好きなんだ。」という発言です。実は私もこのアルバムを買った今から約25年前、それらの曲が収録されているレコード1枚目のB面をよく聴いていたからです。
後藤さんの好みは、どうも私と近いところがあるようなのです。それは後藤さん著「ジャズ選曲指南」の中に記載されていた、マイルスの『ソーサラー』の《プリンス・オブ・ダークネス》が時々頭の中で鳴り出すというところからも言えると思います(笑)。
曲の話に戻りますが、《マイシャ》はトロピカルなイメージの曲が好きなんですよ。ここでのレジー・ルーカスのカッティング・ギターとムトゥメのパーカッションは最高に気分が良いのです。マイルスのワウワウ・トランペット、デイブ・リーブマンのフルートも南国の楽園気分。一転終盤のマイルスのオルガンとピート・コージーのギュインギュイン・ギターには煽られます。
続く《ホンキー・トンク》は、ちょっとかわったアクセントのリズム部分とブルース部分が交互に出てくるロックですね。マイルスのオープン・トランペットがよく歌っていて気持ちイイです。ブルース部分でのマイルスのソロを聴くと、引退復帰後の《スター・ピープル》につながるものであることがわかります。ギターなんかまるでジミ・ヘンドリックスです。
最後は地獄の《レイテッド・X》です(笑)。私はこのタブラが入ったせわしいリズムが大好きです。ブラック・ファンクを過剰にした感じは麻薬的。編集によるものと思われる途中のブレイクがまた違和感を掻き立てるんですよ。マイルスがオルガンで始終持続音を弾いていて邪悪な響きを発し続けます。レジー・ルーカスのカッティング・ギターもこの演奏の肝だと思います。
この3曲の流れは久しぶりに聴いたけど、やっぱりイイなあ~っ!
当時は《カリプソ・プレリモ》も結構聴きました。でも、エリントン追悼曲《ヒー・ラブド・ヒム・マッドリー》は、辛気臭くてダメでしたね(笑)。
レコードは、岩浪洋三さんと鍵谷幸信さんがメインでライナーノーツを書いています。この組み合わせって今考えると結構笑えませんか?
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