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ジャズ喫茶「いーぐる」の「ローランド・カーク特集」(その2)

昨日の続きにいく前に、私のローランド・カーク歴についてちょっと書いておきます。

私が買った最初のアルバムは『リップ・リグ&パニック』です。なぜこれかというと私の好きなドラマー:エルビン・ジョーンズが叩いていたからです。確か20年近く前です。その後、あまりカークには興味もなかったのですが、後藤さんの著書を読み返すうちに5,6年前から興味が湧いて、推薦アルバムを揃える今日この頃です。当然カークに関する文献なども読んでいないわけで、カーク・マニアの皆さんからすれば、お前がカークを語るとは’けしからん’なやつだと思います(笑)。

では昨日の続きです。

<マンゼロ>
サクセロのことです。パソドブレの伴奏に使われた楽器です。ソプラノ・サックスの運指上の問題を解決するために開発されたとか。この楽器に対してカークが付けたあだ名「ムーン(月)・ゼラー」をリネームしたものらしいです。マンゼロが月のイメージだとすると、対照的な太陽のイメージはテナー・サックスになります。その理由は?

マンゼロはエッジの立った、アタックの強いリード楽器で、カークにとってはトランペットに代わるものを探して見つけたリード楽器だそうです。だから、月マンゼロ(トランペット)に対する太陽テナー・サックスなのだとか。カークにとってのトランペットに代わる楽器がマンゼロということなので、奏法もトランペット・スタイルだそうです。

ということで、一人でテナーとトランペット(マンゼロ)をやる擬似クインテット演奏の例。『ウィ・フリー・キングス+2』から《ブルース・フォー・アリス》です。曲をかける前に、林さんからサックスはどういう系譜の演奏なのか注目して聴いてみて下さいとの指摘がありました。私はすぐにロリンズが頭に浮かんだのですが、やはりオーソドックスなロリンズ系とのことでした。一人でテナー、トランペット・クインテットをやろうというカークの奇抜な発想には恐れ入りました。(緑字は私の感想)

ここでソプラノ・サックスに関する逸話を少々。
・カークはソプラノ・サックスを手にした最初のジャズマン?
・コルトレーンが最初に吹いたソプラノ・サックスはカークのものだった。

次に見せるはずだったDVDは昨日書いた理由により見られませんでした。このDVDはカークがマンゼロとストリッチを吹いていて、一人で、マンゼロ(トランペット):マイルスと、ストリッチ(アルト・サックス):キャノンボールを演じているのだとか。見たかったなあ~。

代替として、アルバム『ローランド・カーク・カルテット・ミーツ・ザ・ベニー・ゴルソン・オーケストラ』から《バークリー広場のナイチンゲール》をかけました。マンゼロをトランペットに見立てた演奏の例です。私はこの演奏が気に入りました。バックのオーケストラもなかなか洒落ていると思いました。

最後、こちらもマンゼロ&テナー・サックスですが、ここではコルトレーンの曲を取り上げています。コルトレーン・カルテット化した熱い演奏、アルバム『フライ・バイ・カーク』から《アフロ・ブルー~カズン・マリー》。ここでのマンゼロ演奏は、コルトレーンの《マイ・フェイバリット・シングス》に影響された、コーダル・モーダルな演奏です。マンゼロは『ドミノ』以降、ソプラノ・サックス化しているとのことです。

一方テナー・サックスはハード・バップ・スタイルで、音楽的にはコルトレーンに傾斜していないとのこと。なおコルトレーン・メドレーはコルトレーン没後すぐに演奏を始めているので、ジャズマンとしては尊敬していたのだろうということです。

<テナー・サックス>
前期は多くの伝統を引き継いでいて個性が掴みづらいが、ロリンズに傾斜したものが多く、ジョニー・グリフィン的なものもあるとか。後期はいろいろ飲み込んで特殊なスタイルになるそうです。先ほどテナー・サックスは太陽だと言っていましたが、それはなんでも演奏できるということでもあるそうです。

ここからは楽しい演奏ばかりでした。

林さんが逝ったときにはこれをかけてほしいという(笑)、『ヴォランティアード・スレイヴリー』から《アイ・セイ・ア・リトル・プレイヤー》林さん曰く、知と情のバランスが良い演奏。快楽の無間地獄です(笑)。俗に言うジャズではないかもしれませんが、最高のブラック・ミュージックです。この底抜けの陽気さとパワーは凄い!

次はビデオ『ザ・ワン・マン・ツインズ』からヴォランティアード・スレイヴリー》。こちらはいっちゃってるカークを映像で楽しめます。循環呼吸でテナーをブリブリ吹きまくるのですが、その音のパワーとキレとスピード感はすさまじく、音にやられました(笑)。あとで顔が意外とかわいいなんて話がありましたが、私は音楽に純粋なカークと子供の純粋さが重なってかわいく思いました。不思議と怪人には見えませんでしたよ。

マイクそっちのけで会場を練り歩いた後、イスを壊して終わるのですが、これに関して「いーぐるnote」tommyさんが「カークのお客さんを楽しませる姿勢にも嬉しくなってしまいました。」と書いていて、それを受けて林さん「「楽しませる姿勢」について、カークは黒人芸能の継承者でもありました。保守的で冷静で計算高い男なので、過激なパフォーマンスの多くは芸人魂(楽しませる姿勢)の産物です。」と返しています。お2人の意見にはなるほど納得なのでした。

次はアルバム『カーカトロン』から《ジス・マスカレード》。当時のワーナーのドル箱ジョージ・ベンソンへのあてこすりだろうということです。ジャズだとか何だとかはもうどうでもよろしい。イイッ! リチャード・ティーのトレモロがかかったローズなんか泣けます。
<雲さんからのコメント:さすがはベーシスト雲さん>
今回は、《ジス・マスカレード》が、すごく良かったです。
ゴードン・エドワーズのベースが良かった。演奏を引き締めてましたね。

クローザーは、季節柄ではなく演奏本位ということで『カーカトロン』から《クリスマス・ソング》きっちり締めてくれました。

最後にローランド・カークの肝は?「黒さ、ブルース・スピリット」です。

今回の特集、後藤さんが100点を付けています!

私もローランド・カークの魅力を再認識するとともに、大変楽しく聴かせていただきました。どうもありがとうございました。m(_ _)m

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コメント

いっきさん、お疲れさまでした。
いや~、いっきさんのレポートはいつも面白く、分かりやすいです。
その場にいた私ですが、「あれ、そんな話もしてたっけ?」と忘れていたこともたくさんあり(汗)、細かくレジュメにメモメモしまくっていたいっきさんはサスガだと思いました。
『ヴォランティアード』は、林さんは1週間に一回だそうですが、私は3日か4日に1回のペース人間なので(前半だけですが)、しかもその日の朝も息子と聴いて気合いを入れてきたので(笑)、さすがにまた聴くとゲップかなぁと思ったのですが、まったくそんなことはありませんでした。
今回は、《ジス・マスカレード》が、すごく良かったです。
ゴードン・エドワーズのベースが良かった。演奏を引き締めてましたね。

投稿: | 2008年12月11日 (木) 07時50分

雲さん。こんばんは。

どうもありがとうございます。
面白く読んでいただけたなら幸いです。
レポートは、仕事で会議の議事録をたくさん書いた成果なのかもしれません。ある意味職業病です(笑)。
『ヴォランティアード』をそんなに聴いているんですか?
私もなかなか良いアルバムだとは思いますが、朝聴いていたとは、負けました(笑)。

投稿: いっき | 2008年12月11日 (木) 20時46分

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