歪み捩れサウンドってどうよ!
高野 雲さんが前回のラジオ「快楽ジャズ通信」で放送したバド・パウエルのピアノの音色について、ブログ:http://ameblo.jp/jazzy-life/ の”放送第9回 「絶頂期のバド・パウエル」(4)”記事の中で書いていました。
その記事の中で、雲さんが書いた10年ほど前のパウエル評についてもふれられており、パウエルの音色や醸し出されるサウンドについて「歪み空間、捩れサウンド」といった表現をしていました。なるほど上手いことを言うなあと思いました。
そういうサウンドということでジミ・ヘンドリックスのギターも引き合いに出していました。この人達の音楽を聴いたことがある人には、頷いていただけるのではないかと思います。私の中での「歪み捩れ」初体験はというと、マイルス・デイビスの『パンゲア』を聴いた時だと思います。
最初は不快感もありましたよ。でも何か心を捉えて離さない感覚が残ったのです。それで何度か聴くうちにこれが快感になってしまったのだから不思議です。こういう強烈な体験をしてしまうと一生消えないのでしょう。いろいろなものを聴いても、もう一度聴くと、やっぱり『パンゲア』は凄いということになってしまうのです。
私の場合は、パウエルのピアノのそういう魅力に気付くのには時間がかかりました。というのは、あまりパウエルを真面目に聴かなかったからです。今となってはパウエルのピアノはやっぱり凄いと思うようになりました。
私はジャズを長く聴くため、いや、ドップリ浸かるためには、一度はこういう体験をする必要があるように思います。きれいごとだけでは決して済まされない、こういう体験をしたことがない人は、ジャズという音楽の大切な何かを知らずにいるように思うのです。
さて、歪み捩れの快感みたいな体験があれば、きっと良さや面白さがわかってもらえるだろう1枚を紹介します。7月に行われたジャズ喫茶「いーぐる」の2008年上半期の新譜特集:http://ikki-ikki.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/post_cc2c.html で取り上げられたアルバムです。ところで下半期の新譜特集はあるのかな~?
インゲブリクト・ホーケル・フラーテン・クインテットの『ザ・イヤー・オブ・ザ・ボアー』(2007年rec. JAZZLAND)です。メンバーは、デイヴ・レンピス(as,ts,bs)、ジェフ・パーカー(g,effect pedals)、オラ・クヴァーンバーグ(vl)、インゲブリクト・ホーケル・フラーテン(b,electronics)、フランク・ロサリー(ds,electronics)です。
楽器編成からわかると思いますが、フリー系の尖がったサウンドです。バリトン・サックスの咆哮あり、ヴィオリンの耳障りな感じのソロあり、エフェクターを使ったギターのノイズ系サウンドありと、これだけで嫌になってしまう人もいるでしょう(笑)。
でもどれも強靭な表現であり、やっぱり気持ち良いのです。ベースとドラムは定型のリズムを刻んでいるので全くのフリーでもなく、ハードコアなバップと言ったほうが合っているのかもしれません。
《90/94》は、最初はジェフ・パーカーのエフェクト・ギターがソロをとり、途中で合奏するヴァイオリンの音の感じや、4ビートが『アウト・ゼアー』を連想させます。バイオリンのソロになると、リズムがテンポ・アップしてエキサイトするんですよ(新譜特集の評にはちょっと誤解がありました)。続くデイヴ・レンピスのアルト・サックスがまたイイですね。ベースとドラムをバックにフリーキーな音を交えつつファナテックなアルト・ソロを展開しています。この演奏、なかなかの出来だと思います。
他の曲もリキ入ってますよ。聴いてみて下さいな。
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