山中千尋さんゲストの「PCMジャス喫茶」を聴いて(続き1)
今日の「PCMジャズ喫茶」はジャズ・ピアニストの安井さち子さんがゲストでした。今回は本当に和気あいあいでした。安井さんはオジサマ達に合わせるのが上手いのです。それでいて言いたいことは言っているんです。前回の山中千尋さんとは大違いです。でもその分面白さはちょっと弱かったです。
今日の放送はまた後でレポートするとして、今日は山中千尋さんがゲスト出演した時の続きをレポートします。だって前の2回のレポートは番組開始から20分の部分なのです。残り1時間40分あるのですから。またかと言わずに読んでやってくださ~い(笑)。
大西順子さんが本格復帰するとのことで、放送収録日にブルーノート東京でライブをやるという話から始まります。寺島さんが、一旦引退してまた復帰する大西さんについて、山中さんに質問します。その話の中で、ロリンズが雲隠れして復帰した話をしたら、山中さんは全然知らなかったようです。更に山中さんは「いつも引退公演って言っているけど絶対引退しないイメージがあって、起き上がりこぼしみたいだなあと思って。」なんて言っています(笑)。
寺島さんは、ロリンズの雲隠れから復帰後の『ザ・ブリッジ』が期待を裏切るなまぬるいものだったから、大西さんにもそれと同じようなことが起こらないか心配なのだと言います。山中さんはそれに対して「それほんとに余計なお世話ですよ。」なんて返します。寺島さんは更に「余計なお世話を言うところとが俺の優れているところ。」なんて自分で言うものだから、山中さんは「優れていないと思うけどね。」なんて笑っています。このお2人言いたい放題で面白いじゃありませんか?
寺島さんはしつこく「山中千尋はその件についてどう思う?」なんて聞きます。
山中さんは「私ノー・コメントです。だってわからないもんほんとに。」と困っています。
寺島さんはたたみかけて「大西順子のピアノに対してどう思う。」なんて聞きます。
答えに困っていると更に「私のタッチと違うってことは感じているよね。」と続けます。
山中さんは「どうなんでしょう?よくわからない。なぜなら人と比べないから。ジャズのCDやライブを聴く時はほんとに聴くという感じになっちゃう。自分のピアノに対してと言われても困るよ。そんなこと(比較)やっていたら私こそ止めたほうがいいってことになっちゃうし。そういう模範回答みたいなことになっちゃう。」と答えます。
山中さんは「外の人はいろいろな女性ピアニストがいるし聴き比べるのは悪いことじゃないけど、私が人と、例えばキース・ジャレットと比べていたらキリがないでしょ。」と続けます。
寺島さんは「じゃあ質問を変えるけど、ブラッド・メルドーと大西順子を比べた時に、明らかに路線が違うよね。行き方というか。」と言います。
山中さんは「それは違うでしょうね。」と答えます。
寺島さんは更に「どっちの行き方の方を山中千尋は良しとする。」と聞きます。
山中さんは「ブラッドの方向と言われててもわからないし、ブラッドがどんなにバーサタイルか知っています?ブラッドが学生の頃ジミー・コッブと一緒にビ・バップやってるの知らないでしょ?」なんて問い返します。
寺島さんは「それはわかるけど。今は他のピアニストと違うことやりたいのが我々よ~くわかるわけ。むしろ全部知っている山中千尋より我々の方が方向性みたいなものは、他のピアニストとの比較でわかりやすいから。」と続けます。
岩浪さんは「我々は他の評論家の書いたものはほとんど読まない。同業者の書いたもの読まない。だから同業者のことを聞かれてもよくわからないんじゃないの。」なんて山中さんをフォローします。
山中さんは「一人のアーティストとしてバーッと聴いたりするけれど、それに対して自分はどうとかやっていない。自分が好きでいろんな人を聴いて、こういうのがあるなって聴くけれど、どうですか?と言われてもゾウとキリンを比べるようなもの。どうするの?」と返します。
寺島さん、まだまだくいさがります。「じゃあさ。ゾウとキリンを比べてどっちが好きかと言ったら答えられる?」と。
山中さんは「でもー、洋服とかで着る場合と友達とかでは違う。」と。
寺島さんはとうとうここであきらめました。
寺島さんは、大西さんに対する山中さんの感想から、山中さん自身のピアノ感を浮かび上がらせようと思ったのでしょうが、当の山中さんにとっては他人のピアノの弾き方なんてどうでもよいことなのでしょう。人がどうこうより自分の行き方を考えていることがよくわかりました。あくまで寺島さん流で、山中さんの考え方を無視して質問するのはいかがなものか?と思いましたが・・・。
更にこの後、山中さんにブラインド・フォールド・テストをしちゃうんですから。ちょっと呆れます。山中さんもブラインド・フォールド・テストにはかなり参ったようにも感じました。
寺島さんは「当てなくてもいい。どう感じたか。好きでも嫌いでもいいよ。そこを交えて意見を聞きたいんだ。」と、ブラインド・フォールド・テストを始めます。
キム・ハクエイの曲からです。かなりテクニカルに弾いている曲で、私はこの曲はあまりきませんでした(笑)。
寺島さんは曲が終わるといきなり「好きか嫌いか?」と聞きます。寺島さんにはこれしかないのです(笑)。
山中さんは「なんで好きか嫌いかって、それしかないんですか?」と反論します。ソウソウ
寺島さんは「分かりやすいから。好きだったらどうして好きか?嫌いだったらどうして嫌いか?って答えを導いていけるでしょ?」と言います。これしかないのですよ(笑)。
山中さんは「これだけじゃわからない。」と答えます。ごもっともです。
寺島さんは「直感的なもので。」とたたみかけます。
山中さんは「直感ってないんですよね、私。」と言いつつ、「チック・コリアの《マトリックス》の語法、間のおきかた、スイングよりも『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』の雰囲気に近い、これを好きか嫌いかと言われても、友達の演奏を聴いているみたいでよくわからない。」と答えます。好き嫌いじゃなくてこういうところに耳がいくということなのでしょう。
寺島さんは「この人の師匠が以前、山中千尋が嫌いと言ったマイク・ノックなんだよ。」と言います。山中さんにこういう弾き方が嫌いと言わせたかったんですよ(笑)。
山中さんは「マイク・ノックが嫌いっていうわけではなく、あのアルバムが苦手なだけ、この人はチック・コリア系。」と言います。なるほど。
寺島さんは「山場を作ろう作ろうとしていて、実際に自分がこういう旋律を弾きたいというのがあんまりなくて、とにかく上へ行こう行こうというのが感じられて疲れる。」と言います。どうしても嫌いだと言わせたいようです(笑)。
山中さんは「家に帰ってきてほっとしたいなという時に聴くアルバムではない気がしますよね。でも好きか嫌いかとは別な話で、リバーブがかかった音が特徴があるなと思って、これ寺島さんのレーベル?わ~、ビックリした。」山中さんも寺島さんには気を使っているのですよ。
寺島さんは「違う違う俺はこういうピアノ録らないよ。俺はもっと普通にスイング。」上記のことを聴いて寺島さんも少しはニンマリでしょう(笑)。
ここで山中さんにこの人がキム・ハクエイだと明かします。
山中さんによると、これはチックのイーディオムで、『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』の本が売っていて、カッコイイから練習してコピーしちゃうらしいです。そうするとそこから抜け出すのが難しいらしいです。「チックのフレーズは強烈で、指に自然な形で一番華やかな聴き栄えのする音をやるから、指が覚えてしまう。」と言いつつ、「多分キム・ハクエイも凄く練習していて、あれって思い。だからバークリーの友達のように聴こえた。」とも言っています。こういう事情もあるのですね~。ミュージシャンも大変です。
そういう山中さんはこの楽譜のコピーを途中でやめちゃったそうです。さらにバークレーにはいろいろな流派があるらしいのですが、山中さんはそのどこにも入っていなかったらしいです。山中さんってやっぱりちょっとアウト・サイダー?(笑)
寺島さん「俺さー、今の演奏聴いたら疲れちゃうよ。」しつこくないですか?
山中さん「なんでさ、私に悪口言わせようとしてない。全然悪く言ってないよ。全然悪く言ってないよ。凄くだから学校の時の優等生の人の演奏を聴いているみたい。」山中さんの気持ちお察しします。例え好き嫌いでも山中さんが発言すればその影響があるのですから、そこのところを寺島さんがわかってあげてあげないとまずいと思いますよ?
寺島さん「これはやっぱりレナード・フェザー(ダウンビート誌でブラインド・テストをした人)の心境になってきたけどね。ミュージシャンからいい言葉を聞き出すってのは、レナード・フェザーの願っていたことですからね。今さやっぱり思ってたことを引き出せたなって満足感あるね。」結局自己満足です(笑)。いや、私も楽しかったです(笑)。
次は松本茜の『フィニアスに恋して』から《スーン》。実はこの放送を録音しておいて聴いたら、最初誰の曲かわからなかったのです。DVDレコーダーのHDに音声だけ録音しているから音質が少し落ちているにしても、私の耳もいいかげんだと呆れました(涙)。
この演奏について山中さんは、「私がピアノをやっているというのを踏まえたら何も言えなくなるので、リスナーとしてここに来ている。」と言ったうえで、最初はベース・ソロが長いなんて話にふりつつ、「お酒が進みそうな演奏。」と言っています。番組の後のほうで上手いとも言っていました。松本茜さんの名前は聞いたことがあるそうです。
次はヘルゲ・リエンの『トゥ・ザ・リトル・レディオ』から《アマポーラ》。私はこれも持っていたのに最近は全然聴かなかったので誰だかわかりませんでした。良い演奏だと思いましたけどね。
寺島さんが「今までかかった中でこれが一番好き。三者のからみあいがスリリングで曲もよくてベスト・フェイバリットだ。」と切り出します。岩浪さんは「こんな絡み方は日本人じゃないでしょ。」なんて言います。
日本人じゃないと聴いて山中さんも少しは安心したんでしょうね。山中さんは「きれいにまとまっている感じじゃなくて、その場でインタラクティブにやって、お互い和気あいあいにやっている感じが伝わってくる。」と言います。「この3枚で比べたらフェアじゃないけど、ピアニストが自由な感じで、他の2人に比べて流暢ではないけど、凄く遊びと余裕があって好感が持てる。」と続けます。「私は誰々風が好きじゃないから、こういうのはどこにも入っていないからいい。」とも言っています。
寺島さんが「山中千尋トリオはこういう感じじゃないよね。」と言うと、山中さんは「今度のアルバムは割とこっちに近い感じ。」と言っています。その後は寺島さん得意の3者対等のトリオ・ミュージック論が出て、こういうのが今ヨーロッパで流行っているなんて山中さんに教えています(笑)。
またヘルゲ・リエンだと明かした後で、「この人は曲を選ばないととんでもなくフリーなこともやりだしてメロディーがないと聴けたもんじゃない、《アマポーラ》でこれをやるから我々リスナーはうれしく聴いている、」と、またしてもいつものメロディー論です(笑)。
寺島さんにかかるとミュージシャンも大変ですよ。何事も「好き嫌い」で感想を求められてしまいます(笑)。「好き嫌い」で答えても、山中さんみたいな人が言えば影響力は大きいわけですからそう簡単には言えないと思いますよ。皆さんそう思いませんか?
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コメント
山中千尋さんと寺島靖国さんがバトル関係にあるとのネット情報を調べようとして辿り着きました。
ラジオでのやりとりを詳細に記録しておいて頂いたお陰で、10年以上経ってから関心を持った者に対して大変参考になり、ありがたかったです。
一言、御礼をと思い、コメントさせて頂きました。
投稿: tom0 | 2020年4月14日 (火) 21時38分
tom0さん
こんばんは。
コメントありがとうございます。
当時は何かに憑かれたようにラジオを聞き、ブログに書いていました。
今はすっかり正気を取り戻しています(笑)。
参考になったのでしたら幸いです。
投稿: いっき | 2020年4月15日 (水) 23時29分
はじめまして。
中山千尋さんの文字を目にしたので、読んでみました。
そして、びっくり。
これはホントに酷い番組でしたね。
寺島氏がここまで〇〇だったとは、知ってはいましたが、更に想像を遥かに上回る〇〇な人なんですね。
千尋さんが可哀想。
でも、オーディオの世界には、こういう〇〇な人を教祖とする人たちが沢山いるので、大変ですね。
あまり近づかないようにします。
投稿: HG | 2020年10月 4日 (日) 21時23分
HGさん
コメントをいただきどうもありがとうございます。
返事がすっかり遅くなり大変申し訳ありませんでした。
文字にすると私の誇張ニュアンスが加わるためひどい感じになってしまっていますが、番組は意外と和気あいあいでした。
HGさんがプロレスをご覧になるか分かりませんが、寺島さんはあえてヒールを演じて番組を盛り上げようとしているところがあり、山中さんもそれはある程度了解済みだから番組ゲストに来ているわけです。
私もその状況を誇張気味に実況しているということを了解いただければ幸いです。
投稿: いっき | 2020年12月12日 (土) 16時35分