« 明日は「高野 雲の快楽ジャズ通信」のラジオ放送! | トップページ | 激熱!火傷に注意!コルトレーン入門!「高野雲の快楽ジャズ通信」 »

山中千尋さんゲストの「PCMジャス喫茶」を聴いて(続き2)

今日は久ぶりに衛星デジタルラジオ・ミュージックバードの人気番組「PCMジャズ喫茶」のレポートを書きます。なお、ここに書くことについては製作者サイドからO.K.をいただいております。

この番組はとにかく面白いので多くのジャズ・ファンの方に聴いてほしいです。
ミュージックバードにつきましては http://www.musicbird.jp/ をご参照下さい。
専用アンテナと受信機のレンタル料込み月々¥2,100で、「PCMジャズ喫茶」を放送している「THE LAZZ」チャンネルも含めて10チャンネル聴けるのですから楽しいじゃありませんか。

さて、今日レポートするのは山中千尋さんがゲストとして出演した回の続きです。後半1時間部分の放送です。

長くなりますよ。覚悟はよろしいですか(笑)?

前回のレポートでは、ヘルゲ・リエンの演奏についてコメントしたところまで書きました。このCDがどこから出ているのかという話になります。
山中さん「DIWって偉いよね。ほんとに凄い好きな人がいっぱいいて、一生懸命みんないい作品出してて、私最初にほんとにジャズ聴き始めたころに聴いたのDIWのアルバムだから、ディスクユニオンに頑張ってほしい。」DIWの皆さん聴いてましたか?うれしいこと言ってくれてますよ。
寺島さん「あのね、そういう意味ではね、本命をいっぱい持っているユニバーサルとかEMIとかソニーとか、音源いっぱい持ってる財産いっぱい持ってるだけに、あの、新しいものを作っていこうという意欲がないんだよね。DIWは自分で持ってないから。」大手の方にも是非頑張って新しいものを作ってもらいたいです。
山中さん「ジャズなんてニッチ商売なんだよね。」
寺島さん「そうなんだよ。ニッチで行かなきゃいけないわけ。」
山中さん「ニッチ商売だって言ってるのに。」
寺島さん「そう。ニッチで行かなきゃいけないんだよ。それを万単位で動かそうとするから、おかしなものができちゃう。いいんだよ。3千枚5千枚で。」
山中さん「3千枚5千枚って言ったらいいほうですよ。」
寺島さん、山中さん「凄くいい。」
寺島さん「山中千尋がどれくらい売っているのか知らないけども。」
岩浪さん「ウン万枚くらいね。」
寺島さん「ウン万枚は行ってないでしょう。」
ここまで珍しくお2人は意気投合しています(笑)。
ジャズ業界でCDを売るのはやっぱり大変なのですよ。お2人は言いたいことを言い合ってますが、ジャズのことを真剣に考えていることには替わりないのです。

ここで話は変わります。

雲さんが出演した時に、山中さんのアルバムから《クレオパトラの夢》をかけて議論したのを覚えていますか。その時、「山中さんがなぜこれを録音したのか?」ということが話題になりました。「本人の意向なのか?会社の意向でこれを入れれば売れるだろうと思ったのか?」という話です。それを山中さんに尋ねます。

まず山中さんはバド・パウエルが凄く好きなんだそうです。
山中さん「澤野からユニバーサルに移ったのが話題になるけど、ジャズにメジャーもマイナーもないから。」とも言っています。それは多分、ユニバーサルに移籍したからと言って、会社の意向が強くなるわけではないと言いたかったのでしょう。
それで《クレオパトラの夢》は山中さんがやりたかったからやったということです。

山中さん「バド・パウエルをやるなら《クレオパトラの夢》より良い曲がいっぱいあると思う。」と言います。ではなぜこの曲なのでしょう?
山中さん「パッと弾いて録って、知らないって言うから。ジェフテイン・ワッツもボブ・ハーストも。(山中さんが)《クレオパトラの夢》知ってる?って言ったら、(ジェフかボブは)知らない。ナイス・チューン。おまえの曲か?とか言うから。(山中さんは)違う違うバド・パウエルの曲。2人とも知らない。」と続けます。これには寺島さんも岩浪さんも大ウケでしたね。
更に山中さん「で、まあ、1個録ったし、別にほら。一応会社からリクエストがあったって、私は嫌ですという権利はあるから、もちろんあれだけども。う~ん。なんで入れたのかな~。最初のアルバムなんてそんなに。あーその、ユニバーサルに入ってから、会社が変わって、別に何も考えてなかったかな~。」と言ってます。
寺島さん「そういうもんなんだよね。我々の方が考え過ぎちゃって。」
どうやら録音現場の流れで収録しちゃったというのが理由のようです(笑)。

続けて山中さん「売れようっていうか。そんなつもり、っていうか。やりたいことだけやって行きたかったから。あんまりそういう、なんていうの、いろんな人がいて、あんまりプレッシャーがないところがいいなって思っただけ。」
寺島さん「ただ今の話聞くとね。我々は山中千尋は山中千尋で。澤野行こうがユニバーサル行こうが、自分のやりたいことやっているんだろうなという認識が大きいですよね。」
山中さん「全部が全部じゃないけど~。」
岩浪さん「でもそういうイメージはあるね。」
寺島さん「ユニバーサルへ移って、相当売れ線を出すんじゃねーかっていう危惧があったんだ。」
山中さん「ごめんなさい。売れ線出れば良かったんだけどね(笑)。」
岩浪さん「いや、今の自分を押し通しているから売れているんだ。僕はそう思う。」
山中さん「けど、澤野さんとこで、そのまんま何ていうの。ほら、澤野さんは凄く。他のアーティストさんにそういう風に多分言わないと思うけど。やっぱ私はほら、全然最初から育ててくれたわけだから、そういう風にもっともっとって、お互いもっと頑張ろうっていう風に、そういうので売れるの出してって言われたけど。」
寺島さん「いい意味でね。」
山中さん「それ続けたらね。多分私、ほんと周りばかり気になって、めんどうくさくなっちゃう。」
寺島さん「でも極端に言うと、ユニバーサルに移って、初回に出てくるCD見て、裏ひっくり返して、エッ、こんなスタンダードオンパレードいいのみたいな。実はそんなイメージ持ってたのよ。ところがそうじゃなくて、スタンダードも入っているけど、オリジナルがほとんどでしょ。これはやっぱり彼女のやりたいようにやったんだなという認識持ったね。岩浪さん。」
岩浪さん「そう。今だってそういうイメージだから、逆に僕は売れていると思う。それは会社のお仕着せみたいな感じでやっていたら、逆に山中千尋のイメージが壊れて、逆に売れなくなると思う。やっぱり我の強さを、風なイメージは生かしたほうがいいよ。」我の強さを”あたりで山中さんがちょっと息を荒げてました(笑)。
移籍にまつわる貴重な話が聴けました。なるほどね~。山中さんにもいろいろ考えるところがあったんですね。単に売れてきたからメジャー・レーベルへ移ったわけじゃないというところですね。

これもまた雲さん出演時に問題となった「《クレオパトラの夢》を半音下げてやっているか?」について、これはもともとブルーノートのやつが回転数が違う(半音違う)やつがあって、どっちをやったかわからないそうです。それに山中さんは《クレオパトラの夢》が人気曲だったことを知らなかったそうです。

次は昨年4枚(DVDも含む)出したことについてです。寺島さんは出し過ぎだと言ってますね(笑)。山中さん「私は出したいなんて言ってませんよ。」と言います。普通は年に1枚とか2年に1枚だから多いねなんて話になります。山中さん「だからありがたいってことなんでしょうね。」と言ってます。今これだけ売れているジャズ・ミュージシャンはいないのではないでしょうか?

次にオリジナル曲について、次のアルバムのために作曲しているかというと、そういうことはないらしいです。スタジオでその場で作曲するんだとか。それでここでかける《ユニ》という曲は、山中さんが使っているユニの3Bの鉛筆からとったらしいです。寺島さん「俺は6Bだけどね。」と言うと、山中さん「6Bだとね、眉毛書くとき濃いんですよね。」と返します。どうやら山中さんの鉛筆は眉を書く化粧品としての鉛筆だったようですね(笑)。

今発売しているアルバム・タイトルの『ブラボーグ』について。音楽用語の「ブラブーラ」とファッション・スタイルの「ボーグ」をくっつけた造語とのことです。華やかでスタイリッシュな感じを意識したそうです。ちなみに山中さんは「ブーラボーグ」と発音していました。アルバムのタイトルを付ける時は、アルバムの構想が出来ていないので、適当に付けるんだとか。このことからCDプロダクションの事情がわかりますね。

そしてなんでこの曲をかけるのかと思ったら、一番短い曲だったからとか(笑)。パッと書いた曲がどういう感じなのかを聴いてほしいとのことでした。

曲がかかります。なんともバピッシュなノリの良い曲ですね。最近私は山中さんのピアノはちょっと荒いというか勢いまかせな感じで、確かに気持ちは良いのですが耳に残らないような感じも・・・。ジーン・ジャクソンのブラシは豆がはぜる(寺島流、笑)感じが、ビセンテ・アーチャーのベースは演奏をグングン推進させる感じが良いです。

さて曲が終わると、
開口一番寺島さん「いや~、笑っちゃいましたね。笑っちゃいけないんだけど、本人が笑っているからいいよね。」と、ご機嫌です。
岩浪さん「いいよね。」と言います。
寺島さん「ジャズがこんなにわかりやすくていいのか?って感じだよね。好きだよ。久しぶりにジャズっぽい単純なフレーズ聴いて。」と続けます。
岩浪さん「こういうの人前で弾けるようになったら大進歩ですよね。」なんて言い。
寺島さん「こういうのが弾ければグレート・ピアニストですよ。」なんて言って、一同大盛り上がりです(笑)。
山中さん「何か売れなそうですよね。あははっ!」なんて言うと、
岩浪さん「逆ですよ。こういうの楽しいから売れますよ。」と言い、
長澤さん「誰が聴いてもわかるからね。」と続けます。
山中さん「私ハード・バップが凄く好きなんですよ。だから途中でフレーズ弾いてても、笑っちゃいますよ。」と言うと、
岩浪さん「笑いがとれるようになれば一流ですよ。」なんて返します。
どこまで本気で言っているのかわかりませんが、私はこんな安直なことを言っていていいのかな~なんて・・・。まあ、そう言う行き方もありだと思います(笑)。

寺島さん「ほんとそのとおり。ちらっと言ったけど、(松本)茜ちゃんみたいに、あんな風にきれいに美しく弾きたいなあと。」
山中さん「違う違う。ああいう風に若い人でいっぱいいるじゃないですか?凄い上手な。ああいう風に弾ければいいんだけど。私の場合、ジャス体験ていうのが、ジャズ喫茶みたいなところでできているので。長澤さんがキャバレーだったように(笑)、私のジャズ体験はジャズ喫茶ですからね。」多分山中さんは、松本茜さんの弾くピアノと、山中さんがジャズ喫茶で体験してきた上で弾くピアノと、違うものを感じたからこういう発言になったと思います。でもご存知のように茜さんもジャズ喫茶ではないにしろ、フィニアス体験の上で弾くピアノなんですよね。興味深い発言ですね。
「でも日本的なジャズ文化って絶対あると思うんですよ。すぐ日本は、「何がいけないんですか?日本のオーディエンスと外国は何が違うんですか?」とかインタビューの人に言われるんだけど、私、日本っていうのはいろんなものが同居してて、折衷する良さってのが凄くあると思って、日本人の好きなジャズってものにもっと自信を持っていいんじゃないかと思う。」かつ、そういう茜さんのピアノに自信を持つようにと、先輩としての余裕が感じられます。自分も含めて「日本人の好きなジャズに自身を持とう。」という意味かな?(11/24追記)
寺島さん「今のまさにそれですよ。折衷ソロですよ。」寺島さんは山中さん自身のことだと受け取っているようですが違うんじゃないかな~。上記追記のように考えれば寺島さんはちゃんとわかっていますね。(11/24追記)
山中さん「でもまあ私、凄い一番好きなことを、これはこれで面白いかな~っていう。」これは茜さんに対する山中さん自身のピアノに対するいいわけですね。寺島さんとは話が噛み合っていないようです。ここのやりとりは噛み合っていますよね。きっと。(11/24追記)

寺島さん「もちろん。バカな質問するけど。このフレーズは最初から前の晩に考えていたわけじゃなくて、その場で出てくるわけでしょ?」
山中さん「前の晩に考えてたら時間かかちゃって。これはほんとにスタジオで書いた曲だし。」
寺島さん「自分で弾いていて、なに?エッ、こんなの出てきちゃった。みたいな感じ?」
山中さんいやー、だって、何かどこかで聴いたことがあるような感じのフレーズですけどー。いいじゃない(笑)。」
寺島さん「いいよ~。いいんだって。」
山中さん「だって私、そりゃーあの、それぞれのリスペクトがあります。尊敬がありますからー。敬老の日だしね(笑)。」
寺島さん「いつも思うんだけど。ジャズってのはね。一寸先が闇で、何が起こるかわかんないのがジャズだ。これが素晴しいんだって言い方するけどね。そんなら自分らしさを聴いてくれ。俺の次に出てくるフレーズが、あっ、これなんだよね待ってたのは。っていうフレーズが出てくるのを聴いたほうが好きなんだ。どうですかその意見、その点で?長澤さん。」
長澤さん「うんだからそれは、予測が出来るっていう流れがあるじゃないですか?こういう曲がくるだろうってのが。」
寺島さん「来た時のうれしさってありますよね。岩浪さんどうですか?」
岩浪さん「今の。またでもこういうのばっかりじゃなくて、いろんなタイプのが。もう1曲ちょっと聴きたいですよね。」
寺島さんのいつもの論で、自分が好きな演奏をミュージシャンに求めてしまうところがまた出ましたね(笑)。
岩浪さんがこれに対して意見を述べないところが面白いですね。
山中さんは「リスペクトがあって、先人のようなフレーズを使うのならいいでしょっ。」と言いたいみたいですね。
これは
「いーぐる」の後藤雅洋さんが、ジャズ批評11月号「日本人女性ジャスピアニスト」を雲さんと一緒に聴いた対談記事で、山中さんのピアノに対して書いていることに通じるところがあるように感じます。恐るべし後藤さん。

次は岩浪さんのリクエストに答えて違うタイプの曲ということで、山中さん曰く屈託のないブルースがかかります。曲名失念。私の感想は基本的に前にかかった曲と同じ感じです。勢いがあって楽しい演奏であることは間違いありません。

山中さんは演奏を聴きながら「笑っちゃう。笑っちゃう。」と言っていたそうです。
寺島さん「我々が聴くとですね。本人と全然違って、やっぱり、笑っちゃうという感じではないですよね。」と言います。
岩浪さん「素敵じゃないですか。凄いブルースにのってる感じで、いいじゃないですか。シンプルで。こういうのを堂々と弾けるようになると、立派なものですよ。」
山中さん「何も考えてない感じがしましたでしょ。」なるほどね~。
岩浪さん「考えないのがいいんですよ。」
寺島さん「考えているのはやっぱりわかるんだよね。スポンティニアスに、自然発生的に出てきたものだなと感じられるわけ。で、笑っちゃうというのは、どういうところが笑っちゃうっていう風に言ったわけ?こんな愚かなフレーズが出てきていいのかな?っといった感じ?」
山中さん「うん。同じことばっかり弾いてる。さっき岩浪先生がおっしゃったように、あのブルースって、そこで同じことを2回繰り返すんだそうなんですが、同じ繰を言っているような・・・。」ほとんどひらきなおり(笑)?まあこれはこれでいいんじゃないでしょうか。

上記部分に対してコメントで「まるしお」さんから重要なご指摘をいただきました。フレーズ⇒ブルースでした。ここは重要ですので訂正します。申し訳ありませんでした。
そうなると私のコメントも的外れですね。
「まるしお」さんがおっしゃる ”ブルースの本質をスパッと切って見せたようで、非常に感心しました。山中さんの言語感覚も大したものです。”が、的を射ていると思います。

寺島さん「老人の繰言(笑)。繰り返し。」
岩浪さん「でも言いたいことって人間でも何回も繰り返すじゃないですか?相手を説得するために、だからそれだけ気持ちがこもってれば繰り返したっていいんですよ。」
寺島さん「ジャズって説得の音楽なのか。だから繰り返すんだな。」
岩浪さん「相手を説得しようという、そういう気分。」
寺島さん「所謂、他のジャンルの音楽にない良さってのが、説得だよね。本人が気持ちで。」これは我田引水な理屈という感じが・・・。
岩浪さん「凄い人間的なんだよ。」
寺島さん「人間的なんだよ。人間性がよく出てるわけ。俺今回凄く気に入ったね。これだったら何回でも聴きたいね。」と言いますが、過去のことに鑑みると・・・?
山中さん「売れなさそうですね(笑)。」そんなこと言うの(笑)?
岩浪さん「こういう方が絶対売れますよ。」
山中さん「でも、あの、凄い。ほんとにね。これ聴いてわかって下さると思うんですけど、ジーンとビセンテが凄くいいサポートっていうか。ピアノがベースとドラムを従えてるんじゃなくて、サポートを凄くしてくれたっていうか。スタイルってものに関して、速いキャッチするのが。凄い楽で凄い楽しかったんです。現場も。あの~。会社的には急いでください。速く。みたいなのがあったんですけど。あの~、何か吹っ切れたなっていう感じ。」会社的に急がせるあたりがね~。じっくり作ってほしいなんてのは、こちらの勝手な思いなのかな~。ちょっと複雑な気持ちになります。
寺島さん「吹っ切れた感じがしてますよ。」
岩浪さん「いい言葉だね。」
山中さん「別に売れなくていいやっていう。」もうどうでもいいや(笑)。
寺島さんところが売れちゃうんです。こういうのが。ただ、俺がプロデューサーなら、一番最初のちょっと強面風なイントロはとっといて。」一同笑。よっ、出ましたプロデューサー!
山中さん「あれで強面なの?」
寺島さん「まっ、だから強面を最初に持ってきて、中身でちょっとマイルドなところを聴かせるのかな。」
岩浪さんあのベースの出だしのこと言ってるの?でもあれで、僕はああいうう風にやってて、突然ノリのいいピアノが出てくるところでおどかして。最初、頭からじゃなくて。」
寺島さん「うん、そういうことかな~と思ったんだけど。案外何も考えていないかもしれないね。」
山中さん「とにかく少しでも分数増やせばいいかなって思ってた。」一同爆笑。あははっ!
寺島さん「ちょっとどういうことよ?」
山中さん「字数かせぎってやるでしょー。先生達だって。」

ここから字数かせぎの話で盛り上がります。
そこから山中さんがジャズ批評にも時々書くと言う話になります。例のブラッド・メルドーのレビューですよね。山中さんに連載を持たせたほうが良いなんて言ってます。更にスイングジャーナル誌でやった村井康司さんとのSHM-CDの聴き比べの話になり、スイングジャーナルのオーディオで聴くと違いが凄くわかるなんて言ってます。そういう山中さんはDVDプレーヤーでCDをかけてTVのスピーカーで聴いているらしいです。寺島さんは呆れてました(笑)。
TVではベースの音が聴こえないだろうという話から、山中さんはドラムが好きだからベースは聴こえなくても良いとか話しつつ、今回のアルバムではジーン・ジャクソンが抑えて叩いているという話になります。曲によってはガーンと来るのもあるとも言ってます。そこからスタジオ録音時はピアノの部屋、ベースの部屋、ドラムの部屋とセパレートしたという話になり、今回は曲をちゃんと作ってなかったので、間違いがあった時に直せるようにとの配慮だとか。でも音が漏れていたらしいです。物凄く隔離した感じではないとのことです。

寺島さん「ミュージシャンとしてどうなの?隔離されていた環境と、一箇所で目と目を見合わせながら演奏するってのと?」と聞くと、
山中さん「関係ないです。だって私もし目が見えなかったらどうするの?」とキッパリ(笑)。
寺島さん「我々リスナーっていうのはね。そういう風に隔離されて、ヘッドホンで聴きながらやる演奏って、そんなのほんとの人間の音楽じゃないって考えている人いっぱいいるんだよ。」と、寺島さん流ですね。「我々」って言われても困ります(笑)。
山中さん「そうしたら目が見えない人困っちゃう。」と言い、盲目のミュージシャンの名前が何人かあがってこの話はおしまい。

その後、岩浪さんにもかけてもらわなきゃということになり、グラント・スチュワートの『リカード・ボサノバ』から同曲をかけます。ちなみに山中さんはグラント・スチュワートは知らないそうです(笑)。

曲がかかった後、寺島さんが収録曲があまりにもウケ狙いなことに噛み付きます。山中さん「さっき知ってる曲を聴きたいって言ったくせに、矛盾男。」なんて寺島さんに言います(笑)。寺島さんも笑ってます。更に寺島さんは作る人の精神的深さが感じられず、この曲をやればいいだろうというのが見え透いていて、あまりにもコマーシャルだと言います。今の演奏もあまりにもコマーシャルだとけなします。山中さん「ああやれば、こう言うって感じで。ほんとに、結局気に入ったものがないってとこでね。ジャズ界を活性化しているのね。」なんて言われてます。さすが山中さんお見通しですね。

寺島さん「少なくとも山中千尋の演奏にはそういうの(コマーシャルなもの)は感じない。」
山中さん「あっ、だってどうでも良かったもん。」
寺島さん「この人達はどうでも良くなくてやってるんじゃないんだ。(コマーシャルに)必然性があってやっているんだ。売ろうとして。」と言います。
山中さん「ターゲットがないんですよ。私の場合。」マーケットばかり意識しないってことですよね。その辺りが移籍した理由でもありますからね。
寺島さん「これはターゲットがあるんだ。」
岩浪さん「山中さんの場合は全てがターゲットだ。ないってことは逆に言えばね。」
山中さん「いいような。そうですね。でもそうかもしれない。あんまり、とにかく義務を果たしたっていう。私のアルバム。間に合わせて義務を果たした。」これもよく考えれば問題発言でしょう(笑)。
寺島さん「山中千尋は演奏が終わって爽快感感じたかもしれないけど、この連中は爽快感感じてない。終わってjから。あーいっちょうやったみたいな。」そこまで言っていいんですか(笑)?
山中さん「あーでもやっぱ普通だったら選ばない選曲ですよね。これは。あーはっきり言って、みんな《リカード・ボサノバ》はまず知らない。これはオタクじゃないと。オタクの曲ですね。《リトル・メロネー》もそんなに知らないですし。《チーズ・ケーキ》は割りと知ってます。やっぱり作った人(デクスター・ゴードン)を好きだっていうんで。《ブラック・オルフェ》もそうだけど。でも《リカード・ボサノバ》は、これはやっぱり日本的な感じ。でもこういうのが聴きだって、さっき言ってたから。私はまどわされちゃうな~。何か。」日本のファンが好きな曲は、ミュージシャンの間ではオタクの曲だということらしいですなー(笑)。
寺島さん「いろんな感情が入り混じるんですよね~。」

最後は長澤さんがまたブラインドでピアノ・トリオをかけます。ブラインドといってもピアニストは誰も知らないと思うからという理由ですね。ジェフ・ハミルトンのトリオがかかります。

曲が終わると山中さん「もーっ、すっきりしました。凄くいいですね。」なんて言います。山中さんはジェフ・ハミルトンが凄く好きらしいです。ピアニストの音も演奏も良くて、自然な音の作り方で良いとベタ褒めでした。ジェフ・ハミルトンは人柄も良いそうですよ。ハミルトンは西海岸で活躍していて、こういう「オールド・スクール」なジャスに拘りを持っているなんて言います。この「オールド・スクール」は「オールド流派」という意味らしいですね。私は「スクール」は「学校」という意味だとばかり思っていました。

最後に山中さん「いろいろ聴かせていただいて面白かった。」と言ってます。
寺島さん「また日本に来た時はPCMジャズ喫茶に来てください。」と言ってます。
良かった良かった。

は~~あ、疲れた。おしまい。

|

« 明日は「高野 雲の快楽ジャズ通信」のラジオ放送! | トップページ | 激熱!火傷に注意!コルトレーン入門!「高野雲の快楽ジャズ通信」 »

寺島靖国のPCMジャズ喫茶」カテゴリの記事

コメント

今回の放送で、「ブルースは同じフレーズを何回も繰り返す」という話になったとき、山中千尋さんはそれを「繰り言(くりごと)」と表現されました。

「くりごと」とは言い得て妙!

ブルースの本質をスパッと切って見せたようで、非常に感心しました。山中さんの言語感覚も大したものです。

投稿: まるしお | 2008年11月23日 (日) 12時24分

まるしおさん。こんにちは。

重要なご指摘ありがとうございました。
ご指摘のされ方にも感謝します。
まるしおさんのような方に読んでいただけてうれしいです。
ご指摘に沿って本文を訂正しました。
本件については考えさせられました。
今後、より注意しつつ記事を書くことにします。
どうもありがとうございました。

投稿: いっき | 2008年11月23日 (日) 13時02分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 山中千尋さんゲストの「PCMジャス喫茶」を聴いて(続き2):

« 明日は「高野 雲の快楽ジャズ通信」のラジオ放送! | トップページ | 激熱!火傷に注意!コルトレーン入門!「高野雲の快楽ジャズ通信」 »