雲さんゲストの3回目PCMジャズ喫茶(その1)
PCMジャズ喫茶に雲さんがゲスト出演して今回が3回目です。
寺島さん率いる3人の合計年齢を称した210歳トリオとの対決は如何に?
またまた珍説・奇説が出たのでしょうか?
そうそう雲さんの話へのからみ具合は今回が一番良い感じでした。雲さん曰く3回目なのでだいたい感じがわかったとのこと、さすがです。
ではレポートしましょう。
今回は事前に雲さんの仕掛けがあったので日本人女性ピアニストの話題がメインとなり、ハイファイヴ・クインテットなど寺島さん岩浪さんおすすめの現代ジャズ・クインテットの話が3分の1くらいという感じでした。
このメンバーだとジャズの本質に迫るような話になってしまうためなのか?はたまたあまりお気に召さない選曲の流れになってしまうためなのか?長澤さんは今回自らの選曲では1曲もかけませんでした(笑)。まあ、前回も歴史的名盤の総括みたいな話になったため、長澤さんはかかる曲がお気に召さず、最後にゲストの戸坂純子さんに捧げる曲をかけただけでした(笑)。
話は雲さんの名刺に書かれている「ジャズ、映画評論」から始まります。評論に関する議論に発展していろいろ意見が出ますが、大筋ではもっともな話だと思います。それにしても長澤さんの話はピントが微妙にズレていることが多いです。それをフォローする寺島さんは大変です(笑)。
評論話つながりで川上さとみの『イノセント・アイズ』のライナーノーツをぼろくそにけなしていました。「ビーバップだ、ハードバップだ」とばかり書いているのがダメだそうです。私は読んでないのでなんとも言えません。
上記アルバムから《レジェンド》をかけます。寺島さん曰くバド・パウエルの《クレオパトラの夢》を越えたかというくらいの曲だそうです(笑)。確かにほのかな哀愁のあるマイナーな曲で、演奏は小細工を弄しないなかなか力強いタッチのものでした。そう、皆さんもうわかりましたねっ!寺島さん好みの「曲は哀愁、演奏はガッツ」を体現しています(笑)。
雲さんは「パウエルの《ブルー・パール》を思い浮かべて、青黒い雰囲気が良い演奏だ。」と言います。
ここで寺島さんが「つまりパウエルってのは雰囲気がいいピアニストだと言えませんか?」と振ってきて、
困った雲さんは「川上さんのピアノにパウエルを感じないですよね。」と話に持込み、「ムードは似たものを感じるがスタイルは似ていない。ビバップではなく、彼女は彼女だ。」と言い、岩浪さんの同意も引き出しつつ何とか話を収束へ向かわせます(笑)。
寺島さんはこのアルバムをプッシュしていましたね。なんたって「曲は哀愁、演奏はガッツ」ですから、プッシュしますよ(笑)。その後、川上さとみがこれをやりたかったかどうかとか、プロデューサー論とか、評論の書き方の話になりますが、まあそうだろうと思いながら聴いていました。
次はいよいよ雲さんの選曲。パウエル繋がりで山中千尋の《クレオパトラの夢》です。寺島さんからこの曲を選んだ理由を求められて、大西順子の低音を弾く魅力あたりから始まって山中のスタイルにもある「ピアノの低音の魅力を聴いてほしい。」と言います。
寺島さんが噛み付きます。「ピアノの弾き方の話ばかりで、表出しようとしているソロの旋律にふれてないけど、そういう聴き方の人は20%であとの80%は楽想、旋律的な想いを聴いている。そういうことを言ってもらわないと困る。」と言います。あ~、いつものメロディー論がでたっ!(今日初ツッコミ、笑)
雲さんが「フレーズを聴くと同時に、低音の滑らかなつながりのある気持ちよさも聴いて下さい。」と言います。さて、この2つの聴き所対決と言うことで曲がかかります。
雲さんの聴き所、確かに低音の滑らかなつながりありますね。私はちょっとトリッキーなところがいまいちな感じだなあと思いながら聴いていました。
寺島さんや岩浪さんは「パウエルの演奏がしっかり埋め込まれているから、それをどうやって打破するのか大変な苦労がいる。」と言います。それはわかりますね。
それで、山中さんがこの曲をどうしてやったのかということになり、次回山中さんがゲストに来るので聴いてみるとのことです。楽しみですね~。
寺島さんは、「たぶん本人がやりたくてやったと思いますよ。あの人はね、会社がやれっていってもハイわかりましたとやる人じゃないですよ。」と言って、「ドンッ!」と机を叩きます。なんか山中さんに対して思うところがあるみたいです(笑)。
寺島さんから「どうですかこれ、キーが違っていませんか?パウエルと。パウエルのほうが高いんじゃない?」と、なかなか興味深い発言が出ます。オ~、だてにトロンボーンを習っていませんね~(笑)。
雲さんがすかさず「違います。半音階くらい下げていると思います。」と返します。
寺島さんは「だからダメなんだよね。この曲はあのキーで初めて雰囲気がでるんじゃないかな。」と、
長澤さんが「ちょっとくらいですよね。」と言います。ウン皆さん、確かにそのとおりですね~。
雲さんが「フレーズの話がありませんね。」と質問します。
寺島さん「フレーズっていうんじゃなかったね。フレーズを意に介さない演奏に聴こえた。」と答えます。
雲さんは「インパクトがありませんでした?フレーズじゃなくて音色みたいな。スマートにカッコイイ現代風に処理されているなあって。」と言います。
2人の話は、「パウエルは旋律が湧き出てくるのをどうコントロールするかみたいなところがあるけど、今のは演奏の終着点へ向けての設計図がある。そこが作為的だけど、パウエルには作為性がなく天然だからイイ。」という結論になります。確かにそのとおりです。
寺島さんはこのCDを持っているけれど、この曲は初めて聴いたらしいです。山中千尋さんがクレオパトラと言うことで聴きたくない先入観があるらしいです(笑)。あ~あっ!
次ももう1曲雲さんがかけます。上原ひろみの『ビヨンド・ザ・スタンダード』から《キャラバン》です。210歳トリオは聴いたことがないだろうと言うことで挑発です(笑)。ところが岩浪さんはライヴを聴いて気に入ったそうなんです。
寺島さんから「なぜこの曲を選んだのか意図を言って下さいよ。」なんて言われて、
雲さんが「ギターを入れたバンド・サウンドを聴いてほしい。」という説明をしていると、
寺島さんが「なんでギターを入れるの?」なんて質問して、
雲さんが「上原がテクニカルなプログレッシブ・ロック志向で、それにギターはロックにつきものだから。」なんて答えると、
寺島さんは「だんだん聴くのが嫌になってきた。」と言い、
雲さんは「寺島さんの嫌がる顔が見てみたい。」と言います。いいですね。雲さんの企み(笑)。
寺島さんが「テクニカルという面は我々ジャズ・ファンが嫌う側面なんですよ。」と言ったか言わないかで編集カット。ジャス・ファンを決め付けてます。いつものことですが(笑)。
曲がかかります。私は上原ひろみを全面的に支持していますから、途中のラテンアレンジへのチェンジ、デヴィッド・フュージンスキーの変態ギター・サウンドも含め好きです。
このCDに対する私のレビューはhttp://ikki-ikki.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_b8fd.html を参照して下さい。
寺島さん「苦痛の8分何秒かでしたね。ほんとに疲れたね。あんまり聴いていなかったけど。」と、期待どおりのリアクションです(笑)。
ここで岩浪さんから「これは『ビヨンド・ザ・スタンダード』でしょう。どういうことかというと、今までのバップというのはコード進行の展開とそこから新しいメロディーを引き出して演奏するが、彼女は違う。つまりもとの旋律を消さないんですよ。その旋律を生かして新しいサウンドを作っていく。新しいやり方、僕は最高に評価しています。」と、非常に興味深い発言があります。お~イイこと言いますね。言われてみれば確かにそうなんですよ。
寺島さんは「わかりましたよ。もっとわかりやすく説明してよ。」と言うので、岩浪さんがもう一度同じことを繰り返します(笑)。
長澤さんが「具体的に何か・・・」と、
岩浪さん「今聴いたじゃない。」とすかさず返します。やっぱり長澤さんは聴き所がわかっていません(涙)。
雲さんが「でもある意味それって先祖がえりってことですか?レスター・ヤングとかテーマティカル・インプロビゼーションとか難しい言葉で言いますけど、原曲を全く変えないで、ニュアンスを残しつつ・・・」これも鋭いツッコミです。
岩浪さんは「ただ彼女の場合はその、今のギターみたいにロックとかなんとかのサウンドとかそういうのもぶち込んだわけですよね。だから今の若い人が飛びつくようなサウンドになってるよね。」 このサウンドアプローチの話って重要ですよ。つまり、こういう聴き所がわかっていないと結局良さがわからないんです。
寺島さんが「わかりました。御託はわかりましたけど、つまり聴いてどういう印象を受けたのか?気持ちよかったのか?気持ち悪かったのか?そのへんもうちょっと話が聞きたいですね。」 またいつもの気持ち良い悪いですか?
ここで雲さんが「寺島さんのご意見、まず聞きたいんですけど、寺島さんの感想を聞きたいから、今日これをもってきたんですけど。」ときりかえします。いいぞ雲さん!
寺島さんは「なるほど、僕はねギターね、こうやって聴いてみるとね、あの弾き方には意図的なものがあって、賛否両論あるかもしれないけど、僕はね。上原ひろみよりね。よっぽど人間を感じましたよ。」と言います。それ一理ありますね。上原の表現の限界を広げるのに、ギターが一役買っているのも、その辺が理由なのかもと思います。
雲さん「それ聞けて良かったです。ギター、寺島さんが嫌って言うかもしれないと思っていたんですけど、ギターを聴いてほしいからこれかけたんですね。」と、
すると寺島さん「いやっ、ギターを僕はほめているわけじゃなくて、ピアノに比べればね、ピアノがそれほどヒューマンじゃないってことを言っているわけですよ。」と言い訳します。まっいいでしょう!(笑)
寺島さん続けて「どうしてこういうピアノが好まれているのか?わからねーな。世の中。」ですって(笑)。
岩浪さん「前にも僕何かに書いたことがあるけど、上原ひろみや松永貴志、ああいうのはゲーム感覚なんですよ。だからピアノも遊びの機械と思って遊んでるんですよ。受取るほうがね大袈裟な音楽だなんだなんて、人間性がどうの言ってない、だからゲームなんですよ。」と言い、皆も頷いています。私もゲーム感覚というのを認めますが、上原にはそれだけではなく、内から湧いてくる表現したい何かも感じられます。
長澤さんがパトリシア・バーバーを例にとって、「ギターが入ると幻想的になるんですよね。雰囲気が。ピアノ・トリオだけでは端正になっちゃう。」と言います。これは私が言っているギターを入れて表現の幅を広げているに通じます。
岩浪さん「だから今の演奏はすばらしいとなるわけね。」と冷やかします。
寺島さん「そうじゃないと。(長澤さんは)最後まで聞かないとよくわからない。で、ある場合にはこっちで要点を加えないと、と言うところが長澤さん。」と、一同爆笑です。
寺島さん「まあしかし、これだけやっぱり物議をいろいろ、意見百出させる上原ひろみはたいしたもんですよ。ね。」とまとめておいて、これと対照的なと言いつつ、寺村容子に持っていきます。
この後、寺村容子のピアノを巡っていろいろ議論するわけですが、山中千尋と上原ひろみなんかの「スピード感、疾走感」やアキコグレースと安井さち子の上手い流暢なピアノに対する、寺村容子の「間」と松本茜の「ためらい」の対比の話、アキコグレースと安井さち子の「ツルッ」とした感じと寺村容子の「ザクッ」とした感じの対比の話とかになりますが、私は全員を聴いたことがあるわけではないので、「なるほどねっ」という感じで聞いていました。
議論は凄く盛り上がっていましたが、私が面白いコメントを付けられないので、上記の部分は極簡単にまとめさせていただきました(笑)。ご容赦下さい。
そうそう雲さんが寺島レコードの音作りの話に振った中で、ジャス喫茶「いーぐる」のオーディオの話題になり、寺島さんが「あそこはJBLの4343使って、オンキョーかなんかの安手のアンプ使って、ザックとした音でるの?」とか言ってますが、大きな誤解があります。
「いーぐる」のスピーカーはJBLの4344MKⅡですが、プリアンプはアキュフェーズC-280V、メインアンプはマークレヴィンソン23.5Lというハイエンドを使っています。安っぽいオンキョーのアンプなんか使っていません。そうでなければあの音は出ませんよ。
ここまで前半の1時間なのですが、またしてもこんなに長いレポートになっちゃいました。
もうこんなことするのはやめようと思っていたのに、書き出したらこのありさまです。あ~あ、疲れた。これを書くのに4時間くらいかかってます。自分のアホさ下限に呆れかえっています(笑)。
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コメント
いっきさん
4時間もかかったんですね!!
す、すごい、放送時間の2倍だぁ(笑)!!
お疲れさまでした。
ていうか、昨日の放送だったんですね。
すっかり忘れてました……。
昨日も松本茜がPCMで流れて、
本日夜も松本茜がPCMで流れるというわけですね。
いいことだ(笑)。
今回は、わりと寺島さんとの距離感がつかめた収録だったと思います。
だから、いっきさんのレポートを「あ、そいういば、あんなこといったっけ、こんなこといったっけ」と思いながら懐かしく読みました。
しかし、文字に起こされたものを読むと新鮮ですね。
寺島さんと私はイジワル爺さんな感じで、
岩浪さんは、やっぱりオトナですねぇ~(笑)
投稿: 雲 | 2008年10月19日 (日) 05時12分
いっきさん、おはようございます。
いっきさんの「PCMジャズ喫茶」レポート、オイラは好きだよ。きっと放送より真意が分かりやすいと思います(笑)。あと補足も的を得ていてスバラシイ〜。
こういうのは時々やるくらいでいいのでは?4時間も考えて書くのは疲れますからね(笑)。
でも、確実に書く能力がアップすることは確かです。トレーニングのためにも自然でいいと思います。最近みんなやらなくなっているので、いっきさんの行為は称賛に値すると思っています。
いっきさんのレポートを読むと、実際の放送よりも偏屈じーさんたちが可愛く見えるのはオイラだけでしょうか?(笑)。いっきさんは寺島さんのイメージをいい感じにしていると思います。
投稿: tommy | 2008年10月19日 (日) 07時32分
こんにちは。
雲さんのブログで私のブログを紹介していただき、ありがとうございます。
うれしいし何より励みになります。
私も昨日の放送だとは思っていませんでした。
だから聴いて驚いたんですよ。
今回はトークが凄く盛り上がっていまいしたね。
内容もジャズ度が濃くて面白かったです。
時々は雲さんがゲストに行ってほしいなあ~。
寺島さんにはそこのところをわかってもらいたいです。
松本茜さんが2日続けて紹介されることになったのも何かの縁でしょう。
きちゃう前兆なのかもしれませんね。
松本茜さんの部分も追ってレポートしますのでお楽しみに!
寺島さんに対抗するイジワル爺さんキャラは必要だと思います(笑)。
岩浪さんはオトナですけどインパクトが弱いですからね。
tommyさん。ありがとうございます。
コルトレーンを4時間続けて聴けないのに、ブログを4時間かけて書く私は相当なアホです。
一度嵌るととことんやってしまう病が時々発病します(笑)。
トレーニングになっているのかなあ?ウン、なってますよね!
多分私が、偏屈じーさん達をカワイイと思って書いているから、そう感じられるんじゃないかと思います。
私は3人とも憎めないキャラで好きです。
投稿: いっき | 2008年10月19日 (日) 16時51分
4時間のレポート、御苦労さんです。楽しく読ませて貰いました。
私は、今回の放送で見事だなと思ったのは、最後の最後に高野雲さんの息子さんの声が入ったところです。
寺島「退屈した?」
息子さん「ぜんぜん」
放送でさんざん話題になったパウエルの例のジャケット(子供が映っている)と呼応するようで、粋な計らいだと感服しました。
投稿: まるしお | 2008年10月19日 (日) 22時28分
まるしおさん。こんばんは。
お読みいただきありがとうございます。
このレポートは前半1時間分でして、残り1時間分は後日UPしようと思っています。
この後の部分にこそ、私は問題あり(大袈裟)と思っているのです。
そうですね。最後の部分に雲さんの息子さんの声が入っていましたね。
確かに、あれを最後に残していたところ、パウエルの『ザ・シーン・チェンジズ』にひっかけている感じがしますね。
それに気付くまるしおさんもさすがだと思います。
私はそこまで考えが及びませんでした。
投稿: いっき | 2008年10月19日 (日) 23時36分
まるしおさん
こんにちは。
「退屈した?」
「ぜんぜん」
そ、そんな会話がはいっていたんですか?!
びっくりです。
これは、きっとディレクターの太田さんの粋なはからいでしょうね。
さすが太田さん!
収録したあとは最低2回は聴いて編集するとおっしゃっていましたから、2時間という長尺番組の中、流れやメリハリをつけようと工夫をされているんでしょうね。
私は同録聞いていないのですが、聴きたくなってきました。
貴重なレポートありがとうございます!
tommyさん
>きっと放送より真意が分かりやすいと思います(笑)。あと補足も的を得ていてスバラシイ〜。
>いっきさんは寺島さんのイメージをいい感じにしていると思います。
まったく同感です。
投稿: 雲 | 2008年10月20日 (月) 12時01分