「PCMジャズ喫茶」を聴いて(その5)
とうとう(その5)になってしまいました。「PCMジャス喫茶」をネタにこんなに遊んじゃっていいんでしょうか?
当のご本人達はその場の勢いでしゃべっちゃっているところがあるでしょうから、文字化してしまうとご本人が思っていることとニュアンスが異なってしまう場合があると思います。それから、私のツッコミによって思想誘導されてしまうところもあるでしょうが、あんまりシリアスに受取らないでくださいねっ。遊び心を持って書いているつもりなのでよろしくお願いします。
じゃあ始めましょうか。雲さんが持ってきたパーカーのストリーヴィルのライブから《ムース・ザ・ムーチェ》をかけます。それを聴いて今まで言いたい放題してきたことをもう一度検証しようというわけです。さてどうなりますか?
寺島さん
「長澤さんの発言でなかなか面白いと思うのは、パーカーに人生が感じられない。僕もそれはなんとなくわかる」 これは前に皆さん共感していました。
岩浪さん
「僕は逆に人生かんじて」 あれちょっと言っていることが変わっているような?
寺島さん
「それは背景とかいろんなものを総動員して聴くからじゃないですか?」 そうではないことが後のほうでわかります。
岩浪さん
「音とかそういうものが人間臭くて」 後で岩浪さんが言いますがフレーズとかにユーモアのセンスをみているのです。
寺島さん
「ああそうか、人間臭く感じるか感じないか2つにわかれるんだね」 単なる歩調合せ発言なので無視
長澤さん
「チャーリー・パーカー聴いたことがない人が聴いたらね、これシンセサイザーがやっているんじゃないかと思いますよ」 爆笑迷言!
寺島さん
「機械がやっていると、あまりに上手いと」
長澤さん
{あまりに上手すぎて、間違えないし、テンポが最初から最後まで一定でね。機械的じゃないですか?」 岩浪さんが言っていた「上手い」の受け売りに聞こえます。テンポが一定だから機械的って、それは短絡的に過ぎます(笑)。
寺島さん
「機械が的というふうにもとれるね。だからパーカーが好きな人もいて嫌いな人もいるっていいうのが、それだけ違う世界を両面持っているということですよね。どう雲さん」 機械的ととりますかね~。優れた人間がやっているように聴こえますよ。例えれば、無駄のない動きの陸上選手や水泳選手を見ているような感じかなっ。
雲さん
「僕は岩浪さんとは逆なんですけど、全く人生感じないところが好きなんですよね。ゼロ地点の音楽なんですよ」 ”ゼロ地点”ここが重要!私は全く同感です!
寺島さん
「屁理屈なんだよ。あなたがたの得意とする屁理屈なんだよ」 言われちゃっいました(笑)。
雲さん
「全く余剰物を感じないじゃないですか?」 まさに”ゼロ地点”
寺島さん
「感じさせないからイイなんて、一見人を驚かすようねことを言って、それは四谷一派の論法なんだ」 私は四谷派に対する寺島さんの偏見だと思います。
雲さん
「さっきのトニー・スコットなんか人生感じるみたいな話になったでしょ。あとマクリーンも感じるじゃないですか。何か必ず余剰物みたいなのが付いて回るのが普通のジャズ・マンの常だと思うんですけど」 そう思いませんか寺島さん?
寺島さん
「余剰物って何」 分かっているくせに、いじわる!
雲さん
「つまり、人生の重みとか失恋の経験とか悲しみとかそういうことですよね」 そうそう。
岩浪さん
「雑念みたいなものね」 岩浪さんはわかってくれています。
雲さん
「だからそういうものをパーカーの音に感じないんですよね。だからイイ。これくらいクールなのってない」 クールでカッコイイ!
長澤さん
「完璧すぎて音に隙間がないから、つまんないですよ」 素直さが足りないんじゃないでしょうか? 聴く側の勝手な偏見ではないかと?
寺島さん
「まあね、もう一つ僕感じたのがね。パーカー以降のアルト・サックス奏者が出すフレーズを全部今やってたね。だから皆これを聴いて素晴しいと思って、そして育ってきたのがわかりますよ」 さすがは寺島さんちゃんと聴いているじゃないですか(笑)
岩浪さん
「すごくパーカーって、いろんなポップスのフレーズを例えば《ボタンとリボン》の一節、そういうユーモアのセンスがあるし、例えばクリスマス・セッションでは《ホワイト・クリスマス》を入れて演奏したりとか、だからすごい人間的ですよ」 これが人間臭い理由ですね。
寺島さん
「まあね、俺はね雲さんのねクールなね、人生感じなくてイイってのはね、じゅあなんでマクリーン聴くんだよってなるわけで」 違う魅力があるんですよ。
雲さん
「マクリーンはマクリーンの良さがある。うどんとそばを比較してもしょうがないでしょってことになる」 どうも寺島さんは一つの偏った考え方に引き込んで聴きますよね。どうして両方を認めないのでしょうか?
長澤さん
「ジャズって元々ね、もっと泥臭くてなんか隙間だらけのものだと思っていると、こういうふうに隙間なく完璧にやられちゃうとね。聴いていてリラックスできない」 ジャズの本質を見誤っています。リラックスして聴くだけがジャズではありません。
寺島さん
「それはわかります。ジャズはもっと不完全な音楽でいいんです」 パーカーは最初から完全な音楽をやっちゃったんですよ。マイルスなんかはパーカーと共演した時点でパーカーを越えられないことを知って、その後手を変え品を変えの悪戦苦闘をするんですよ。
岩浪さん
「でもパーカーってカンザスの田舎から出てきて、泥臭いですよある面では。例えばさっきかけた『スエディッシュ・シュナップス』の中の《K.C.ブルース》」 パーカーだって泥臭いところはあるのです。長澤さんは自分の狭い見方で見ているので、こういうことが見えないのです。
寺島さん
「泥臭いと感じさせれば感じさせるし、都会的だと思えば都会的だと感じさせるし、いろんな面持っているというのは、一つの才能かもしれないね。まあね、岩浪さんが言っていたけどいろんなものを聴いて最後にパーカーにいきつくと、こんなにジャズって素晴しい音楽だってわかってイイっていってましたよね」 曲によって当然音楽の感じは変わるもので、ある意味余剰物をはさまないから曲が持つイメージにそった演奏になるのではないかと思います。パーカーがイイというのは寺島さんもわかっているのです。
岩浪さん
「僕はそれでいろんなもの聴いて、ジャズが一瞬飽きちゃったときに、パーカー聴くとまたジャズの良さを思い出して、またいろんなジャズを聴こうとなる」 良いこといいますね。
寺島さん
「じゃあそのパーカーは最後の人であると」 モダン・ジャスはやっぱりパーカーに尽きるのです。
岩浪さん
「最初で最後ね」 色々言っても結局はそういうことになっちゃうんですよね。
寺島さん
「最初にこれを聴いてわかった人は一種の天才であると思いますよ」 寺島さんはパーカーが分かるのに凄く時間がかかっていますからね~。そう言っちゃいますか?
岩浪さん
「渡辺貞夫さんは『ウィズ・ストリングス』の《サマー・タイム》を聴いて、アルト・サックスを吹こうと思った」 なるほど。
寺島さん
「いやいやいや貞夫さんだけじゃなくて、僕だってね、あの《サマー・タイム》はね絶品ですよ。ヘロヘロ・パーカー(どうやらアドリブを吹くことを言っているようです)とは全然違う世界を持ってる。あれは壮絶ですよ。人生のね最も重みを表出しているよね。アドリブやってないんですよ。テーマーを4回くらい繰り返すだけですよ。だからパーカーはアドリブだインプロビゼーションだ、アドリブ吹かなくて曲だけでいいんですよ」 これはパーカーの音のたたずまいの凄さのことを言っています。それに加えてシンプルにして明快なアドリブをするところがパーカーの魅力なのです。私はここにジャズの本質を見ます。
やっと終わりです。
もうまとめるのが面倒なので、私の各”ツッコミ”を読んでご判断下さい。
昨日は寺島さんの言うことが長澤さんのようなジャズ・ファンを作ったとか書いて、今日細かく説明するなんて書きましたが、なんかどうでもよくなっちゃたのでもう書きません。気を持たせておいてごめんなさい。
この後、パーカーの後じゃかけにくいと言いつつ長澤さんが、元気の出るピアノ・トリオということでジョン・ステッチのアルバムから《サーカス》をかけます。
寺島さん激賞の人のので、「ジョン・ステッチはパーカーと対極にある人。パーカーのように表面でヘロヘロ・ハラハラ演奏しない。気持ちの底で弾くコアなピアニスト。重さがズーンと伝わってきますよ。音も良いんですよ」なんて言っています。もう何を言おうがどうでもいい感じです(笑)。私も好きなピアニストです。でも言うまでありませんがパウエルほどの凄味はありません。
かけたあとに寺島さんが「長澤さんは俺はいつも優しいものわかりのいいピアノ・トリオを聴いているわけじゃない。たまにこう重厚かつ難しいものを聴ているんだぞと出したと思う」と言い、長澤さんは「いつも好きで聴いているやつを持ってきた」と言いつつ、寺島さんに褒められてうれしそうです。
曲がかかっている間に「自分にとってジャズは音である。音がジャスである。音が音楽である。ていうひとつの居直りというか思い込みは素晴しいと思いますよ。そういう聴き方があっていい。そういう聴き方して得な面もある」と長澤さんと話していたそうです。長澤さんも「オーディオ人間ですから」と言っています。長澤さんはそれでいいんじゃないでしょうか。
このあと昔のポピュラー・ミュージックをかけるのですが、それはどうでもいいので「PCMジャス喫茶」レポートはこれで終わります。
いや~やっと終わったあ!ここまでやるとはアホなやつですね。我ながら呆れます。
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コメント
いっきさん、おつかれ様でした!(笑)
こう文字になったものを読み返してみると、岩浪さんもじつは、最初といっていることが違っちゃったりしてるんですね(苦笑)。
また、逆に、寺島さんは、パーカーの良さをちゃーんと掴んでいらっしゃる。それなのに……、要は、
「ヘソ曲がりなんですよ」
(↑寺島さんと長澤さんがトイレに立っている間に太田プロデューサーがボソッと呟いた言葉です)
評価されているものは素直に認めたくない心境、これは今までの放送聴いていれば、しょっちゅう「神格化」という言葉が出てくることからも分かると思います。
よく言えば、反骨精神、
悪く言えば、お子ちゃま?(笑)
投稿: 雲 | 2008年8月29日 (金) 05時25分
雲さん。こんばんは。
自分でもなんでここまで文字化しなきゃならなかったのかよくわかりません(笑)。一度やりだすととことんやらないと気が済まないところがあるため、結局パーカー議論は全部やっちゃいました。
まあ、でも一度文字化したものを読みながら、ツッコミを入れていったら、寺島さん、岩浪さん、長澤さんのジャズ感がよく見えてきました。
寺島さんについては雲さんの言うとおりだと思います。ジャズ初心者やジャズ・オーディオの人にとっては危険で魅惑的な存在だと思います(笑)。
それにしても雲さん効果によってパウエルとパーカーが議論され、3人のジャス感が晒されることになっちゃったんだから面白いですよね。
投稿: いっき | 2008年8月29日 (金) 20時09分
ですよね(笑)。
特に、2回目は、岩浪さんが、私に気を遣っていただき、「パウエルが好きなら、パーカーはどう思う?」と、番組内で、私の発言しやすいスペースを設けていただいたことが、とても嬉しかったです。
ホント、気遣いの方だなぁ、と思いました。
今月のジャズ批評でも、寺島レコードの新譜を、キチンと褒めているし(笑)。
投稿: 雲 | 2008年8月29日 (金) 20時13分
早速コメントいただいきましてどうもです(笑)。
岩浪さんが業界から愛されるのは、その気遣いとおごらない人柄(放送を聴いての印象)によるのではないかと思いました。貴重なジャズ批評家ですよね。頑張ってもらいたいです。
ジャズ批評の今月号。後藤×益子対談⇒菊地成孔インタヴュー⇒寺島コラム(小張さんにケンカ)っていう流れには笑いました。最近身近に起こっている話題が満載ですよね。なんか狭い(笑)。
投稿: いっき | 2008年8月29日 (金) 20時38分
たしかに(笑)。
なんか、すごく身近な気がしないでもないです(笑)。
そのうち、tommyさんや、私もいつのまにか流れに乗っかっていたりしてね(笑)。
そういえば、後藤さん・益子さん対談の後の
菊地成孔インタビューには、けっこうページが費やされてましたね。
「(今回のアルバムは)ハード・コアであり、ポスト・モダンのジャズをやるっていうひとつの異色作であると同時に、古典作でもあると思っているんですよ」
とか、
「(中略)ネットにはまりこんだりしないし。日本人がはまりやすいことに、僕はほとんどやんないんですよ」
などなど、興味深い発言が満載でした(笑)。
投稿: 雲 | 2008年8月29日 (金) 20時50分
オイラ、それ読みたい(笑)。自分をどう見せたいのかな?人間って不思議な生き物です。
「言葉で思考する人たち」と「画像(映像)で思考する人たち」がいるとしたら、オイラは明らかに後者。・・・雲さんも後者だね。いっきさんは真ん中へんかな?(笑)。
投稿: tommy | 2008年8月29日 (金) 22時40分
tommyさん
それ、編集ルームのテーブルに置いてありますよ(笑)。
私はどうだろ、カタチで考えているかもしれません。
投稿: 雲 | 2008年8月29日 (金) 23時05分
tommyさん。こんばんは。
今NHKニュースで見たんですが、渋谷は凄い雨が降ってますね。山梨は今は降っていません。
今月のジャズ批評は必読ですよ。例の後藤さん&益子さんと菊地さんのポスト・モダンの違いがはっきりわかります(笑)。菊地さんのインタヴューはほとんど新作の宣伝で、その中に雲さんが指摘している?な発言があります。
私は言葉で思考する方が多いと思います。
ところでtommyさん。ジャズ批評の「Blog Walking」に掲載してもらうというのはいかがですか?宣伝効果はあると思います。
投稿: いっき | 2008年8月29日 (金) 23時10分