「いーぐる」の新譜特集レポート(後編リターンズ)
レポートがヴァージョン・アップ?して戻ってきました。もう戻ってきたんかい!(笑)
新譜特集に来たお客さんを見渡してみると私を含めオジサンばかり、途中から1人若い人がきたけれど、私としてはもう少し多くの若い人に聴いてほしいんですよね~。
さあ、レポート後編です。後半は「エスニック」というキーワードのもと数曲が紹介されました。この紹介の仕方は新しいですね。今までもエスニック系はありましたが、今回のようにまとめて紹介はしませんでした。私も購入した新譜を聴いてエスニック色を出したものが結構あるなあと思っていました。
⑧ Paul Motian Trio 2000+Two『Live at the Village Vanguard,Vol.Ⅱ』から「If You Could See Me Now」
ポール・モチアンのバンドは現在要注目のバンドです。これについてちょっと。 村井康司さん著「ジャズ喫茶に花束を」(2002年初版)で大阪梅田の「ムルソー」が紹介されています。お店の推薦アルバム30枚の中にモチアンの『サウンド・オブ・ラブ』があり、マスター東司丘さんがこんな推薦文を書いています。「90年代「ジャズの帝王」を選ぶと、案外モチアンあたりに落着くのではないか。・・・」コレって鋭いですよね。本文のほうにも「新しいジャズ」や「21世紀のジャス」なんて言葉が出てきて興味深いことを言っています。同じような事を考えている人が西にもいるんですね~。しかもこのマスタは中山康樹さんとお友達だとか、ますます興味深いです。
⑨ Hank Roberts『Gureen』から「The Departing Hunter's Song ・・・」
ハンク・ロバーツ(cello,vo)、マルク・デュクレ(el-g,ac-g)、ジム・ブラック(ds)のトリオによるエスニック系の演奏です。危険なメンバーですよ。コレ!ロバーツのヴォーカルがなんかイイ味だしているんですよ。最初いかにもエスニックって感じでロバーツが歌を歌っているんですが、メンバーがやりたい放題やりだして、最後はかなり凶暴化しています。オモロー!これはチェックしていたのですが、楽器編成から買うのを躊躇していました。買いかなっ。
⑩ John Ellis & Double-Wide『Dance Like There's No Tomorrow』から「All Up in the Aisles」
テナー、オルガン、スーザフォン(ベースのかわり)、ドラムによるトラッドのような演奏です。ちょっと色物っぽいかな?私はちょっとダメです。オルガンのゲイリー・ヴェルサーチの話が出て、原田さんはこの人の今後の動向に注目しているとのこと。期待のオルガン奏者ですね。
⑪ Guillermo Klein Los Guachos『Filros』から「Va Roman」
リーダーのギレルモ・クラインはアルゼンチン出身だとか、そっち系のエスニック・サウンドです。11人編成のバンドで、クリス・チークのバリトン・サックスとミゲル・セノーンのアルト・サックスが熱くてイイソロをとっています。ブラスの響きが心地良いです。益子さんが「哀愁漂い、温度が高い感じが良い」と言っていました。ガトー・バルビエリの感じといったら分かってもらえるでしょうか? うん、これはイイ!買いです。 そうそうミゲル・セノーンは背が低くてオーバー・アクションで演奏するとか、楽しい裏話が聞けましたよ。
⑫ Dafnis Prieto Sextet『Taking the Soul for a Walk』から「The Sooner The Better」
これもエスニック系ということで、メンバーにはトランペットのアビシャイ・コーエンが入っていて、ダフニス・プリエトはドラマーです。これは私がブログで紹介したオマー・アヴィタルの『ザ・アンシェント・アート・オブ・ギビング』と同じ感じの演奏です。こちらにもアヴィシャイが入っていました。これは特にほしくはないな~。
⑬ Fieldwork(グループ名)『Door』から「Of」
スティーヴ・リーマン(as)、ヴィジェイ・アイヤ(p)、タイション・ソーリー(ds)のトリオ。ハード・コアものとして紹介。抽象度が高い難解な演奏です。原田さんによるとライヴで見たドラムのソーリーが凄いんだとか、「太くて、この人の呼吸で周りの空気が薄くなり、難解なリズムを叩くんで、クラクラして、最後には気持ちよくなる。」とか、皆さん大爆笑です。原田さん面白すぎです。 私はこれはちょっと勘弁してほしいです。でもこういうハードコアものが好きな人には答えられない演奏だと思います。
⑭ Open Loose(グループ名)『Strange Unison』から「Sonic Rights」 これは前の特集でも一度かけたものです。トニー・マラビー(ts)、マーク・アライアス(b)、トム・レイニー(ds)のトリオ演奏です。メロディーもリズムもちゃんとある比較的オーソドックスな演奏をしています。これは前の特集で聴いた時には日本未販売だったのですが、最近発売されたので早速購入しました。
全編比較的聴きやすいと思うので、注目の新世代テナー奏者トニー・マラビーの入門盤としてオススメしたいです。ジャケ写真の一番左がトム・レイニーなんですが、私はもっと若い人だとばかり思っていました。オジサンだったんですね(笑)。
この3人、バリバリやるというよりも繊細なインター・プレーによる演奏を展開していて、なかなか味があります。私はサックス・トリオとしてはかなり好きな部類の演奏ですね。ソニー・ロリンズのヴィレジ・ヴァンガードを聴いたあとに、このアルバムを聴いたとしても「やっぱダメだ~」と決め付けずに、この現代性を聴きとってほしいです。
以上14曲で特集終了。それから途中で、かけなかったけれど面白いアルバムも何枚か紹介しています。
どれも聴き流せるものはないので、真剣に聴くとかなり疲労感はあります。とにかく内容が濃い! いやっ~もうおなかいっぱいですよ。益子さん!ごちそうさまでした(笑)。
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