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上原ひろみ

上原ひろみは2作目『ブレイン』から聴いているのですが、これまで今一良さがわかりませんでした。それが前作『タイム・コントロール』を聴いたあたりから「うん、これは・・・」みたいな感じになり、最近やっと良さがわかって楽しめるようになった気がするのです。

別に演奏のテクニックがどうとかリズムがどうとかメロディーがどうとか言うのではなく、狙いが見えてきたのです。それは何かと言うと、上原の中には何か表現したい強い想いがあって、それを演奏に色濃く出しているようだということです。その思いに少し翳りがあり、現代の社会情勢に抱く不安を反映しているようで興味深いです。

私が今まで上原をなんとなくダメだと思ったのは、思いが強く出た音楽を好まなかったからのようで、簡単に言うと「うざい」感じ(笑)がしていました。それが別のところで聴いた新しいタイプのジャズにも似たようなタイプのものがあり、そういうものを多く聴くうちに自分の感覚が慣れて、最近楽しめるようになったようです。

P54 そこで今回の新作『ビヨンド・スタンダード』(2008年,TELARC)、今回もプロデュースは上原とマイケル・ビショップです。マイケル・ビショップは録音エンジニアということもあるので、音楽に関しては上原が主体でやっているものと思われ、そう考えるとたいしたものです。

メンバーは、ヒロミズ・ソニックブルーム:上原ひろみ(p,key)、デビッド・フュージンスキー(g)、トニー・グレイ(b)、マーティン・ヴァリホラ(ds)です。前作と同メンバーですね。グループとしてのまとまりはかなりのものに達していると思います。

このグループはあくまで上原がリーダーで、フュージンスキーも上原の音楽を表現する一メンバーだと思います。ただしフュージンスキーが入ってからは、トリオの時に飽和しかかっていた表現の幅が広がったのが良いと思います。

今回は皆が知っている曲を主体に演奏しているので、前作より聴きやすくなっていると思いますがあくまで上原サウンドです。この若さで上原サウンドと呼べるものを作ってしまったところには才能を感じます。ピアノはハービー・ハンコックやチック・コリアからの影響が見られますがそんなことはしょうがないでしょう。

各曲のアレンジは上原流で私は結構好きですね。「キャラバン」の途中でラテンが入るところなんかの手際はスマートですよね。あれ、ドラム・ソロの後はスティーブ・ガットしてませんか(笑)? 「レッド・ブーツ」は文句なくカッコイイ!私好きです。最近この手の硬派フージョンが少ないですよね。

最後の「アイブ・ゴット・リズム」はこれだけとってつけたような感じですが、上原が亡くなったオスカー・ピーターソンに捧げたということなので「あり」としましょう。テクニックは凄いですね。これだけ速弾きして一音一音の粒立ちが確保されているのはピーターソン並みか?

最後にボーナス・トラック。私はあんまり歓迎しないのですが今回は◎。何が◎かと言うとその録音ですね。まるでコンサート会場の客席にいて聴いているかのような音で録れています。客席の場所はというと、そうライブ・レコーディングの時にミキシング・コンソールが置かれている中央の辺り。レコーディング・エンジニアになった気分です。さすがのテラーク録音!ただし大きめの音で聴いて下さいね。

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コメント

いっきさん。こんにちは。
ホント、いっきさんはいろいろ聴いていますね〜。オイラはそこまで広くは聴けていないです。聴くと好きになるかも?
でも、オイラの前には何人ものジャズの巨人が立ちはだかって、「そんなの聴くより、もっとオレ達のジャズを聴け!理解しろ!時間が限られているぞ」とささやくんですよ。ついつい、オイラも「そうかな〜」って思っちゃって・・・(笑)。
・・・気分は骨董品屋みたいなものですね。
ジャズもそうですが、オーディオも骨董品屋です。新しいものを聴くって勇気要ります。なんちゃってジャズが多いですからね(笑)。骨董品屋さんの方が安全で楽なんですよ。(笑)

昨日、ハード・ディスクを買いに秋葉原に1〜2時頃行った。
事件の場所は通らなかったけど・・・今日でなくて良かった。
時々、渋谷のスクランブル交差点でも同じような事が起こる気がしている・・・何処にいても安全じゃないな。

投稿: tommy | 2008年6月 8日 (日) 18時49分

tommyさん。こんばんは。

新しいジャスも聴いてあげないと、ジャズそのものがダメになりそうだと勝手に思い込んでいるので、新しいジャスも聴くようにしています。とは言いながら本音は単なる新し物好き(笑)。
デジタルアンプお試し企画みたいに、新しいジャズもたまにはいかがですか? だめならユニオンへ売り払うということで(笑)。
ジャスの巨人を極める聴き方も好きですよ。まあ私は広く浅くになっちゃってますから実践できていませんが・・・。

秋葉原の事件、凄くビックリしました。私も時々通っていたところだけに、人事とは思えないです。tommyさん、今日行かなくて本当に良かったですね。最近物騒な事件が多くて怖いですよ。

投稿: いっき | 2008年6月 8日 (日) 21時41分

いっきさん。
オイラも新しもの好きなんですが、自分の日常が180度くらい変わってしまうくらいの「新しい」でないとナットクできない。だからジャズの新しいのより、音楽全体に革新的な新しいのがいいな〜。「ジャズ聴くのやめよ〜」って思うくらい、強烈なのがいい。はっはは、ないね〜。
オーディオは元々は真空管アンプファンじゃなく、JBL+サンスイのトランジスタアンプ好きが基本になっているので、今は堕落しているだけですから、黒モグラは許容範囲なんですよ(笑)。

投稿: tommy | 2008年6月 8日 (日) 23時11分

tommyさん。
さすがはアバンギャルドなtommyさん、求めるものが違う(笑)。そんな強烈な新しいのはないですよ!
JBL+サンスイって全盛期のジャズ喫茶における定番組み合わせのひとつですよね。そのあたりにtommyさんのオーディオの起源があるんですね。
今の堕落オーディオもいいんじゃないですか?でも黒モグラで堕落から脱出できるか楽しみです。

投稿: いっき | 2008年6月 9日 (月) 01時18分

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