「イズント・シー・ラブリー」あれこれ
スティービー・ワンダーの「イズント・シー・ラブリー」は皆さんよくご存知の名曲です。「午後の紅茶」のCM(あややと森光子出演)のバックに流れていた曲ですね。この曲をやっているアルバムを3枚紹介します。
まずはリー・リトナーの「キャプテン・フィンガーズ」(1977年、EPIC)です。デイブ・グルーシン、ハービー・メイソンはじめスタジオ・ミュージシャンの錚々たる面々が参加しています。リトナー3枚目のアルバムです。
さて「イズント・シー・ラブリー」ですが、リトナーが最初スローでフレーズを弾いて始まります。すぐにドラムが「タタタタタッ」と切り込んで、そこからはミディアム・テンポでビル・チャンプリンのソウルフルなボーカルが入ります。バックではレイ・パーカーJr.のカッティング・ギターがカッコいいです。リトナーもソロではかなりワイルドに弾いています。ドラムはジェフ・ポーカロでシャッフル・ビートが上手いですね。ドラム・ロール「タタタタタッ」もカッコよくきまります。終盤のボーカルとの掛け合いやギター・ソロもいつになくワイルドでソウルフルです。バックでのポーカロのトップ・シンバル連打はこれまた最高!うんイイこれ!
このアルバム、テクニカルなタイトル曲を始めとしていい演奏がそろっています。初期の代表作ですね。オススメです。
次はソニー・ロリンズの「イージー・リビング」(1977年rec. Milestone)です。メンバーはソニー・ロリンズ:ts,ss、ジョージ・デューク:key、チャールス・イカルス・ジョンソン:g、ポール・ジャクソン:el-b、トニー・ウィリアムス:dsです。「イズント・シー・ラブリー」のみバイロン・ミラー:el-g、ビル・サマーズ:congasが加わります。面白いメンバーですよね。収録曲は「イズント・シー・ラブリー」とスタンダード2曲とロリンズ・オリジナル3曲の計6曲です。ロリンズ・フュージョン路線の1枚です。
さて「イズント・シー・ラブリー」はしょっぱなA面1曲目なんですが、ロリンズがやればいつだってどんな曲だろうとロリンズ節になるわけです。この頃のロリンズは「ピュエ~」みたいなフレーズをよく入れますね。ビル・サマーズのコンガが入ったラテン・シャッフル・ビートで、トニーはそんなに暴れていませんが、時々はトレード・マークのバス・ドラ「ズドドド」を入れています。デュークは相変わらずエレガントにエレピを弾いていて、コテコテ度を緩和させています。
A面2曲目はロリンズ作「ダウン・ザ・ライン」(余談ですが最近テニスの試合でよく耳にしますね)は8ビートと4ビートの混じった曲で躍動的なビートの佳曲です。あのヘッド・ハンターズのポール・ジャクソンが4ビートでウォーキング・ベースを弾いているんですがなかなか良いです。トニーはこの手のリズムはお手の物でガンガン煽っています。デュークのピアノ・ソロはエレガントですよ。
A面3曲目はスタンダード「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」です。ロリンズはソプラノ・サックスでリリカルにバラード演奏をしています。ロリンズはテナーの印象が強烈すぎてソプラノはどうもピンときません。デュークはバッキング、ソロともになかなか良く、今時の美メロ系ピアノのレベルは軽くクリヤしています。さすがです。
B面のスタンダード「イージー・リビング」はテナーでのバラード演奏ですが、こちらは味があり深みもあるロリンズらしい演奏になっています。B面のオリジナル2曲はロリンズらしい明るく朗らかな曲で、トニーの煽りに乗ってロリンズは気持ちよく快調にソロを吹いています。このアルバムはB面のほうが良いですね。まあ「イズント・シー・ラブリー」はロリンズがこんな曲をやっていたということで・・・。
最後はアート・ペッパーの「ゴーイン・ホーム」(1982年rec. Galaxy)です。アート・ペッパーとジョージ・ケイブルスのデュオでペッパーのラスト・レコーディングです。聴いていると胸にこみ上げてくるものがあります。ペッパーはストレートに淡々と演奏しているのですがキャリアからくる味わいは深いものがあります。妙な哀感みたいなものはないです。ジョージ・ケイブルスが好演していて、ペッパーと絶妙な距離感を保ちながらバッキングしつつ、ソロになると暖かくスインギーなプレーでさらりと盛り上げます。
さて「イズント・シー・ラブリー」では、ペッパーはケイブルスのピアノ・ソロをはさんで、初めはクラリネットでソロをとり、後はアルトでソロをとっています。ケイブルスのすすめでここに収録したとのことで、ケイブルスは楽しそうにプレーしています。ペッパーにとってはこの曲が特にどうということではなく、題材のひとつとして演奏しているのだろうと思いますが、悪くありません。
このアルバムは「イズント・シー・ラブリー」がどうのこうのではなく、ペッパーとケイブルスの味わい深いデュオがおさめられている飽きの来ないアルバムとして、私は大好きです。
今日はこんなところでおしまい。
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