山中千尋の「アビス」
自分にとってどうでもいいスイングジャーナル誌の「ジャズ・ディスク大賞」の「日本ジャズ賞」の1位が山中千尋の「アビス」だったので、つい買ってしまいました。
山中千尋のCDは澤野工房時代の3枚はもっていたのですが、ヴァーブへ移籍してからは買いそびれていました。というのも全部ピアノ・トリオで同じような内容だろうと思っていたからです。ところがスイング・ジャーナルのCD評を読んでいると今回はかなり違うとのことなので購買意欲が湧きました。「アビス」ではピアノのだけでなくエレピやオルガンも弾いていたんですね。エレピもなかなかいいじゃないですか。ベースのビセンテ・アーチャーとドラムスのケンドリック・スコットも方向性に合った人選ですね。
1曲目こそキースの軽快な美メロ曲で普通のピアノ・トリオ演奏ですが、2曲目はエレピでクラブ受けしそうなアップ・テンポ曲(山中作)をぐいぐい弾いていきます。なかなか気持ち良いな~。3曲目(9曲目)はロバート・グラスパーにも通じるものがありますね。そうそうロバート・グラスパーの「イン・マイ・エレエント」もベースはビセンテ・アーチャーでした。この曲の中盤のオルガン・ソロなんかはハービー・ハンコックの昔のシンセの雰囲気なんかも漂っています。おもしろい!6曲目「ジャイアント・ステップス」は3拍子のエレピ部と4拍子のピアノ部分を対比させていて、このアレンジもなかなか良いセンスです。8曲目なんかを聴いているとエディ・コスタの左手の重厚な和音の使い方からの影響を感じますね。山中のこういう弾き方は他にもいろいろなところで出てきて個性を感じさせます。
「アビス」は伝統を感じさせつつ新しさや山中の個性を前面に出した良いアルバムだと思います。今後も楽しみだな~。ところで山中千尋をテレビで見ましたが、この人かなり不思議オーラ出ていますよね。弾きながら鼻をスウスウ吸っているのがありましたが、あの時は風邪でもひいていたのかな?
ついでに過去のアルバム「ホエン・オクトーバー・ゴーズ」(2002年rec. 澤野工房)をちょっと紹介します。メンバーは、山中千尋:p、ラリー・グレナディア:b、ジェフ・バラッド:ds、これ現行のブラッド・メルドー・トリオのベースとドラムですよね。澤野工房恐るべし。 このアルバム中のメドレー「バラッド・フォー・ゼア・フットステップ(やつらの足音のバラード)/スリー・ビューズ・オブ・ア・シークレット」が特に気に入ています。これムッシュかまやつとジャコ・パストリアスの曲のメドレーですよ!この2曲はよくマッチしていて違和感がありません。山中のこういうセンスは好きだな~。それから私、「スリー・ビューズ・オブ・ア・シークレット」が大好きです。ジャズ・オリジナル曲のなかでは屈指の名曲だと思っています。
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