ダイレクト・カットでトニーのバスドラを聴け
今日はダイレクト・カット・ディスクでトニー・ウイリアムスのバス・ドラム(バスドラ)を聴こうというお話し。
ダイレクト・カット・ディスクというのは、演奏しているのをそのままレコードにカッティングしてしまおうというものです。通常は演奏を一旦テープに録音した後、編集してからそのテープを使ってレコードにカッティングするのですが、そのテープ録音・編集工程を省いてしまうのです。途中の工程が省かれるため、音の鮮度は抜群にあがります。オーディオ・ファンにとっては高音質レコードとして歓迎されるものです。ただし、演奏に失敗は許されず、カッティングも失敗が許されないため、演奏者やレコード製作者には極度の緊張を強いることになります。このためダイレクト・カットは非常に少ないです。
そんな貴重な方法で録音されたレコードにV.S.O.P.クインテットの「ファイブ・スターズ」(1979年、CBSソニー)があります。 V.S.O.P.クインテットと言えば、tp flh:フレディ・ハバード、ts ss:ウェイン・ショーター、p:ハービー・ハンコック、b:ロン・カーター、ds:トニーウィリアムスの5人で、一回限り60年代マイルス・クインテットを再現しようとしたが、マイルスがそれを拒否したため、tpにフレディ・ハバードを呼んで作ったグループです。それが非常に好評で、その後しばらく同メンバーでコンサート・ツアーをしました。 このレコードは彼らが東京に来た時、CBSソニーの信濃町スタジオでレコーディングされたものです。彼ら唯一のスタジオ録音盤でもあります。(他はライブ録音)
このレコードの「スケイグリー」は、トニーのドラムが炸裂しています。8ビートの曲で、とにかくバスドラ叩きまくりです。私はこのドラミングでトニーの凄さを思い知りました。 他のメンバーはと言うと、フレディは高音ひけらかしフレーズはありますがかっこいいソロです。ハービーはいつもながらの甘さに流れないクールなソロをとります。ウェインはもう発想と展開が読めないマジカルなソロでこれぞウェインです。これを最初に聴いた時はこの人下手なのかと思いました(私は当時何もわかっていなかった)。ロンは例のグイ~ン・グイ~ンを入れながら手堅くリズムをキープしています。ちなみにウェインのソロの後、合奏に入るところで多分ミスってますが(こんなところががダイレクト・カット)そのままです。もちろん他の曲も良いです。 今CDがあるので皆さんもトニーのドラミングを是非聴いて下さい。 もしも中古レコードを見つけることがあれば価格は安いので入手してやって下さい。
もう1枚トニーのバスドラ炸裂盤。V.S.O.P.クインテット「熱狂のコロシアム」(1977年、CBSソニー)。これは普通のライブ録音です。この中のラストの曲「レッド・クレイ」、こちらも8ビート。8ビートは4ビートと違ってバスドラを定型パターンで叩く(右足で踏んでいる)んでいいんですよ。このウェインのソロがまたカッコイイ!ソロを始めると急に怪しげな妖気が漂い、最後には渾身のブローで終わります。1曲目の「アイ・オブ・ザ・ハリケーン」は4ビートで、これぞV.S.O.P.クインテットという演奏です。
最後にCBSソニーのダイレクト・カット・ディスクをもう1枚。ハービー・ハンコック「ダイレクトステップ」(1978年、CBSソニー)。ハービーのヘッド・ハンターズ路線です。これは「いーぐる」の後藤氏も推薦していますね。CDは出ているのかな?エレクトリック・ジャズのダイレクト・カットはこれ以外はJVCビクターのリー・リトナーの3枚などがありますね。
今日はおしまい。
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